崖っぷちだったアメリカ任天堂を復活させた男
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崖っぷちだったアメリカ任天堂を復活させた男
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2024年05月22日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

1983年に発売された「ファミコン」の成功を経て、世界のゲーム市場を席巻してきた任天堂。2024年3月期の決算では、純利益4906億円と過去最高を更新した。さらには、Nintendo Switchの後継機が今年度中に発表されるというニュースに、心躍る読者もいるのではないだろうか。

そんな任天堂も、2003年には凋落の時代を迎えていた。この時期にアメリカ任天堂(NOA)に参画し、見事立て直しを図った人物が、本書の著者レジー・フィサメィ氏である。ハイチ移民の子として生まれた著者は、奨学金でコーネル大学へ進学した。P&Gのマーケターとしてキャリアを開き、ペプシコ、VH1などを渡り歩いてきた。そんな彼は、NOAでいくつもの壁に直面しながらも、社長兼COOに上り詰めていく。そして、「ニンテンドー DS」「Wii」「Nintendo Switch」を世界に送り出していった。そのパワフルさは、ターミネーターシリーズにちなんで「レジネーター」と呼ばれたほどだ。

ゲーム業界のトップに立つためにどんな戦略を実行したのか? トップと見解が違っても、自らの考えを貫くには? 本書では、挑戦の軌跡が赤裸々に綴られており、そこから導かれた教訓は実に説得力に満ちている。また、任天堂の代表取締役社長を務めた故岩田聡氏とのエピソードからも、信頼関係の強さがうかがえ、心に響くものがある。

アメリカ任天堂の心沸き立つ改革ストーリーを、とくと味わっていただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

レジー・フィサメィ
任天堂の最大子会社、アメリカ任天堂(Nintendo of America:NOA)の元社長兼COO(最高執行責任者)。ハイチ移民の子として生まれ、幼少期はブロンクスで育つ。奨学金でコーネル大学に進学し、P&Gのマーケターとしてキャリアをスタートさせる。その後、ペプシコ、VH1などを渡り歩き、2003年、アメリカ任天堂に入社。2006年、社長兼COOに就任。2016年、任天堂本社の執行役員に任命される。アメリカ、カナダ、ラテンアメリカにおける任天堂の活動すべてに関わった。ニンテンドーDS、Wii、ニンテンドー3DS、Wii U、Nintendo Switchを世界の市場に送り出した。2019年に任天堂を退社し、現在は、次世代のビジネスリーダーの育成に精力を注いでいる。

本書の要点

  • 要点
    1
    レジー・フィサメィ氏は、ゲーム産業のさらなる成長を見込んで、任天堂に転職した。巨大イベントE3では、任天堂を再生させるための勝負に出て、「ニンテンドー DS」を観客に印象づけた。
  • 要点
    2
    家庭用ゲーム機のプレイに革命を起こすという意気込みで、「Wii」を世に送り出した彼は、NOAの社長就任後、3つの緊急の問題を解決しようとした。
  • 要点
    3
    失敗からの学びのもとに生み出されたハイブリッドなゲーム機が「Nintendo Switch」である。

要約

ピンチかチャンスか?

任天堂の凋落

2003年、ケーブルテレビチャンネルのVH1でコンテンツビジネスを牽引していたレジー・フィサメイ氏(以下、レジー)は、変革的なプロジェクトの指揮をとれないことに業を煮やしていた。そんな彼のもとに、任天堂のリクルーターから電話があった。セールスとマーケティングの次の代表を探しているというのだ。

当時の任天堂は苦境に立たされていた。2001年に家庭用ゲーム機「ニンテンドー ゲームキューブ」を発売したが、その前年に発売されたソニーの「PlayStation2」の前に霞んでいたのだ。任天堂にとっては、小型ゲーム機が最も収益性があるビジネスにもかかわらずだ。

レジーは任天堂への転職について、周囲のほぼ全員から反対された。だが、彼はゲーム業界を消費者の視点で理解していた。「マリオ」「ポケモン」「スマブラ」などのゲームに熱中していたし、子供たちも同じくゲーム好きだった。我が子と同世代の子供たちが稼げるようになれば、ゲーム産業はさらに著しく成長すると見ていたのだ。

キャリアの大きな決断では、分析的思考と、心の奥の直感が求められる。レジーは、任天堂が直面する問題と、自分ならどう解決するかを、何ページもメモにした。そして「自分なら任天堂を変えられる」と判断し、全てを賭けようと決める。

岩田氏とのビデオ会議
Larysa Pashkevich/gettyimages

採用の過程では、2002年にグローバル・プレジデントに任命された岩田聡氏とのビデオ会議もあった。重要なのは、彼と強固な関係を築けるかだ。

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要約公開日 2024.06.01
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