パラドックス思考

矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる
未読
パラドックス思考
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パラドックス思考
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2023年02月28日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

あなたはこれまで、矛盾をはらんだ感情を抱いたことはないだろうか。「トップダウンで意見を通したいが、ボトムアップでメンバーから主体的に意見をもらいたい」「フリーになって自由に働きたいけれど、会社員としての安定も捨てたくない」

本書の「パラドックス思考」とは、こうした感情パラドックスに着目することで、厄介な問題を解決する方法を体系化したものだ。感情パラドックスとは、矛盾する感情Aと感情Bが存在し、どちらかの感情を優先すると納得のいく答えが出せない状態を指す。

著者は、リーダーシップ開発の研究に従事してきた舘野泰一氏と、人と組織の創造性を高める方法論を研究してきた安斎勇樹氏だ。感情パラドックスが起きるメカニズムとは? 感情パラドックスをどう解決するのか? 本書は、矛盾について注目し、触発しあってきた二人の探究の結晶といえる。

画期的なのは、一見なるべく排除したい「矛盾」をあえてつくり出し、積極的に活用することで創造的な解を見出していくプロセスだ。「AorB」という発想にとらわれず、「AandB」や、より上位となるCの道を切り開くことの面白さに気付かせてくれる。創意工夫と遊び心を大事にする著者たちの発想に、要約者は勇気づけられた。

パラドックス思考の活かし所は、アイデア発想、キャリアデザイン、組織運営など実に多彩だ。板挟みにあって先が見えない状況にある方に、本書をおすすめしたい。

ライター画像
松尾美里

著者

舘野泰一(たての よしかず)
立教大学経営学部 准教授
株式会社MIMIGURI Researcher
1983年生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学後、東京大学大学総合教育研究センター特任研究員、立教大学経営学部助教を経て、現職。博士(学際情報学)。専門分野は、リーダーシップ教育、ワークショップ開発、越境学習、大学と企業のトランジション。主な著書に『これからのリーダーシップ:基本・最新理論から実践事例まで』(共著・日本能率協会マネジメントセンター)、『リーダーシップ教育のフロンティア:高校生・大学生・社会人を成長させる「全員発揮のリーダーシップ」』【研究編・実践編】(共著・北大路書房)など。

安斎勇樹(あんざい ゆうき)
株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO
東京大学大学院 情報学環 特任助教
1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。研究と実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について研究している。組織イノベーションの知を耕すウェブメディア「CULTIBASE」編集長を務める。主な著書に『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』(共著・学芸出版社)、『リサーチ・ドリブン・イノベーション:「問い」を起点にアイデアを探究する』(共著・翔泳社)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    パラドックス思考のポイントは、厄介な問題に対峙したときに、あらかじめ矛盾する2つの感情を発見することである。
  • 要点
    2
    パラドックス思考は3つのレベルがある。レベル1では感情パラドックスを受容して、悩みを緩和する。レベル2では感情パラドックスを編集して、問題の解決策を見つける。レベル3では感情パラドックスを利用して、創造性を最大限に高める。
  • 要点
    3
    人間は「めんどうくさいけれど、愛らしい存在」である。自分の欲求をかわいげの証と受け入れることで、心が落ち着いていく。

要約

【必読ポイント!】 パラドックス思考とは何か

現代社会に渦巻く「厄介な問題」

現在はVUCAの時代といわれるが、その本質は、現在と未来のわからなさにある。いま何が起きているのか、この先どうなるのかわからない。そんな中で「厄介な問題」に立ち向かわなければならないというストレスが、感情のわからなさを生み出している。

未来の選択肢が読めず、自分の感情にうまく向き合えない状況で、私たちは多くの矛盾に直面する。この矛盾という現象に着目することで、「厄介な問題」に立ち向かおうとする考え方が、本書で提案する「パラドックス思考」である。

感情パラドックスとは何か?
ThitareeSarmkasat/gettyimages

パラドックスは、「矛盾した状態」「逆説」という意味をもち、論理パラドックスと感情パラドックスの2種類に分かれる。論理パラドックスとは、問題の背後に矛盾する主張Aと主張Bが存在しており、どちらかを正しいと仮定すると論理的に正しい答えが出せなくなる状態を意味する。

これに対し、感情パラドックスとは、問題の背後に矛盾する感情Aと感情Bが存在しており、どちらかの感情を優先すると納得のいく答えが出せなくなる状態を指す。

本書が提案するパラドックス思考の特徴は、厳密な正しさを前提にする論理パラドックスではなく、曖昧さを生きる人間社会に特有の感情パラドックスに着目する点だ。ポイントは、厄介な問題に対峙したときに、あらかじめ矛盾する2つの感情を発見することである。人間は時に、自分の考え方や現実の捉え方を捻じ曲げて、矛盾をなかったことにしようとする。この性質は認知的不協和と呼ばれる。認知的不協和は、矛盾による不快感から無意識に自分を防御するための反射のようなものである。「Aしたいけど、実はBもしたい」という欲張りな感情を受容し、それらを両立する解決策を考える。これがパラドックス思考の基本姿勢となる。

パラドックス思考レベル1:受容する

パラドックス思考は3つのレベルがある。

レベル1:感情パラドックスを受容して、悩みを緩和する

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要約公開日 2023.04.26
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