長年金融の仕事をしてきた著者は、プライベートでもお金や投資に関する相談をよく受けてきた。収入も価値観も、目指す人生も人それぞれ異なるので、結局のところはみんながお金について理解を深め、自分で判断できるようになるのがベストだ。
だが、お金について「そもそも」を説明するのはなかなか難しい。そのうえ、お金に関するしがらみのない情報は手に入れづらい。
証券会社や銀行、ネットで情報を発信している人たちは、それぞれの立場から自分達の利益が最大化するような商品をすすめてくる。その行為は一方的に責められるものではない。知識さえあれば自分にとって適切でない投資先を選ばずにすむはずだ。
「あれを買うべき」「これはやめるべき」といった情報を鵜呑みにし、未来の変化にどう対応すべきかわからないままいるのは危うい。誰かに聞いた通りにお金を動かしているだけでは、危険が迫っていても自分で気づけないかもしれない。
この本のゴールは、読者のお金のリテラシーを上げることだ。「お金を増やす」うえでいちばん大切なのは、「一般常識」を増やすことにほかならない。お金のリテラシーが上がり、その後の生活や人生が少しでも豊かになればと願う。
そもそもお金とはなんだろうか。生まれたときからお金があるのが当たり前の世界に生きていると、わざわざそんなことは考えないかもしれない。だが、それはルールを知らずにカジノに行くようなものだ。
たとえば、信頼のおけそうな証券外務員から「この株はとてもいい会社の株です。きっと上がりますよ」とすすめられ、購入を決めたとする。だが、その後株価が下落し大損を被る。こんな話はよくある。
相手に文句が言いたくなるところだが、ここでいちばん問題にしなければならないのは、「その株はいくらであるべきか」を自分で考えずに買う判断をしてしまうことだ。
普段の買い物だったら、多くの人は自然と「この値段なら買い」「これなら買わない」と、おのおの適正価格を決める作業をしているはずだ。この作業は「プライシング(値決め)」と呼ばれる。
ところが、株の話になると、突然「言い値で買う」人が増えてしまう。これは、「とてもおいしいキャベツ」と言われて、1玉10万円をぽんと支払うようなものだ。金融リテラシーが低い人が存在する株の世界では、こんなとんでもないことが簡単に起きてしまう。
正しい投資を行う上では、本質的なことを理解しておくことが極めて重要だ。
たとえば、「株の投資には目安があって、あるべき株価は1株あたりの年間利益の15倍くらいがよい」という通説的な基本知識を覚えたとする。1株あたりの儲けが100円であれば、その15倍である1500円があるべき株価という計算になる。では、株価が1300円だったら、「買い」という判断でよさそうに見える。
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