不老脳

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不老脳
出版社
出版日
2023年04月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

30代後半になると、体の不調を感じる瞬間がじわじわと増えてくる。肌のハリがなくなった、足腰が痛くなった……。要約者は1年ほど前、「このままだとマズイ」と思い立ち、週に1回ランニングをする習慣を始めた。最近は調子がいいように感じている。

けれどアタマのほうはどうだろう。「今日はなんだか前頭葉の調子がでないな」と感じ取れたら、すこしは脳のトレーニングの必要性に気づくだろうが、30代ではそんな兆候を感じられない。40代50代でも、元気に働いている間は大丈夫だと考えるはずだ。

ところがどうもそうではないらしい。本書のページをめくると目にとまるのは「早ければ40代で萎縮が始まる前頭葉」だ。脳の中でも大きな部位で、担う役割も数多くある。「人間らしさの源泉」であり情動をコントロールする機能をもつ。その前頭葉がうまく働かなくなるから、高齢者は怒りっぽくなるという。周囲との関係性も悪化して孤独になり、刺激が減ってますます前頭葉が働かなくなる負のループだ。なんと恐ろしいことか。

浮世絵師の葛飾北斎は89歳で亡くなるまでに93回も引っ越しをし、75歳を過ぎてからも意欲的に創作を続け、3万点もの作品を生み出した。そんな活動的で行動力のある高齢者が周囲にいると、自分たちも刺激的な生活を送れる気がしてくる。周りに北斎のような人がいないのなら、ぜひ本書を「前頭葉の若さを保つ処方箋」として読んでほしい。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

和田秀樹(わだ ひでき)
1960(昭和35)年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒、精神科医。立命館大学生命科学部特任教授、ルネクリニック東京院院長。長らく老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても知られる。『70歳が老化の分かれ道』『80歳の壁』他ベストセラー多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    前頭葉は意欲・情動のコントロール・創造性といった人間らしさの源泉だ。真っ先に起こる前頭葉の機能低下が、日本社会の低迷にもつながっているかもしれない。
  • 要点
    2
    ワンパターンな生活、周囲への無関心、希薄な人間関係が前頭葉を機能不全にする。二分割思考をやめ、生きることは実験だと思って前頭葉を鍛えよう。
  • 要点
    3
    「楽しむこと」がもっとも前頭葉を活性化する。超高齢化社会では、「年をとるのが楽しみだ」と周囲の人も思えるような高齢者を目指していきたい。

要約

40代から衰え始める前頭葉

人間らしさの源泉の老化

いまや日本人の平均年齢は40代後半である。2022年に国連が発表した各国の年齢中央値では、48.7歳で世界第2位だ。アメリカや中国が30代後半、インドやインドネシアは20代後半であることを考えると、日本は超高齢社会の先駆けとなっている。

「40代・50代はまだ若い」と思うのは、「日本全体の平均年齢が上がっているから」ではなかろうか。しかしいくら「若い」と思っても、脳科学的には脳の老化は40代から始まっている。とりわけ深刻なのは「前頭葉の老化」だろう。

前頭葉は大脳の前方にあり、大脳全体の30%を占めていて、役割も多様だ。前頭葉の一部である「前頭連合野」は思考や判断といった情報処理、意欲、情動のコントロール、創造性や社会性などの“人間らしさの源泉”を担っている。

「老人は怒りっぽい」と言われるが、これは前頭葉の「情動のコントロール」がうまく機能しなくなっているからだといえる。

機能低下する日本社会
wildpixel/gettyimages

人間の脳、それも前頭葉は、早い人で40代前半から顕著に縮み始める例もある。

前頭葉は20代に最も遅く「完成」し、真っ先にその機能を低下させる。前頭葉の認知機能のうち情報処理能力や記憶力に至っては18歳頃がピークだという。語彙力などの言語能力は60代から70代まで成長し続けるが、これは例外である。私たちは「20代を過ぎても伸び続ける能力で、低下してゆく能力をなんとか補って日常生活を送っている」のだ。

記憶や言語情報を司る側頭葉や、計算問題を処理する頭頂葉の機能は加齢の影響を受けにくい。90歳を過ぎてもプルーストの小説を読んで、記憶することはできる。しかし、前頭葉の老化は感情の老化だ。その感情のコントロールは、「未知のことがら」に直面して前頭葉が真価を発揮する一例だ。イノベーションにも前頭葉の機能が必要である。

平均年齢が上昇することで、前頭葉の「機能低下」とともに日本社会の「老化」が進んでいるように見える。われわれは脳が衰えていくのを待つほかないのだろうか。

チェックすべき前頭葉の「機能不全」

変化についていけない

前頭葉の能力を低下させないために、まずは自分の状態を確認することから始めよう。そのための7つのポイントからいくつか紹介する。

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要約公開日 2023.09.18
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