本書の要点

  • 著者は、10年後の銀行のあるべき姿を見据えて、ターゲットをデジタルネイティブ世代に据えた。めざすのは、スマートフォンが財布や銀行になるという世界観だ。

  • みんなの銀行は、破壊的イノベーションを追求するために、FFG本体からは独立した組織となった。著者は、アジャイル型の開発手法を、システム開発だけでなく、サービスの考え方やマーケティングにも取り入れてきた。

1 / 3

今までにない銀行をめざして

銀行が銀行でなくなるとき

「10年後の銀行のあるべき姿を見据えて、これまでの延長線上にない、非連続の成長戦略を描いてほしい」「既存の銀行の延長線上じゃなくてもいい」。2014年、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)の取締役社長(当時)の柴戸隆成が、経営企画部の永吉健一にミッションを与えた。この言葉がiBankマーケティングとみんなの銀行の出発点となる。iBankマーケティングの設立はどのような経緯をたどったのか。永吉とほか2人のメンバーは銀行の未来について考えた。その中で出た結論が「銀行がなくても他のサービスで代用できれば銀行は要らないという人たちが増えてくる」だった。3人は画期的な金融サービスを、既存の銀行のルールや制度を越えて生み出そうと考えた。ターゲットにしたのは、未来の顧客となるデジタルへの親和性が高いZ世代や、デジタルネイティブと呼ばれる人たちだ。スマートフォンでこれらの世代に刺さるサービスを提供しようとした。

家計のやりくり、スマホで完結

JuliaTim/gettyimages

当初のサービスアイデアは「自分だけのおカネのやりくりを“スマホで完結”できる」がウリの「Pocket Wallet」である。自分の銀行口座内にバーチャルの子口座を作り、封筒で家計を管理しているような、目的別に把握できる機能をめざした。役員の反対にあったが、柴戸のGOサインによって、2016年4月に「iBankマーケティング」の設立に至った。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2844/3459文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2023.05.05
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

ESG格差
ESG格差
松岡真宏山手剛人首藤繭子
イノベーションの考え方
イノベーションの考え方
清水洋
スタッフエンジニア
スタッフエンジニア
ウィル・ラーソン増井雄一郎(解説)長谷川圭 (訳)
テックジャイアントと地政学
テックジャイアントと地政学
山本康正
未来力
未来力
三木谷浩史
組織の強化書
組織の強化書
小山昇
人間の解剖はサルの解剖のための鍵である 増補新版
人間の解剖はサルの解剖のための鍵である 増補新版
吉川浩満
新版 ブランディングの基本
新版 ブランディングの基本
安原智樹

同じカテゴリーの要約

【新】100円のコーラを1000円で売る方法
【新】100円のコーラを1000円で売る方法
永井孝尚
起業の天才!
起業の天才!
大西康之
経営者のための正しい多角化論
経営者のための正しい多角化論
松岡真宏
15秒!集客革命
15秒!集客革命
仲野直紀
ユニクロ
ユニクロ
杉本貴司
心理的安全性のつくりかた
心理的安全性のつくりかた
石井遼介
ローソン
ローソン
小川孔輔
ジョブ型人事の道しるべ
ジョブ型人事の道しるべ
藤井薫
組織と働き方の本質
組織と働き方の本質
小笹芳央
地頭力を鍛える
地頭力を鍛える
細谷功