多様性やダイバーシティ(Diversity)という言葉はよく聞かれるようになった。
組織に求められる多様性の中で、代表的な属性は性別だ。男女比率はもちろん、性的マイノリティーも含め、組織を構成するジェンダーは多様であることが求められる。年齢、民族や国籍、宗教などの属性において多様であることも重視される。
人事部や経営企画室、広報IR部などの活動では、D&I(またはI&D)、DEIといった言葉も出てくる。DはDiversityを、Iはインクルージョン(Inclusion、包括)、Eはイクオリティ(Equality、平等)とエクイティ(Equity、公平)を表す。D&I、DEI、女性活躍推進、男性育休取得促進、イクボス育成など、表現はさまざまであるが、どの活動も多様性に関わる取り組みである。
2015年に国連総会で掲げられた持続可能な開発目標・SDGsには、「ジェンダー平等を実現しよう」「人や国の不平等をなくそう」「平和と公正をすべての人に」という、多様性に直接関わる目標が盛り込まれている。そして、国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、特にジェンダー平等の実現が、他の問題の解決にも寄与すると見なしてと勧告を出している。
経済界でも多様性の重要性は近年急激に高まっている。2020年1月は米国の金融大手ゴールドマン・サックスが、ダイバーシティをもたらす人材が取締役会にいない企業には上場支援しないことを表明。同年12月には米国証券取引所のナスダックも上場企業に対して多様性を含む人材の採用を義務付ける方針を打ち出した。
多様性の波は日本の経済界にも押し寄せている。金融庁と東京証券取引所(東証)は2021年6月、企業の行動指針となるコーポレートガバナンス・コードの改訂に向けた内容を発表。管理職層における多様性の確保に積極的に取り組み、情報開示することを企業に求めた。日本国民の年金という巨額資金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を筆頭とし、多様性、特にジェンダー多様性を考慮して投資先を判断するなど、投資家サイドにも多様性を重視する動きが出てきている。
多くの実証研究によれば、ジェンダー多様性に富む企業は幅広い人材プールにアクセスでき、優れた経営パフォーマンスをあげる可能性が高い。これが、ジェンダー多様性を考慮して投資先を決める一つの根拠になっているわけだが、日本は多様性の中でも、ジェンダー平等の項目で世界から取り残されているレベルに留まっている。
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