本書の要点

  • 魚の品質は、どのような流通を辿ってきたかによって決まる。「大間まぐろ」が最高峰マグロと評価されるのは、ただでさえ品質の良い「大間まぐろ」を最も良い獲り方で獲り、新鮮なうちに運んでいるためだ。

  • 近大マグロは、世界で初めて完全養殖に成功したクロマグロだ。「人が育てたマグロから卵を産ませて、その幼魚をまた育てて卵を産ませる」というサイクルを繰り返すため、天然資源に頼ることなく生産できる。

  • オンライン商談が一般的になった今でも、魚の売買は豊洲市場で行われている。画像や動画では、細部の様子や微妙な色の違い、匂いなどの情報がやり取りしにくいからだ。

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【必読ポイント!】 寿司から学ぶ魚ビジネスの世界

なぜ日本の寿司は世界に広まったのか

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キッコーマン国際食文化研究センターは、日本の寿司が世界に広まった要因を4つにまとめている。1つ目は、健康に良いから。世界的な健康ブームにおいて、長寿大国日本の食が注目を集める中、寿司もヘルシーで健康に良い食べ物と捉えられるようになった。2つ目は、食材を世界中で調達できるから。寿司の材料である醤油、酢、海苔、寿司ネタは、日本以外の国でも手に入る。3つ目は、安価で美味しい寿司米が世界に広がったから。アメリカではカリフォルニア米、イタリアでは「あきたこまち」、スペインでは「みのり」が作られ、寿司に使われている。4つ目は、回転寿司と寿司ロボットの影響により、寿司が安価で食べられるようになったから。回転寿司は、自分の好きなものを目で見て選べ、好きなネタを好きなだけ食べられるため、日本料理の知識がなくても手を出しやすいというメリットもある。これらに加えて、寿司が持つ味の良さと「許容範囲の広さ」も大きな要因だろう。許容範囲の広さの例として紹介したいのは、サーモンの寿司だ。かつて日本にサーモンの寿司は存在しなかった。日本人が食べていた天然の鮭には寄生虫がいるため、生食されていなかったのだ。そこに目をつけたのがノルウェーだ。ノルウェーサーモンは養殖で管理されているため、寄生虫リスクが少なく、生食が可能である。「日本では刺身や寿司ネタになるものは高く売れる」と知っていたノルウェーの担当者が粘り強くノルウェーサーモンを売り込んだことから、サーモンの寿司が生まれた。

シャリはなぜ酢飯なのか

刺身と寿司はいずれも生魚を使った料理だ。その違いを一言で表現すると、刺身は「魚」単体であり、寿司は「魚」+「シャリ」ということになる。まず、刺身は小さく切られた魚の身をそのまま食べる、素材の味をダイレクトに楽しむ料理だ。だからこそ鮮度が大事な要素となるが、鮮度は漁獲後、刻一刻と落ちていく。ゆえに刺身は産地で食べるのに適した料理といえる。

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要約公開日 2024.08.25
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