日本はこれから、どの程度の経済成長が可能なのか。著者は、数多くの機関が発表しているもののうち、OECDのデータを最も詳細なデータとして取り上げている。OECDの調査では、日本の年平均実質GDP成長率を、2020年から2030年までの期間で0.987%としている。過去、2000年から2021年までの平均が0.645%、2013年から2021年までの平均が0.44%だったことと比較すると、かなり高くなっている。
国内でもいくつかの見通しが出ている。内閣府が2022年に発表した10年後(2031年)までの見通しを示す「財政収支試算」では、高めの成長を見込む「成長実現ケース」で実質成長率が2023年度を除く2026年度まで2%超、その後も2%に近い数字が想定されていた。低めの成長率を見込む「ベースラインケース」では、2026年度まで1%超、その後も1%程度を想定している。
著者は政府の描く“低成長シナリオ”と“高成長シナリオ”に対して、明らかに年間の実質成長率が1%程度である低成長シナリオの方が現実的だと指摘している。
問題なのは、日本の政策体系が「2%」の高成長シナリオを基にしていることだ。日本の政策では、維持することができないのは明らかである。
65歳以上人口が総人口に占める比率である「高齢化率」を見ると、日本の2020年の値は28.7%である。アメリカの16.6%、フランスの24.1%などと比較して、世界で最も高齢化が進んだ国といえる。
1980年代頃までは、日本よりもアメリカやイギリスの方が高齢化率は高かった。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代を支えたのが、この人口構造の差である。しかし、1990年代中盤以降に日本の高齢化率が急速に高まり、経済の停滞も始まった。2021年における出生数は、1899年以降で最少となる81.1万人を記録している。
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