対話のトリセツの表紙

対話のトリセツ

ハイブリッド・コミュニケーションのすすめ


本書の要点

  • 人間の脳の回路には「タテ型回路」と「ヨコ型回路」がある。タテ型回路は空間認知を得意とし、圧倒的な危機管理能力を持つ。一方のヨコ型回路は、身近な変化を見落とさない「気づきの回路」で、危機回避力が高い。2つの回路を同時に使うことはできない。

  • コミュニケーションにおいて、タテ型は「問題解決型」でヨコ型は「共感型」だ。両者の会話がすれ違うのは、対話特性が異なるためである。

  • 異なる対話特性を乗り越える奥義は、「相手の話を、共感で受ける」「自分の話は、結論から始める」の2つである。

1 / 3

脳に潜む二大特性

2つの「とっさのものの見方」

ヒトの目が遠くのものと近くのものを同時に見られないように、「とっさのものの見方」も、一度に「遠近両用」は難しい。

人類の「とっさのものの見方」は、「遠くの一点」と「近くを満遍なく」のたった2種類しかない。どちらも生きながらえるためには不可欠で、優劣もない。しかし、この特性の違いがコミュニケーションに大きな影を落としている。見方が異なると対話の手法も異なり、話が通じなくなってしまうのだ。

タテ型回路:遠くの一点に集中する

Michael Warrengettyimages

目の前の景色をざっと眺めて、危険なものや見慣れないものを発見したら、いち早く迎撃態勢に入る――。これは、脳の縦方向の信号(おでこと後頭部をつなぐライン)を使って行われる機能である。

この脳の縦方向を使う回路は、対象物との距離感やスピード感をつかんだり、位置関係やものの構造を把握したりする「空間認知の領域」において使われる。また、聴覚とも連携しており、野球選手の「ボールがバットに当たる音を聞いた瞬間、身体が動いている」というのは、この回路によるものだ。

敵や獲物、ボールが近づいてきたときに素早く的確に対処することは、この回路の得意とするところである。何万年もの間、圧倒的な危機管理能力で人類の狩りの能力を支えてきた。

本書では、この「脳を縦方向に使う、空間認知の回路」を「タテ型回路」、とっさのときに「タテ型回路をわずかに優先して、高頻度で使う」脳の状態を「タテ型優先」と呼ぶ。

ヨコ型回路:近くを満遍なく感知する

一方、脳の横方向の信号(右脳と左脳の連携信号)を強く使う回路「ヨコ型回路」もある。これは、「身の回り半径数メートル以内を感じ取り、些細な変化も見逃さない」働きをする。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3092/3811文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.05.28
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.Copyright © 2025 黒川伊保子 All Rights Reserved. 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は黒川伊保子、株式会社フライヤーに帰属し、事前に黒川伊保子、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ることなく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。

一緒に読まれている要約

言葉の解像度を上げる
言葉の解像度を上げる
浅田すぐる
決定版 仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!
決定版 仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!
飯田剛弘
言葉にならない気持ち日記
言葉にならない気持ち日記
梅田悟司
1冊まるごと「完コピ」読書術
1冊まるごと「完コピ」読書術
あつみゆりか
多動脳
多動脳
アンデシュ・ハンセン久山葉子(訳)
最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣
最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣
堀田秀吾
ミネルバ式 最先端リーダーシップ
ミネルバ式 最先端リーダーシップ
黒川公晴
13歳からの論理的思考
13歳からの論理的思考
藤城尚久

同じカテゴリーの要約

壁打ちは最強の思考術である
壁打ちは最強の思考術である
伊藤羊一
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
橘玲樺山美夏
とりあえずやってみる技術
とりあえずやってみる技術
堀田秀吾
無料
肩書がなくても選ばれる人になる
肩書がなくても選ばれる人になる
有川真由美
子どもが本当に思っていること
子どもが本当に思っていること
精神科医さわ
忘我思考
忘我思考
伊藤東凌
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
堀田秀吾
ハーバードの心理学講義
ハーバードの心理学講義
ブライアン・R・リトル児島修(訳)
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
榎本博明
1つの習慣
1つの習慣
横山直宏