魚ビジネス

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出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2023年04月21日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

なぜ日本の寿司は世界中で愛されるようになったのか。

近大マグロは何がすごいのか。

養殖の魚は天然の魚よりも味が劣るのか。

――本書で解説されているトピックの一例だ。東京海洋大学を卒業後、水産物流通の現場を経て「魚ビジネス」のプロとしてさまざまなシーンで活躍する著者・ながさき一生氏が、「魚」と「魚ビジネス」について解説してくれている。

私たちは普段、何気なく魚を食べている。食事を楽しむうえで、冒頭のような疑問を抱くことはほとんどないだろう。だが、魚は身近な存在である分、問いを提示されてみると、その答えが気になって仕方なくなるのではないだろうか。

たとえば冒頭の「養殖の魚は天然の魚よりも味が劣るのか」の答えは「NO」だ。「養殖の魚はおいしくない」と言われたのは過去の話。本書によると、近年では「むしろ養殖の方が好き」という人も増えているそうだ。また養殖の魚は天然の魚と違い、生け簀の中で同じエサを食べて育つため、常に一定の味を安定的に供給できるのだという。これは大きなメリットだ。

「魚についてもっと知りたい」という気持ちが湧いてきたら、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。誰かにシェアしたくなる「魚の教養」がたっぷり詰まった、学び多き一冊だ。

著者

ながさき一生(ながさき いっき)
おさかなコーディネータ
株式会社さかなプロダクション 代表取締役 フェロー
一般社団法人さかなの会 理事長・代表
東京海洋大学 非常勤講師

1984年、新潟県糸魚川市にある「筒石」という漁村の漁師の家庭で生まれ、家業を手伝いながら育つ。2007年に東京海洋大学を卒業後、築地市場の卸売企業に就職し、水産物流通の現場に携わる。その後、東京海洋大学大学院で魚のブランドや知的財産の研究を行い、修士課程を修了。2006年からは、ゆるい魚好きの集まり「さかなの会」を主宰し、「さかなを捌きまくる会」などの魚に関するイベントをこなす中で、メディアにも多数取り上げられる。2017年に「さかなプロダクション」を創業し独立。食としての魚をわかりやすく解説する中で、ふるさと納税のコンテンツ監修や、ドラマ「ファーストペンギン!」の漁業監修を手がける。水産業を取り巻く状況を良くし、魚のコンテンツを通じて世の中を良くするため、広く、深く、ゆるく、そして仲間たちと仲良く活動している。

[さかなの会ホームページ]https://www.sakana-no-kai.com/
[X(旧Twitter)]https://twitter.com/nagasaki_ikki
[Instagram]https://instagram.com/nagasaki.ikki/

本書の要点

  • 要点
    1
    魚の品質は、どのような流通を辿ってきたかによって決まる。「大間まぐろ」が最高峰マグロと評価されるのは、ただでさえ品質の良い「大間まぐろ」を最も良い獲り方で獲り、新鮮なうちに運んでいるためだ。
  • 要点
    2
    近大マグロは、世界で初めて完全養殖に成功したクロマグロだ。「人が育てたマグロから卵を産ませて、その幼魚をまた育てて卵を産ませる」というサイクルを繰り返すため、天然資源に頼ることなく生産できる。
  • 要点
    3
    オンライン商談が一般的になった今でも、魚の売買は豊洲市場で行われている。画像や動画では、細部の様子や微妙な色の違い、匂いなどの情報がやり取りしにくいからだ。

要約

【必読ポイント!】 寿司から学ぶ魚ビジネスの世界

なぜ日本の寿司は世界に広まったのか
xxwp/gettyimages

キッコーマン国際食文化研究センターは、日本の寿司が世界に広まった要因を4つにまとめている。

1つ目は、健康に良いから。世界的な健康ブームにおいて、長寿大国日本の食が注目を集める中、寿司もヘルシーで健康に良い食べ物と捉えられるようになった。

2つ目は、食材を世界中で調達できるから。寿司の材料である醤油、酢、海苔、寿司ネタは、日本以外の国でも手に入る。

3つ目は、安価で美味しい寿司米が世界に広がったから。アメリカではカリフォルニア米、イタリアでは「あきたこまち」、スペインでは「みのり」が作られ、寿司に使われている。

4つ目は、回転寿司と寿司ロボットの影響により、寿司が安価で食べられるようになったから。回転寿司は、自分の好きなものを目で見て選べ、好きなネタを好きなだけ食べられるため、日本料理の知識がなくても手を出しやすいというメリットもある。

これらに加えて、寿司が持つ味の良さと「許容範囲の広さ」も大きな要因だろう。

許容範囲の広さの例として紹介したいのは、サーモンの寿司だ。かつて日本にサーモンの寿司は存在しなかった。日本人が食べていた天然の鮭には寄生虫がいるため、生食されていなかったのだ。

そこに目をつけたのがノルウェーだ。ノルウェーサーモンは養殖で管理されているため、寄生虫リスクが少なく、生食が可能である。「日本では刺身や寿司ネタになるものは高く売れる」と知っていたノルウェーの担当者が粘り強くノルウェーサーモンを売り込んだことから、サーモンの寿司が生まれた。

シャリはなぜ酢飯なのか

刺身と寿司はいずれも生魚を使った料理だ。その違いを一言で表現すると、刺身は「魚」単体であり、寿司は「魚」+「シャリ」ということになる。

まず、刺身は小さく切られた魚の身をそのまま食べる、素材の味をダイレクトに楽しむ料理だ。だからこそ鮮度が大事な要素となるが、鮮度は漁獲後、刻一刻と落ちていく。ゆえに刺身は産地で食べるのに適した料理といえる。

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要約公開日 2024.08.25
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