エンタの巨匠

世界に先駆けた伝説のプロデューサーたち
未読
エンタの巨匠
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世界に先駆けた伝説のプロデューサーたち
未読
エンタの巨匠
出版社
出版日
2023年01月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「クールジャパン」という言葉がある。日本で当たり前に流行しているエンタメ産業が海外から見ると「クール」で価値あるものだという認識を示すこの用語は、今やすっかり定着した。この言葉のもとに展開された施策自体は空回りしたものもあるが、日本発のコンテンツが世界的に高く評価されていることを疑う人はいないだろう。

日本がそのようなコンテンツを育てることができたのはなぜなのか。あるいは、どのような考え方のもとに創造されてきたのか。こうした方法論について説得力を持ってまとめた書籍は意外なほど少ない。それは、日本のコンテンツが、個人の才能をダイレクトにぶつけることで発展してきた側面があるからではないだろうか。

本書はエンタメ社会学者の中山淳雄氏が、日本で活躍してきた伝説のプロデューサーたちに取材をしたインタビュー集である。徹底して個人のありようを掘り下げることで、「エンタの巨匠」となった人たちが、どのような思考と行動によって道を切り拓いてきたのかが浮かび上がってくる。

エンタメとは新しい面白さを提供することが重要な業界だ。面白いアイディアの重要性は、他の分野でも高まってきている。世界に先駆けて伝説を作り出してきたプロデューサーたちの生き様は、これからのビジネスにおいて「クール」に活躍していく上で、多くの示唆を与えてくれるだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

中山淳雄(なかやま あつお)
エンタメ社会学者
Re entertainment代表取締役
1980年栃木県生まれ。東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイト トーマツ コンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、現在はエンタメ企業のIP開発・海外化に向けたコンサルティングを行うと同時に、ベンチャー企業の社外役員(Plott社外取締役、キャラアート社外監査役)、大学での研究・教育(慶應義塾大学経済学部訪問研究員、立命館大学ゲーム研究センター客員研究員)、行政アドバイザリー・委員活動(経産省コンテンツIPプロジェクト主査)などを行っている。著書に『推しエコノミー』『オタク経済圏創世記』(以上、日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)、『ボランティア社会の誕生』(三重大学出版会、日本修士論文賞受賞作)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本のエンタメ産業において、時代を彩る大ヒット作品の裏側には、ルールや慣習を突き抜けた伝説的な仕事人が存在してきた。彼らは天才ではなく、むしろ努力と工夫によって成功を収めてきた。
  • 要点
    2
    彼らの共通点は、独自の発想と、個人の力を発揮できる環境を自ら整えてきたことにある。
  • 要点
    3
    日本エンタメ業界は停滞期にあるが、本書で紹介した6名のような尖った人材を増やすには、組織が彼らの力を発揮できる環境を整える必要がある。

要約

日本の黄金時代を作ったのは「天才」だったのか?

日本エンタメ産業のブレイクスルー

時代を彩る大ヒット作品の裏には、ルールや慣習を突き抜けた伝説的な仕事人が存在した。ただし、彼らは最初から天才であったわけではない。

本書は、日本のエンタメ黄金時代に活躍したプロデューサーやディレクター、クリエイターが、どんな思考回路でヒット作を生み出したかを明らかにする。彼らは独創的なアイディアで業界の慣習を打ち破る「天才」と称されることが多い。だが実際には、普通の人々が努力と工夫で成功を収めたのである。彼らの共通点は、「エンタメ脳」と呼ばれる独自の発想と、個人の力を発揮できる環境にある。

今の日本のエンタメ業界は停滞期にあり、新たな「尖った人材」が求められている。組織が彼らの力を発揮できるような環境を提供し、成長を支援することが重要だ。そして成功のカギは尖った人材を許容し、挑戦を推奨する組織風土にある。

狂気のテレビP 土屋敏男(元・日本テレビプロデューサー)

『電波少年』で爆走
yanyong/gettyimages

土屋敏男は1979年に日本テレビに入社した。現在は社長室R&Dラボでスーパーバイザーを担っている。土屋敏男の手掛けた番組といえば、やはり『電波少年』だろう。事前アポイントなしにロケを敢行する、ヒッチハイクでユーラシア大陸を横断する、懸賞商品だけで生活しながら100万円を稼ぐ、などの人気企画で有名になった。本番組は1993年から1998年まで視聴率を右肩上がりに伸ばし、ピークは視聴率30%を記録した超人気番組である。

土屋はコストを考えて番組を作ったことはないという。そのため一度も黒字――テレビ的には想定される視聴率に対して想定されるコストに収めるということ――を出したことはない。視聴率が常に想定を上回ったことによって成立してきた。このような作り方は、サラリーマンとしてはほとんど例を見ない。しかし本人は、入社してしばらくは大人しい社員だった。

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要約公開日 2023.07.08
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