本書の要点

  • 「ブランディング」という言葉は定義が曖昧で、過剰期待を生んでいる。ブランディングに力を入れても、その商品・サービスの便益や独自性が弱ければ、顧客の購買にはつながらない。

  • 買うかどうかの決め手となるのは「便益」と「独自性」である。

  • ブランディングの目的は「想起性の確立」「情緒的・心理的価値の提供」「インナーブランディング」の3つである。

  • ブランディングによる事業成果は「NPI(次回購入意向)」で測ることができる。

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ブランディングの誤解

あらためて「ブランディング」とは何か

「ブランディングをすれば商品が売れる」と思っているかもしれない。しかし、それは誤解である。

そもそも「ブランディング」の定義は曖昧で、それゆえに過剰期待を生んでいる。「かっこいいデザイン」「雰囲気の良さ」「流行の最先端」を“ブランド”だと考える人は多いが、それだけで物が売れることはほとんどない。

ブランディングに過剰な期待をしてしまう要因の1つが「ラグジュアリーブランド」の存在だ。ラグジュアリーブランドは、情緒的な価値観や哲学、思想、歴史を表現したスタイルやデザイン、ストーリーでサービスを提案する。しかし、これを一般的な消費財に適用したらどうだろうか。「美しいデザインだから買う」という人は少なそうだ。

ブランディングの目的は、商品やサービスを消費者の記憶に残し、識別しやすくすることである。また、ブランディングによって「好感度」という付加価値を生み出すことはできても、それだけで購買を促すのは難しい。商品やサービスそのものの便益や独自性が弱ければ、ブランディングに力を入れても継続的な購入にはつながらないのである。

アップルの伝説的広告は売上に貢献したのか

Riska/gettyimages

1997年に打ち出されたアップルの広告「Think different.」は、ブランディングの世界で語り継がれる伝説的な広告だ。しかしこのキャンペーンの翌年、売り上げは前年を下回った。

現在のアップルが誇る驚異的な売上と時価総額の成長は、「iPhone」「MacBook」「iPad」といった2000年代以降にリリースされた新商品の連続ヒットによるものだ。

「Think different.」がどのような目的で製作されたかはわからない。たしかなのは、視聴者やメディアから大きな反響を得たものの、売上や株価にはそれほど貢献しなかったという点である。

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要約公開日 2025.05.01
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