進撃のドンキの表紙

進撃のドンキ

知られざる巨大企業の深淵なる経営


本書の要点

  • ドンキは、アジアでゼロから新業態を立ち上げ、北米ではM&Aを駆使して店舗網を広げている。

  • ドンキはチェーンストア理論の真逆を行き、現場に徹底して権限を委譲する「主権在現」の鉄則を貫いている。

  • 小売業はアミューズメントという考えのもと、面白い空間の創造を重要視している。

  • 創業者が自ら記した小冊子「源流」がPPIHの「真のCEO」である。

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海を渡ったドンキ

まるで日本の「デパ地下」

シンガポールで「ドンドンドンキ」が大増殖している。2017年にシンガポール1号店が開業したのを皮切りに、6年で16店舗目がオープンした。これは日本専門を打ち出した新業態だ。コンセプトは、ジャパンブランド・スペシャリティーストア。日本のデパ地下のように、生鮮品、惣菜、寿司、たこ焼きなど何でも揃う。この新業態を編み出したのは、ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス (PPIH)創業会長兼最高顧問の安田隆夫氏だ。シンガポールに移住し、日本の食品の高さに憤りを覚えたのがきっかけとなった。今では、ドンキはシンガポール、タイ、マレーシア、香港、台湾、マカオで、合計40店舗越えとなっている。現地での知名度はうなぎ登りで、グローバルで先行していたユニクロに迫る勢いである。

「物販飲食」という発明

masa44/gettyimages

ドンドンドンキの特徴は2つある。1つめの特徴は「日本推し」だ。シンガポールでの人気に火をつけたのは、ドンキのキラーコンテンツ「焼きいも」である。しっとりと甘い味わいが評判の焼きいもは、熱帯気候のシンガポールでも見事に人々の心を捉え、わずか一日で3000本も売れた。つづいて、日本の果物の取り扱いを拡大し、イチゴが爆発的にヒットした。アジア事業責任者の町田悟史氏は、日本の食にポテンシャルがあると確信し、店内を日本推しに変えていったのである。

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要約公開日 2024.09.12
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