アイドル国富論
聖子・明菜の時代からAKB・ももクロ時代までを解く

未 読
アイドル国富論
ジャンル
著者
境真良
出版社
東洋経済新報社
定価
1,620円
出版日
2014年10月16日
評点
総合
4.2
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.5
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アイドル国富論
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聖子・明菜の時代からAKB・ももクロ時代までを解く
著者
境真良
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出版社
東洋経済新報社
定価
1,620円
出版日
2014年10月16日
評点
総合
4.2
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
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レビュー

アイドルの興亡と日本の歴史の関係から、「日本人が変わらず求めているもの」が浮き彫りになると聞くと、意外に思われるだろうか?「アイドル」は、歌手という形で70年代初頭に生まれ、80年代に一つのピークを迎えた。その後「アイドル冬の時代」を経て、97年のモーニング娘の誕生以降に再び繁栄し、現在は様々なアイドルの群雄割拠の時代に突入した。一方、日本経済の流れと照合すると、「アイドルの時代」は、戦後経済成熟期と現代という「行き詰まった時代」に重なるという傾向が見えてくる。

「アイドル」の興亡と経済政策の変化の関連性というテーマに切り込んだのが、経済産業省に身を置きながらも、エンターテイメント産業の研究者でもあるという、異色のキャリアを積んできた著者である。本書では、アイドルと日本経済の関係を読み解くことで、「日本社会が求めている経済と社会のかたち」をあぶり出していく。80年代以降の、アイドルと「メディア・エンターテイメント産業」の動向を辿りながら、アイドルが生まれた背景と、アイドルが現代日本にどう貢献していたのかを探究していくという点で、本書は単なるアイドル史を凌駕している。日本の産業論・文化論としても十二分に楽しめることは間違いない。日本の文化論という枠組みの中で、中産階級の精神構造を歴史の流れの中で知っておくことは、グローバル化の波で変貌を遂げていく日本経済やマーケティングの未来を予測する際に必須の「生きた知恵」になってくれるはずだ。

松尾 美里

著者

境 真良(さかい まさよし)
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)客員研究員。他に、経済産業省国際戦略情報分析官(情報産業)。
1968年東京都生まれ。学生時代よりゲームデザイナー、ライターとして活動し、1983年に東京大学を卒業、通商産業省に入省。経済産業省メディアコンテンツ課の起ち上げに課長補佐として参画。
その後、東京国際映画祭事務局長、早稲田大学大学院客員准教授、(株)ドワンゴ等を経て、現職。専門分野はIT、コンテンツ、アイドル等に関する産業と制度。著書に『テレビ進化論』(講談社、2008年)、『Kindleショック』(ソフトバンククリエイティブ、2010年)ほか。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本人が非実力派のアイドルを好むのは、戦後から80年代までマッチョ主義を「公式規範」としながらも、実態は次第にヘタレ化していたからである。
  • 要点
    2
    現代アイドルは、「ヘタレマッチョ」たちの主体性を回復させる存在である。共に闘い、励まし、そして「究める姿」を見せることで、彼らを全身全霊で鼓舞する。
  • 要点
    3
    グローバル市場主義と中産階級主義が両立した日本において、精一杯頑張る現代アイドルは、マッチョな文化メカニズムでは救えない多くのヘタレたちを励まし、マッチョとヘタレを融和する役割を担っている。

要約

80年代アイドルの趨勢

carloscastilla/iStock/Thinkstock
アイドルの発生

映像メディアの主役が、映画からテレビへ交替することで、アイドルが誕生した。「アイドル」の定義は、「若くて、歌手で、メディアミックス的に活動し、目の覚めるような美貌や声や演技力には恵まれてない非実力派」というものである。映画時代の「スター」とテレビ発の「アイドル」を隔てたのは「非実力派である」という一点に集約される。

アイドルの皮切りは南沙織をはじめとする「新三人娘」であった。「花の中三トリオ」、とりわけ山口百恵は国民的アイドルとなり、アイドルのプロトタイプを確立していく。

キャンディーズやピンクレディーといったグループアイドルを生み出しながら、アイドルの爛熟期と呼べる80年代に突入した。アイドルの王道と言える松田聖子や、その筆頭ライバルである中森明菜が登場する。息の長いタレントを多数輩出した「花の82年組」の頃には、小泉今日子が「なんてったってアイドル」でアイドルの生活を戯画的に歌い上げ、アイドルが演じられる時代になっていく。

「アイドル」のビジネスモデル

コンテンツ制作量が急増したテレビや雑誌の世界で、顧客吸引力があるタレントとしてアイドルの存在が必要になった。アイドルの大量生産には、次の2つの仕組みが奏功した。

1)芸能プロダクションが専属的にアイドルを売り出していくという独自のビジネスモデルが誕生したこと

2)テレビや雑誌、映画などのメディアミックス戦略によって「どこかで儲かる」状態をつくったこと

こうしてアイドルが繁栄する一方で、鋭い「アイドル批判」も育っていった。それは「歌が上手くないのに人気があるアイドル歌手を歌手として認めたくない」というアーティスト魂からの告発である。実際、「アイドルはニセモノ」という「やましさ」は音楽業界自体にあったようだ。

そんな中、「アイドルの卵」を消費者に提供して、彼ら自身の創造力でアイドルを作ってもらうという発想が芽生えた。それをいち早く取り入れた秋元康は、20名以上のメンバーが歌う「おニャン子クラブ」という壮大な社会実験を始める。「卒業」システムやソロデビュー、派生ユニットなどの仕組みを導入し、アイドル界のドラマツルギーを可視化したと言える。しかし、その活動はたった2年半弱で幕を閉じた。80年代終わりには、日本の経済成長の申し子である「アイドル」は、バブル経済の頂点に達した時にかき消えてしまい、「アイコン」の座を追われてしまったのだ。

アイドルの消費論

Digital Vision./Digital Vision/Thinkstock
マッチョ主義とヘタレ主義

そもそも、日本人が非実力派のアイドルを好むのはなぜか。まず、アイドルの形態的特徴は「かわいい」だ。これは、完全性を志向する「美しい」と対比して、「アンバランス」・「子どもっぽい」など、不完全なものという意味をもち、「触れたい・庇護してあげたい」という欲求を引き起こす。つまりそれは「支配したい」という欲求と同義であり、対象を自分より劣等な存在と見なすことにも通じている。

この言説に異を唱えたくなるとしたら、それは「劣等な存在を選んではいけない。素晴らしい異性に挑戦すべきだ」という規範を認めている証拠だと言える。

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