ジムに通う人の栄養学

スポーツ栄養学入門
未読
ジムに通う人の栄養学
ジムに通う人の栄養学
スポーツ栄養学入門
未読
ジムに通う人の栄養学
出版社
講談社
出版日
2013年03月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

「ご飯を減らして、プロテインを飲む」はやってはいけない。ご飯などの主食を減らすと栄養バランスが崩れてしまうし、プロテインはそれ自体が筋肉作りを促進することはないからだ。いまや炭水化物ダイエットは痩せるための「常識」と言えるほど広まっているが、正しいやり方に従わなければ効果が得られないばかりか、健康にはかえって逆効果となってしまう。

本書は、アスリートに限らず、健康のために体を動かしている人が、日頃の運動と栄養・食事の効果を高めるのに役立つことを科学的なエビデンスに基づいて紹介している一冊だ。ページをめくると、たとえば、普段の食事で30数種もの成分をバランスよく取るのは難しいと思うかもしれないが、実は和食や洋食といった伝統的な食事は十分な栄養バランスが保たれており、「栄養バランスの良い食事」はけっして難しいものではないということが分かる。

さらに、栄養素の種類と役割、食品の成分といった栄養素の基礎知識や、運動前・中・後に必要な栄養は何なのか、そしてその摂取方法など、具体的な栄養摂取と食事法がわかりやすく示されている。科学的根拠と過去の研究データを交えた解説によって、理解を深めながら読み進めることができるだろう。

この本が対象にしているのは、アスリートではなく、一般の運動を楽しむ人たちだ。運動の効果を高めるにはどんな栄養・食事が良いのか、専門のトレーナーがいなくても本書を読めば、スポーツ栄養学の基礎を十分に身に付けることができるだろう。

著者

岡村 浩嗣
1984年、筑波大学大学院体育研究科修了。大塚製薬株式会社佐賀研究所主任研究員などを経て、2003年より大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科・同大学体育学部教授。博士(学術)。スポーツ栄養学、運動栄養学専門。日本栄養・食糧学会、日本体力医学会等学会での発表のほか、スポーツ指導者、スポーツ栄養士等への講習も行う。

本書の要点

  • 要点
    1
    運動してもきちんと食事を摂らないと、運動の効果が得られないばかりか、健康を害することもある。スポーツ栄養学は、健康のための運動と、運動時の栄養・食事のあり方も対象としている。
  • 要点
    2
    運動の効果を高めるためには炭水化物が必要である。トレーニング後の栄養補給・食事は早めが良い。
  • 要点
    3
    筋力トレーニングの目的を達成するには、その材料となるタンパク質を運動後早めに摂取するのが効果的である。
  • 要点
    4
    食べる量を減らすだけの減量と、運動による減量を比べると後者のほうが健康に良い。

要約

健康のための運動と栄養を学ぶ、スポーツ栄養学

運動は摂取した栄養素の効果や、身体の栄養状態に大きな影響を及ぼす
EduardSV/iStock/Thinkstock

運動の効果は摂取した飲食物の栄養効果に影響する。言い換えれば、同じものを食べても、運動をするかしないかで栄養効果が異なる。

たとえば、摂取したタンパク質が、筋肉合成などのからだづくりにどの程度利用されたかは「窒素出納」という指標で評価される。12週間ベンチプレスなどのトレーニングをすることによって、トレーニング前よりも窒素出納が増大する。つまり、運動をすると食事のタンパク質量を増やさなくても、摂取したタンパク質の体への蓄積割合が増大したことを意味する。このように、運動は摂取した栄養素の栄養効果や、体の栄養状態に大きな影響を及ぼす。

また、夜たくさん食べると太りやすいが、朝たくさん食べても太りにくい、ということは経験的に知られていることだろう。これをラットを使った実験で示したデータがある。同じ量の砂糖を摂取しても、活動期の前に摂取したときのほうが休息期の前に摂取したときよりも血中中性脂肪濃度が低い。つまり、運動の効果は、食事の摂取タイミングによって異なることを示している。

運動してもきちんと食べないと、運動の効果が得られないばかりか、健康を害することにもなりかねない。食事も運動もどちらも大事なのだ。スポーツ栄養学とは、健康のために運動するときの栄養・食事のあり方も対象とした学問なのである。

「バランスの良い食事」というのは良い食事の代名詞としてよく耳にするが、具体的にどういう食事のことを指すのか理解している人は少ないのではないだろうか。日本食には「主食」(ご飯、麺類、パンなど)、「主菜」(肉、魚、卵など)「副菜」(野菜、海藻、きのこなど)という区別がある。これに「果物」、「乳製品」を加えた5つのカテゴリーの食品を摂ることで、必要な栄養素を摂ることができる。

ご飯と鶏の唐揚げという「主食」と「主菜」だけの食事を摂った場合、エネルギー、タンパク質、脂質、炭水化物は成人男性の1食に必要な量をそれなりに満たしているのだが、ミネラルとビタミン類の摂取量が足りない。この食事に「副菜」の五目ひじきとほうれん草のお浸し、「果物」のオレンジ、「乳製品」の牛乳を加えると栄養成分バランスが大きく改善される。

ご飯やパンといった「主食」は炭水化物以外の栄養成分をほとんど含んでいないと思われがちであるが、それは間違いである。さきに述べた食事のタンパク質の3分の1から半分は主食によるものであり、主食は種々の栄養成分の供給源でもある。パンやご飯の量が少なすぎると、ほかの食品を組み合わせても栄養バランスの調整ができない。よって、主食は十分な量を摂ることが大切なのだ。

【必読ポイント!】 日常の運動を効果的に継続させるには

炭水化物は運動する上でとても重要
Hue/amanaimagesRF/Thinkstock

ジムでの運動を継続して、効果があったと感じることができるのは、筋肉がついた、痩せた、体力がついたということが実感できたときだろう。

スポーツ科学の視点で見る運動の効果は体脂肪の減少や、筋肉の肥大といった体組成の変化に関わる効果や、筋力の増大、持久力の増加など、運動能力の向上に関わる効果などに分類できる。では、運動における栄養・食事の役割とは何か。

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要約公開日 2014.12.19
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