教養としての「半導体」
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教養としての「半導体」
出版社
日本実業出版社

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出版日
2024年04月20日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

近年、急速に注目を集めている「半導体」。スマートフォンやパソコン、家電など、身近なテクノロジーには必ずといっていいほど半導体が使われている。今や私たちの暮らしは半導体なしには成り立たない。

とはいえ、「半導体」が何なのかわからない人も多いだろう。そんな方々にぴったりの情報を提供してくれるのが本書である。著者の菊地正典氏は50年以上も半導体業界に身を置き、現在は半導体エネルギー研究所で顧問を務める「半導体のエキスパート」だ。

本書では、半導体が何に使われているか、半導体業界の全体像と相関図、世界の注目企業、日本半導体産業の歴史と展望などを幅広く紹介している。要約ではこの中から、半導体市場の理解に役立つトピックを中心に構成した。

半導体のわかりにくい点は、産業全体の裾野が広く複雑であることだ。設計から製造、販売まで一気通貫で行う企業もあれば、その工程の一部だけを担う企業もある。熊本に工場を建設している台湾のTSMC は、大手IT企業が設計したチップを受託製造する半導体メーカーだ。本書を読むと業界を俯瞰して見られるようになり、現在起きている事柄についても理解が深まるだろう。

今や半導体はあらゆる国・地域のインフラであり、半導体需要は今後も上がり続けるだろう。半導体に興味がある人もない人も、「教養書」として本書を一読してはいかがだろうか。

著者

菊地正典(きくち まさのり)
1944年、樺太生まれ。1968年、東京大学工学部物理工学科卒業。日本電気(株)に入社して以来、一貫して半導体デバイス・プロセスに従事。同社半導体事業グループの統括部長、主席技師長を歴任。(社)日本半導体製造装置協会専務理事を経て、2007年8月から(株)半導体エネルギー研究所顧問。著書に『〈入門ビジュアルテクノロジー〉最新 半導体のすべて』『図解でわかる半導体製造装置』『プロ技術者になる! エンジニアの勉強法』(以上、日本実業出版社)、『「電気」のキホン』『「半導体」のキホン』『IoTを支える技術』(以上、SBクリエイティブ)、『史上最強図解 これならわかる!電子回路』(ナツメ社)、『半導体工場のすべて』『半導体産業のすべて』(以上、ダイヤモンド社)など多数ある。

本書の要点

  • 要点
    1
    半導体産業は裾野が広く、多種多様な関連業界が相互に絡み合いながら構成されている。全貌を把握するには、業界同士の関係性を把握する必要がある。
  • 要点
    2
    半導体製造には、一貫工程をすべて自社で行う半導体メーカーのほか、「前工程」の製造のみを行うファウンドリー、「後工程」の組立・検査後を行うOSAT がある。
  • 要点
    3
    半導体はコンピュータ、スマートフォン、家電製品、クルマ、医療、AIなど、多くのものに使われている。
  • 要点
    4
    半導体市場は右肩上がりで成長している。2027年には100兆円の市場規模となるだろう。

要約

【必読ポイント!】半導体業界の全体図

半導体産業にはどんな業界があるのか
P.18 より引用(日本実業出版社提供)

半導体産業は多種多様な関連業界で構成され、グローバルな広がりの中、各業界は相互に絡み合っている。まずは半導体産業の全体イメージを掴むため、どのような業界があり、各業界がどんな役割を担っているのかを見ていこう。

○半導体メーカー(IDM )

半導体メーカーは、半導体の設計から製造、販売に至るまで、半導体の一貫工程をすべて自社で行う企業である。業界内では「IDM(Integrated Device Manufacturer)」と呼ばれており、有名企業にはインテルやサムスン、キオクシアなどがある。

○大手IT企業

グーグルやアップル、アマゾンなどの大手IT企業も半導体業界に属している。彼らは自社で使う半導体の設計のみを行い、製造を外部に委託している。

○製造装置業界

半導体の製造装置をつくり、その装置を半導体メーカーやファウンドリー(半導体の製造ラインを持ち、他社からの受託生産を行う企業)などに提供している。日本はこの業界に強く、東京エレクトロン、ディスコなどの有力企業が多数存在する。

○部品・材料業界

半導体の製造に必要な部品や材料を、IDMやファウンドリーなどに提供する。信越化学工業 、SUMCO など、多くの日本企業が活躍している。

○ファブレス業界

ファブレスとは、工場設備を持たず設計のみを行う企業を指す。製造は自社で行わず、ファウンドリーやОSAT(組立・検査の工程を受託する企業)に受託する。代表的な企業は、アメリカのエヌビディアやクアルコムなどだ。

○ファウンドリー、OSAT

ファウンドリーとOSATは、いずれも他社からの受託生産をする企業群だ。ファウンドリーは製造を行う「前工程」、OSATは組立・検査を担う「後工程」を受け持つ。ファウンドリーでは台湾のTSMCが世界シェア70%を占めている。OSATは台湾、中国に有力企業が集まっている。

○その他の業界

半導体の設計ツールを提供する「EDA ベンダー」、半導体の知的財産「IP」を提供する「IPプロバイダー」、そして半導体製品の仕入れ・販売を行う「半導体商社」がある。

以上のように、多数の異なる企業群が複雑に絡み合い、競合したり協同したりしているのが現在の半導体産業である。

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要約公開日 2024.08.23
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