世界2位の経済大国まで登りつめた後、日本経済は今に至る「失われた30年」に突入し、「日本は終わった」と評されることすらある。だが、経済規模は未だ世界3位。餓死のリスクもほとんどなく、治安もよく、インフラも整備されている。今の日本は、間違いなく物質的に豊かで便利な国だ。
それなのに、日本の幸福度は極度に低い。それは、多くの人が情報と選択肢の多さに消耗し、何も選べないまま、周囲に流されるままに生きているせいではないだろうか。
欧米のベストセラー『Tiny House』には「Live Small, Dream Big――小さく生活し、夢は大きく」という副題が当てられている。本書はこれを「贅沢やムダを省いて超効率化して得る時間・エネルギー・資金を、人生の夢に投資する」と解釈する。そして、「どうでもいいことに注ぐ労力・お金・時間を最小化して、あなたの可能性を最大化する」ための合理的な人生戦略「超ミニマル・ライフ」を提案する。
具体的に紹介するノウハウは「7つのSTEPと62のMethod」であるが、すべての技法は下記の「3つの原則」に集約される。
(1)体・脳・心の負担を最小化して「パフォーマンス」を最大化する
(2)仕事と家事を超時短して「自由時間」を最大化する
(3)お金・仕事・人間関係の不安をなくして「幸福度」を最大化する
本書を通してこの3原則を体得できたら、あなたの「夢」に一点集中できるようになるはずだ。
「働けば働くほど稼げる」という幻想が信じられていた20世紀の日本では、多くの人が休まず働き仕事に命を捧げていた。だが、「人生100年時代」と言われる21世紀には、こうした働き方は非合理的だ。
米国の複数の調査では、余暇を大切にしてしっかり休む人の方が、幸福度が高いことがわかっている。また、幸福度が高い人は、そうでない人よりも生産性が31%高く、創造性は3倍も高い。
日本人の睡眠時間は世界最短で、有休消化率は先進国最低レベル、そのうえ労働生産性は先進国で下位グループだ。日本の幸福度はG7では最下位である。
著者は日本が抱える社会問題の根源は「働きすぎ」にあるのではないかと考える。厚生労働省の調査では、働く人の8割が強い不安やストレスを抱えている。忙しくて、まともに食事ができない人や、休めない人がいるだろうことは想像に難くない。
長く険しい山道を踏破するには、最小限の装備で自分のペースで歩き続ける「ロングスロー・ディスタンス術」が有効だ。人生100年時代に必要なのは、「ロングスロー・ディスタンス思考」だ。不要な荷物は背負わず、必要最小限の装備で、誰とも競争せずにいいペース配分を守り続ける。この考えは、働き方や生き方においても重要な指針となりうる。
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