銀河鉄道の夜

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評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
5.0
応用性
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おすすめポイント

1896年に岩手県花巻に生まれ、37歳の若さでこの世を去った宮沢賢治。死の直前まで推敲が続けられ、未完でありながら賢治の集大成にして最高傑作と言われるのが本作『銀河鉄道の夜』である。執筆開始は1924年頃とされ、約10年にわたる推敲で大きく3回の改変がされ、稿によって設定やあらすじは異なる。

物語の中心は、気弱で孤独な少年ジョバンニと親友のカムパネルラが銀河鉄道で天の川に沿って南十字へと向かう銀河の旅である。この鉄道の不思議な乗客たちは、天上に向かう死者たちであることが示唆される。死者たちの口からは「本当の幸い」について繰り返し語られ、主人公ジョバンニもまた、何がみんなの本当の幸いなのかと考え始める。この問いは、読者へも向けられているものだろう。

今回要約したのは青空文庫収録の新潮文庫版であるが、これは戦後しばらくしてから発見され、現在広く読まれている第4次稿(最終形)がもととされる。この稿では、それまでの稿にはなかった銀河鉄道の旅の前後、つまり物語の冒頭と結末が新たに加えられた一方、それまでの稿では中心的な役割を担っていたブルカニロ博士が登場しない。賢治が生きていたら、さらに推敲を加えていたであろうことから、物語は永遠の未完である。だが、そこから浮かび上がるメッセージは鮮やかとしか言いようがない。読み終えたらあなたのポケットにも、「ジョバンニの切符」が見つかるかもしれない。

ライター画像
池田友美

著者

宮沢賢治(みやざわ けんじ)
1896年生まれ、1933年没。詩人、童話作家。生前に刊行されたのは、『春と修羅』『注文の多い料理店』の2作のみであるが、現在は国内外を問わず多くの人にその作品が親しまれている。

本書の要点

  • 要点
    1
    気弱な少年ジョバンニは、学校でも職場でも冷たくあしらわれ、気を許せるのは親友のカムパネルラだけだった。
  • 要点
    2
    お祭りの夜、ジョバンニはいじめっ子のザネリにからかわれ、一人寂しく野原で空を見上げていた。そこに列車の音が聞こえてきて、気がつくとカムパネルラとともに銀河を駆ける汽車に乗っていた。
  • 要点
    3
    旅の途中で、ジョバンニは不思議な人たちと出会い、本当の幸いについて考え始める。
  • 要点
    4
    銀河鉄道の旅から帰ったジョバンニを衝撃的な事実が待ち受けていた。

要約

孤独な少年ジョバンニ

本当は星だと知っていた
den-belitsky/gettyimages

その日の授業は星についてだった。

黒板に吊るされた大きな黒い星座の図に描かれた銀河帯。川だと言われたり、乳が流れたあとだと言われたりする、このぼんやりと白いものの正体は何か。

先生がそう問うたとき、ジョバンニはそれは星だとわかっていた。けれども、家計のために毎日働いていたジョバンニは、疲れてもう何もよくわからないような気持ちになっていた。だから、指されても真っ赤になるばかりでうまく答えることができなかったのだ。その様子を見て、いじめっこのザネリが、くすっと笑う。

ジョバンニのことを気にかけてくれるのは親友のカムパネルラだけだった。ジョバンニの次に指名されたカムパネルラも、本当は答えをわかっているはずだった。あれの正体が星だということは、カムパネルラのお父さんの博士のところで、いっしょに読んだ雑誌に書いてあったのだ。けれどもカムパネルラはもじもじと立ったまま答えなかった。ぼくのことを気の毒がってくれたのだとジョバンニにはわかった。

活版所では冷たく笑われている

放課後、同じ組の子どもたちが今夜の星祭の相談をしているのを尻目に、ジョバンニは校門を出て活版所へ向かった。ジョバンニの仕事は活字拾いである。今日もジョバンニは、手渡された一枚の紙切れをもとに、小さなピンセットで粟粒くらいの活字を次から次へと拾いはじめた。ジョバンニは職場でも冷たく笑われている。

だが、仕事を終えて、銀貨を1枚受け取ると、ジョバンニはうれしい気持ちになった。外へ飛び出ると、パン屋でパンの塊を一つと角砂糖を一袋買って、病気の母の待つ裏町の小さな家へと急いだ。

お父さんの「らっこの上着」

「ねえお母さん。ぼくお父さんはきっと間もなく帰ってくると思うよ。」

ジョバンニは食事をしながらそう切り出した。今朝の新聞に今年は北の方の漁が大変よかったと出ていたからだ。父は漁を終えて帰ってくるかもしれない。

お父さんは、「次はらっこの上着をもってくる」と言っていた。そのことで、ジョバンニは級友にからかわれていた。いじめに加わらないのはカムパネルラだけだ。

角砂糖はお母さんの牛乳に入れてあげようと思って買ってきたのだが、今日はまだ牛乳が来ていなかった。ジョバンニは牛乳をとりにいきながら、今夜の銀河祭をながめることにした。一時間で戻ると言ったけれど、お母さんはカムパネルラもいっしょなら心配はないからと、もっと遊んでおいでと言ってくれた。

蝎や勇士のいる空を、どこまでも歩きたい
angusben/gettyimages

町の坂の下には大きな街燈が、青白く立派に光っていた。電燈に近づくとジョバンニの影ぼうしは、だんだん濃くなっていった。(ぼくは立派な機関車だ)と思いながら、ジョバンニが街燈の下を通り過ぎると、小路から出てきたザネリとすれちがった。

「ジョバンニ、お父さんから、らっこの上着が来るよ」とザネリがうしろから叫んだ。ジョバンニは、ばっと胸が冷たくなった。ぼくは何もしていないのに、どうしてザネリはそんなことを言うのだろう。

考えをめぐらせながら歩いていると、時計屋にさしかかった。ジョバンニは足を止め、そこにあった円い黒い星座早見を食い入るように見つめた。本当にこんな蝎や勇士が空にぎっしりいるのだろうか。ああぼくはその中をどこまでも歩いてみたい。

ようやく牛乳屋に到着したが、もう少し経ってから来てほしいと言われた。仕方なく街へ引き返すと、向こうから6、7人の同級生が見えた。「ジョバンニ、らっこの上着が来るよ」というザネリの叫びに続いて、みんなが囃し立てた。集団の中にいるカムパネルラは気の毒そうに、黙ってジョバンニを見ていた。

みんなが橋のほうへ歩いていくのを見送りながら、ジョバンニはなんとも言えずさびしくなって、黒い丘のほうへ走り出した。

白鳥座から南十字へ向かう旅へ

「おっかさんは、ぼくをゆるしてくださるだろうか」
marumaru/gettyimages

ジョバンニは町はずれの丘の上に身を投げ出し、空へと目をやった。

今日の授業で、先生はあの空の白い帯はみんな星だと言った。けれどもジョバンニには空が先生の言ったようにがらんとした冷たい所だとは思われなかった。見れば見るほどそこには小さな林や牧場のある野原のように思えて仕方なかったのだ。

すると突然、銀河ステーション、銀河ステーションという不思議な声が聞こえてきて、突然目の前がさあっと明るくなった。

気がつくと、ジョバンニはごとごとと走る小さな列車の中にいた。すぐ前の席に、ぬれたようにまっ黒な上着を着た、背の高い子どもが、窓から頭を出して外を見ていた。頭を引っ込めてこちらを見たその子は、カムパネルラだった。

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