どんなに運動能力が高い人でも、フルマラソンを一度も練習しないで走ろうとはしないだろう。本番に備えて準備運動をし、基礎体力をしっかりつけるはずだ。脳も同じで、新しく勉強などを始める前には準備運動が必要である。
まず知っておいてほしいのは、脳内には8つの「脳番地」があり、それぞれの脳番地が異なる役割を担っているということだ。具体的には、視覚系脳番地、聴覚系脳番地、思考系脳番地、理解系脳番地、記憶系脳番地、運動系脳番地、感情系脳番地、伝達系脳番地の8つである。
毎日同じような日々を過ごしていると、使う脳番地が偏ってしまいがちだ。脳番地への理解を深めるとともに、普段あまり使っていない脳番地を意識的に動かして、脳の基礎体力を底上げしよう。
あなたは今、公園のベンチに座ってぼーっとしているとしよう。その間も、脳内ではいくつかの脳番地が稼働し、毎秒1~5回の電気信号が送り出されている。そこで公園に桜が咲き始めていることに気づけば、電気信号は毎秒50~100回程度にまで増える。久しぶりに会う親友が偶然現れでもしたら、電気信号は毎秒500回以上になるだろう。このように電気信号が活発になった状態を「発火」という。
インパクトの強い情報が脳に入力されると強い発火が起こる。「もっとすごい脳」を手に入れるためには、発火をコントロールして、脳の働きをよくすることが非常に重要だ。
普段から使用頻度の高い脳番地同士は連携が強く、車が高速道路を走るようにスイスイと情報を伝達できる。一方、あまり使われていない脳番地の情報伝達スピードは、使用頻度によって、流れのいい二車線の一般道路のようだったり、ノロノロ運転の狭い一方通行道路のようだったりする。
発火は脳の連携プレーにも強く関係する。目や耳を通して脳に情報がインプットされると、視覚系や聴覚系の脳番地が発火する「ニューロナルファイアリング」(以下、ファイアリング)が起こる。その後、「ネットワークファイアリング」によって、インプットされた情報が理解系や思考系の脳番地に届けられる。つまり脳内では、脳番地のファイアリングが起こり、ネットワークファイアリングによって情報が伝達され、また次の脳番地でファイアリングが起こる……というサイクルが繰り返されているのだ。最初の情報入力のインパクトが強いほど、ファイアリングが強くなり、ネットワークファイアリングから次のファイアリングへの伝播もしやすくなって、記憶に定着する。
注意したいのは、使用頻度の低い脳番地ではファイアリングが起こりにくくなっていることだ。結果として、ネットワークファイアリングも起こりづらくなり、せっかくインプットされた情報を活かし切れない。そうならないよう、まずは各脳番地の特性とファイアリングが起こる条件を把握しよう。
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