対話のトリセツ
対話のトリセツ
ハイブリッド・コミュニケーションのすすめ
対話のトリセツ
出版社
出版日
2025年04月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「なぜ気持ちをわかってくれないんだろう?」「なんであんな言い方するんだろう?」

人とのコミュニケーションにおいて、そう感じたことは一度や二度ではないはずだ。真摯に話しているつもりなのに、なぜか私たちの会話はすれ違う。相手の不躾な応対や、的を射ない不明瞭な回答。なぜ、こんなことが起きるのだろうか?

その答えは「脳」にある。人間の脳の回路は「タテ型」と「ヨコ型」の2種類あり、コミュニケーションにおいても特性が異なる。タテ型回路は「脳の縦方向の信号を使う」回路であり、単刀直入で「問題解決」を目的とした会話が得意だ。一方のヨコ型回路は、気持ちやプロセスを重んじ、相手に共感を求めながら対話を進める。これを聞いただけで「自分はこっちのタイプだ」と思い当たるのではないだろうか?

人間は本来どちらの回路も使えるのだが、優先させる回路をあらかじめ決めているそうだ。著者によると、多くの場合、男性はタテ型・女性はヨコ型であり、立場や関係性によっても変わってくるという。

本書は『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』など、「トリセツシリーズ」が人気の黒川伊保子氏による一冊だ。「よかれ」と思って取っている言動も、脳の回路が違うとすれ違ってしまう。本書はそんな「悲しくもありふれた日常」を解きほぐし、一筋の光を差してくれる。

相手との対話に絶望する前に、ぜひ本書を開いてほしい。「なーんだ、そんなことだったのか!」と肩の力が抜けること請け合いだ。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

黒川伊保子(くろかわ いほこ)
1959年、長野県生まれ、栃木県育ち。1983年奈良女子大学理学部物理学科卒。人工知能研究の立場から、脳を機能分析してきたシステムエンジニア。脳のとっさの動きを把握することで、人の気分を読み解くスペシャリスト(感性アナリスト)である。コンピュータメーカーにてAI開発に携わり、男女の感性の違いや、ことばの発音が脳にもたらす効果に気づき、コミュニケーション・サイエンスの新領域を拓く。2003年、(株)感性リサーチを設立、脳科学の知見をマーケティングに活かすコンサルタントとして現在に至る。特に、男女脳論とネーミングの領域では異色の存在となり、大塚製薬のSOYJOYをはじめ多くの商品名に貢献。人間関係のイライラやモヤモヤに目からウロコ、の解決策をもたらす著作も多く、『妻のトリセツ』(講談社+α新書)をはじめとするトリセツシリーズは累計で100万部を超える人気。現在は、NHKラジオ第1の生放送番組「ふんわり」の金曜パーソナリティも務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間の脳の回路には「タテ型回路」と「ヨコ型回路」がある。タテ型回路は空間認知を得意とし、圧倒的な危機管理能力を持つ。一方のヨコ型回路は、身近な変化を見落とさない「気づきの回路」で、危機回避力が高い。2つの回路を同時に使うことはできない。
  • 要点
    2
    コミュニケーションにおいて、タテ型は「問題解決型」でヨコ型は「共感型」だ。両者の会話がすれ違うのは、対話特性が異なるためである。
  • 要点
    3
    異なる対話特性を乗り越える奥義は、「相手の話を、共感で受ける」「自分の話は、結論から始める」の2つである。

要約

脳に潜む二大特性

2つの「とっさのものの見方」

ヒトの目が遠くのものと近くのものを同時に見られないように、「とっさのものの見方」も、一度に「遠近両用」は難しい。

人類の「とっさのものの見方」は、「遠くの一点」と「近くを満遍なく」のたった2種類しかない。どちらも生きながらえるためには不可欠で、優劣もない。しかし、この特性の違いがコミュニケーションに大きな影を落としている。見方が異なると対話の手法も異なり、話が通じなくなってしまうのだ。

タテ型回路:遠くの一点に集中する
Michael Warrengettyimages

目の前の景色をざっと眺めて、危険なものや見慣れないものを発見したら、いち早く迎撃態勢に入る――。これは、脳の縦方向の信号(おでこと後頭部をつなぐライン)を使って行われる機能である。

この脳の縦方向を使う回路は、対象物との距離感やスピード感をつかんだり、位置関係やものの構造を把握したりする「空間認知の領域」において使われる。また、聴覚とも連携しており、野球選手の「ボールがバットに当たる音を聞いた瞬間、身体が動いている」というのは、この回路によるものだ。

敵や獲物、ボールが近づいてきたときに素早く的確に対処することは、この回路の得意とするところである。何万年もの間、圧倒的な危機管理能力で人類の狩りの能力を支えてきた。

本書では、この「脳を縦方向に使う、空間認知の回路」を「タテ型回路」、とっさのときに「タテ型回路をわずかに優先して、高頻度で使う」脳の状態を「タテ型優先」と呼ぶ。

ヨコ型回路:近くを満遍なく感知する

一方、脳の横方向の信号(右脳と左脳の連携信号)を強く使う回路「ヨコ型回路」もある。これは、「身の回り半径数メートル以内を感じ取り、些細な変化も見逃さない」働きをする。

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要約公開日 2025.05.28
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