ローソン
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ローソン
出版社
出版日
2025年04月02日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

人手不足、24時間営業の是非、フードロス批判など、コンビニ業界には逆風が吹いている。そうした中、ローソンはどのような戦略と戦術をとってきたのか。そして、その先にどんな未来を見据えているのか。こうした問いへのヒントが詰まっているのが本書だ。

コロナ禍の期間中、ローソンの業績は際立って悪化した。だが、2023年度には過去最高の業績を記録し、V字回復を果たす。その背景には、「お客様のためにすべてがある」という原点に立ち返る、抜本的な改革があった。

稚内での4店舗出店、良品計画との事業提携、フードロス削減への挑戦――。7年以上もローソンを独自取材してきた経営学者の著者が、精緻なデータ分析と丹念なインタビューを通じてローソンの成長戦略に迫っていく。

著者はプロローグで、ローソンのフランクで温かな社風に魅力を感じ、個人的にもローソンを応援していると述べている。また、経営学者としての冷静な視点に加え、人や組織を丁寧に描き出す筆致には、現場のリアルを読者に届けたいという想いが込められているのだろう。

2025年に創立50周年を迎えるローソン。コンビニ業界の勢力図が塗り替わっていく可能性を感じさせる一冊だ。本書には、事業戦略やマーケティングの観点から、他業種にも応用可能なヒントが詰まっている。ローソンの成長戦略を知るための格好の一冊である。

ライター画像
松尾美里

著者

小川孔輔(おがわ こうすけ)
1951年秋田県能代市生まれ。経営学者。エッセイスト。
日本フローラルマーケティング協会会長(創設者)、有限会社オフィスわん代表取締役、公益財団法人ランナーズ財団評議員。
1974年東京大学経済学部卒業、同大学院進学。1976年法政大学経営学部研究助手、講師(77年)、助教授(79年)。1982年カリフォルニア大学バークレー校留学(~ 84年)。1986年法政大学経営学部教授(〜2010年)。2004年から、学部兼任で同校経営大学院イノベーションマネジメント研究科教授(~2022年)。2022年から同校名誉教授。
著書に、『ブランド戦略の実際』『マネジメントテキスト マーケティング入門』『しまむらとヤオコー』『マクドナルド 失敗の本質』『わんすけ先生、消防団員になる。』『青いりんごの物語』『True North リーダーたちの羅針盤』など全53冊の著書、編著及び訳書がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    V字回復を果たすと、ローソンは「ローソン・タウン」構想を掲げる。競合ばかり意識するのではなく、「お客様のためにすべてがある」という姿勢に立ち返った。
  • 要点
    2
    日本最北端の町・稚内への出店プロジェクトには4つの成功要因があった。
  • 要点
    3
    「驚きのパンツをつくれ」という竹増社長の一言から、ローソンと良品計画の事業提携がスタートし、無印ブランドの全国展開が進んでいる。

要約

【必読ポイント!】 競争の舞台を変える

史上最高の決算
luchunyu/gettyimages

2024年4月、株式会社ローソンの決算説明会が開催された。2023年度は、ローソンにとって史上最高の好決算となった。ROE(自己資本利益率)は初の15%超えとなる、驚異の19.5%を記録する。事業利益も940億円に達し、業績が底だったとされる2020年度の408億円からV字回復を果たした。

コロナ禍での落ち込みの反動もあったが、この急回復には「ローソングループ大変革実行委員会」による改革が大きく寄与していた。大きく成長したカテゴリーは「ファストフード・厨房」「日雑品」「デリカ・日配・冷食」の3つである。これらが大きく伸び、適切なコスト管理が浸透したことで、加盟店オーナーたちの収入も大幅に増加していった。

ところが、好決算にもかかわらず、竹増貞信社長は淡々と決算結果を読み上げていた。その姿を見ながら、著者は「KDDIによるローソン株のTOB(公開買い付け)は正しい判断だったのか」と複雑な思いを抱く。7月下旬にTOBが成立する見通しで、5月の株主総会でローソンは非公開化が決まる。社員やフランチャイズオーナーは、この動きに不安を抱えたことだろう。だが実際には、「大変革実行委員会」の若手社員は、著者に力強く語った。「株主が誰であろうと、ローソンは変わらない」。

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要約公開日 2025.07.09
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