罪と罰

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罪と罰
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評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
5.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

読まずに死ねない世界の名著を挙げるとしたら、ドストエフスキーは上位に食い込むはずだ。本に興味がない人でもその名を知らない人はいない、ロシアの文豪は「五大長編」と呼ばれる傑作を遺している。1866年に出版された『罪と罰』もその一つに数えられる名作中の名作だ。

出版当時のロシアでは、1861年の農奴解放令による貧富の差が拡大し、社会全体が混乱し矛盾が噴出していた。『罪と罰』で主人公に据えられたロジオン・ロマーヌィチ・ラスコーリニコフは、貧困のために大学に通い続けることができず、非凡な人間は道徳的な規範さえも超越する権利があるという思想にとらわれ、残忍な殺人へと突き進んでいく。複雑な人間関係の中で、犯罪、贖罪、改心、そして復活が描かれていく。ラスコーリニコフは度重なる尋問で窮地に陥りながらも、追求から逃れ続ける。しかし、他者から与えられる罰から逃れることはできても、罪悪感や悪夢から逃れることはできない。最終的には罪を認め流刑に処されるラスコーリニコフの贖罪は、刑罰によって起こるのではない。真の悔悟からラスコーリニコフは更生へと向かうのである。

結末を知ってから読んでも、世界に残る傑作の魅力は少しも色褪せることはない。繊細な心理描写や、巧妙な駆け引きの様子は、原典で読んでこそ価値がある。要約で大枠を掴んだら、人生の課題図書たる大著にぜひ挑戦してもらいたい。

ライター画像
池田友美

著者

フョードル・ドストエフスキー(Фёдор Миха́йлович Достое́вский)
1821年、モスクワ生まれ。フランス革命に影響を受けた空想的社会主義に関係して28歳で逮捕されるが、刑期満了後はキリスト教的人道主義をテーマに『罪と罰』『白痴』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』などの作品を発表する。1881年59歳で死去。

本書の要点

  • 要点
    1
    ロシアのサンクトペテルブルクで貧困にあえぐ元大学生ロジオン・ロマーヌィチ・ラスコーリニコフは、非凡な人間は社会規範をも超越できるという信念に駆られ、高利貸しの老婆の殺害を企てる。
  • 要点
    2
    老婆を殺害し金品を物色していたラスコーリニコフは、居合わせた老婆の義妹をも殺害してしまう。罪悪感と心理的葛藤の中で、ラスコーリニコフは心身を病んでいく。
  • 要点
    3
    深い信仰心と厚い情を持った娼婦ソーニャとの交流で心を開き、ラスコーリニコフは罪を認め再生と贖罪への道を歩み始める。

要約

選ばれたものにだけ許される殺人

下見
dimapf/gettyimages

7月の初め、ロジオン・ロマーヌィチ・ラスコーリニコフは下宿を出て、高利貸しの老婆アリョーナ・イワーノヴナのもとを訪れた。一月前に質に入れた指輪の期限はもう過ぎていたが、今度は銀時計をかたに借金をしようとしていた。提示された金額は少なく、利子も天引きされてしまったが、ラスコーリニコフは争わずに金を受け取った。そしてできるだけざっくばらんに「妹さんは留守ですか?」と尋ねた。いぶかしがるアリョーナにまごつきながら、ラスコーリニコフはそこを後にした。

手紙

翌日、ラスコーリニコフは母親からの2ヶ月ぶりの手紙を受け取った。「なつかしいわたしのロージャ(ロジオンの愛称)」から始まる長い手紙は、これまで手紙を書けなかった理由や、その間に起こったことを詳細に伝えていたが、要するにたった一人の妹ドゥーニャが愛のない結婚をすることを決めたという知らせであった。兄である自分には相談もなしに、である。

手紙の内容に息がつまりそうになった彼は、帽子をつかんで外に出た。母からの報告は、息子のために娘を犠牲にするという告白にほかならなかった。ドゥーニャの婚約者であるピョートル・ペトローヴィチ・ルージンは実務家で、善良な人「らしい」。きっと彼がラスコーリニコフの学費を助けてくれるだろうと母娘は期待していた。ラスコーリニコフは学費を滞納して大学を除籍になり、家賃の借金もかさんでいたうえ、勤めにも出ていなかったのである。ルージン氏がこのペテルブルグを訪れる機会に、母娘もラスコーリニコフを訪ねて来る予定だという。だが、ルージン氏は自分の花嫁に駅までの馬車を出してやるつもりも、汽車代を出してやるつもりもないらしい。年金暮らしの母親は娘夫婦とは別居するつもりでいるというが、何を頼りに暮らすつもりなのか。娘婿が自分から支援を申し出てくれるだろうと本気で信じているのだろうか。なぜこの程度のことがわからないのか。

啓示
Nastasic/gettyimages

そうして考えているうちに、ラスコーリニコフの頭にある想念がよぎった。彼はこの想念がひらめくことを予感していた。ただし、これまでと違って、はっきりとした形をもっていたのである。

ある店の前を通りかかったとき、アリョーナと二人暮らしをしている妹リザヴェータを見かけた。リザヴェータは翌日の7時に待ち合わせの約束をしているところだった。つまり、明日の晩7時に、老婆は家に一人きりである。

アリョーナ婆さんのことを教えてくれたのは友人の大学生ポコリョフだった。ついこの冬のこと、ポコリョフがハリコフへ立つ前に、万一質を置くようなことがあったらと住所をくれたのだ。それからしばらく、ラスコーリニコフは何とか暮らしていたが、一月半ばかり前にその住所を思い出した。手元にあった質草になりそうな品は、亡き父から譲られた古い銀時計、妹から別れの記念として贈られた金指輪の2つ。彼は指輪を持って老婆のもとを訪れ、ひと目見たときから抑えきれない嫌悪を感じた。2枚のお札を手にした帰り道、安料理屋で腰をおろすと、すっかり考え込んでしまった。と、奇怪な想念が湧き上がり、彼はたちまちそのとりこになった。

奇妙な偶然であるが、彼の隣りのテーブルでは、見知らぬ大学生が若い将校にアリョーナの話をしていた。大変な金持ちだが、安値しかつかない質草でもいやとは言わない。だから、アリョーナのところに行けばいつでも金が工面できる、と。大学生は、彼女がどんな意地悪で我儘かも語り、話はリザヴェータにもおよんだ。リザヴェータは老婆の腹違いの妹で、年は35。姉のために昼夜なく働き、家事もこなしているようだった。

大学生は熱くなって言い足した。「僕はあのいまいましい婆あを殺して、有金すっかりふんだくっても、誓って良心に恥ずるところはないね」。

ラスコーリニコフはぎくっとした。からからと笑う将校に向かって大学生は続ける。無知で無価値な、意地悪で病身な婆あの命と、社会一般の利益のどちらに意味があるだろうか。あの婆あの金さえあれば、たくさんの事業を成し、多くの人の生活を正しい道に向けられるかもしれない。やつを殺して、やつの金を奪い、その金を使って全人類への奉仕に身をささげる。一個のささいな犯罪は、数千の善事で償えないものか?

もちろん大学生には本当にその計画を実行するつもりはない。これはきわめてありふれた、青年者流の議論である。けれどラスコーリニコフ自身の頭にも、正に同じような思想が生まれたばかりのこの時、こんな意見を聞くことになったのは、一種の宿命、啓示のようであった。

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要約公開日 2024.05.31
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