30代からの『孫子の兵法』

負けない戦略を身につける
未読
30代からの『孫子の兵法』
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未読
30代からの『孫子の兵法』
出版社
出版日
2012年05月24日
評点
総合
3.0
明瞭性
3.0
革新性
2.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

孫子の兵法が生まれたのは、紀元前500年前後、中国の春秋戦国時代のなか群雄が割拠し、なかでも斉・晋・楚・呉・越の5国が有力国と言えたが飛びぬけた国がおらず、変化が激しく極めて高い戦略性が求められた時代である。「孫子」は武田信玄、豊臣秀吉、徳川家康、ナポレオンといった軍事戦略に富んだ人物に加え、ビル・ゲイツ、孫正義などの経営者にも重宝され、そういった意味では今も隠然とその影響力を保っていると言える。

過去の兵法書では東の「孫子の兵法」、西の「戦争論」(プロイセンの将軍、クラウゼビッツによる)と言われるが、「孫子の兵法」は「戦争論」よりも2,300年以上も前に書かれたことは驚きであると言う他ない。元来経営戦略は、限られた資源を有効活用し相手を打倒することが目的である点において軍事戦略に類似しており、各プレーヤーが競争に打ち勝つべく凌ぎを削っている中で他を圧倒するための考え方である。同様の考え方はキャリアを築く30

代のビジネスパーソンにも有効であろう、ということが本書に込められた著者からのメッセージなのだ。

本書はますます複雑化する企業社会において、春秋戦国時代から脈々と受け継がれてきた教訓に習い、道筋を示してくれる自己啓発本である。独自性は追い求めず、素直に孫子の兵法に沿った内容に集中している点がわかりやすい。現代の悩める30代のビジネスパーソンに加え、孫子の兵法の入門書を探されている方にはぴったりの一冊と言える。

ライター画像
大賀康史

著者

染井 大和
ライター。情報サービス企業を経て、独立。主にビジネス書、自己啓発書の構成・執筆を手掛ける。これまでに、延べ2,000人以上のさまざまな職業人への取材を実施。その体験を通して得た「人々のリアル」をもとに、東西の古典のエッセンスをわかりやすく解説する手法に定評がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ビジネスにおいては、まず、重要なのが「道」であり、これは大義名分である。経営者と社員は、同じ方向を見て同じ思いを共有していなければいけない。30代は若手と中堅をつなぐ世代として、「道」を示す存在になるべきであり、組織の中核をなすことを志向してほしい。
  • 要点
    2
    本当に勝てる人というのは、自分の強さも弱さも知り抜いた人だ。自分に足りないものがあるときは、決して無理な戦いはせず、自分の強さが発揮できる場面でこそ勝負をかけるのである。
  • 要点
    3
    『孫子の兵法』の魅力は、戦場全体を高い視点から見下ろすような感覚で、戦いに勝つためのヒントが得られることであり、先が見えない状況でも、その教えにより新たな道が提示されるのだ。

要約

【必読ポイント!】 仕事で絶対的に優位に立つ

iStock/Thinkstock
安易に「結果」を追い求めない

「兵とは国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり」

(訳)戦争は国家の一大事。それによって国民の生き死にも国の存亡も決まるのだから、安易に行ってはならない。

『孫子の兵法』が生まれた時代は、群雄が割拠した春秋戦国時代。有力国が覇権を争う中で、戦いには勝っても国民が疲弊し国力が衰え滅亡した国もある。

現代では過度な「成果主義」が独り歩きし、営業成績だけを上げることだけを考えてはいないだろうか。ムリなスケジュールで受注し周囲に迷惑をかける人、無茶な値下げを断行して赤字を出す人、などを見たことがあるだろう。本当に大事なのは、瞬間の成功よりも、長く続く繁栄の道を取ることなのだ。

行動する前に比較すべき5つのポイント

「これを経るに五事を以てし、これを校ぶるに計を以てして、其の情を索む。一に曰わく道、二に曰わく天、三に曰わく地、四に曰わく将、五に曰わく法なり」

(訳)戦いを起こすときには、5つの重要な事柄を検討し、7つの視点から「計算」しなければならない。第一の「道」とは、民衆と君主の間の「人心」が安定しているか。第二の「天」とは時期やタイミング。第三の「地」とは土地の状況。第四の「将」とは、将軍の力量。第五の「法」とは、軍や行政の統率である。

ビジネスにおいては、まず、重要なのが「道」であり、これは大義名分である。経営者と社員は、同じ方向を見て同じ思いを共有していなければいけない。「天」は時期やタイミングである。「地」はビジネスでは市場環境。「将」とは、能力があり多くの人が認めるリーダーの存在。「法」はチームや組織としての役割分担を機能させる規律だ。特に30代が若手と中堅をつなぐ世代であり、組織において「道」(理念)を浸透させる中核をなす存在となることを志向してほしい。

iStock/Thinkstock
意外な行動で相手の予想を裏切る

「兵とは詭道なり。(中略)其の無備を攻め、其の不意に出ず。此れ兵家の勢、先きには伝うべからざるなり。」

(訳)戦争とは「騙し合い」「策略の戦い」でもある。敵をいかに騙し、策略にはめるかによって、敵の無防備を誘い、不意をつくことができる。これが軍学者の言う、その場その場の「臨機応変」であるから、あらかじめ決めて伝えることはできない。

孫子の教えを自らの経営に取り入れていることで知られる、ソフトバンクの孫正義社長には、このようなエピソードがある。単身渡米して、カリフォルニア州で大学の検定試験を受験した際、「自分は日本人なので、英語はわからない。でも、英語さえわかれば問題は解ける。だから辞書を使うことを許可してほしい。さらに、辞書を使う分、時間が必要なので試験時間も延長してほしい」と試験官に要求したのだ。

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要約公開日 2013.10.31
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