新しい階級社会
新しい階級社会
最新データが明かす<格差拡大の果て>
NEW
新しい階級社会
出版社
出版日
2025年06月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

努力すれば報われる──そう無邪気に信じられた時代は、すでに過ぎ去ったのかもしれない。本書は、個人の努力だけでは越えられない壁がいかに築かれ、それが社会にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする。

著者の橋本健二氏は、早稲田大学人間科学学術院教授であり、戦後日本社会と階級研究の第一人者として多くの著作を世に送り出してきた。

本書によれば、現代社会には、かつての資本主義社会を構成していた資本家階級・旧中間階級・新中間階級・労働者階級に加え、新たな階級が登場した。労働者階級の内部に格差が生じ、正規雇用の「正規労働者階級」と非正規雇用の「アンダークラス」に二分されたのだ。格差拡大とともに現れたこの下層階級こそ、書名にもなっている「新しい階級社会」を象徴している。

橋本氏は、資本家階級からアンダークラスまでの階級構造が固定化しつつあると指摘する。学歴や家庭環境、配偶者との離死別、不登校、就職の遅れといった経験が階級をアンダークラスへの所属を決定づけ、アンダークラスの人々は低所得、社会的孤立、健康悪化、政治的無力感といった困難に直面する。そしてその結果、多くが次世代を生み育てなくなり、社会全体の持続性が危機に瀕している。

日本の未来に関心を持つすべての人に、本書を勧める。熟読し、現実を直視してほしい。

著者

橋本健二(はしもと けんじ)
1959年、石川県生まれ。東京大学教育学部卒業、同大学大学院博士課程修了。早稲田大学人間科学学術院教授(社会学)。専門は理論社会学。講談社現代新書に『新・日本の階級社会』が、その他の著書に『階級社会』(講談社選書メチエ)、『「格差」の戦後史』『はじまりの戦後日本』(以上、河出ブックス)、『階級都市』(ちくま新着)、『戦後日本社会の誕生』(共著、弘文堂)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    近年、労働者階級の内部に大きな格差が生まれ、正規雇用の「正規労働者階級」と非正規雇用の「アンダークラス」に二分された。
  • 要点
    2
    アンダークラスの出現と拡大によって、社会の持続可能性は著しく損なわれる。アンダークラスの賃金には子育てに必要な費用が織り込まれておらず、その結果、子を産み育てる人が少ないためだ。
  • 要点
    3
    人がアンダークラスになる要因には、性別や学歴の他に、いじめにあった経験、最終学校の中退、不登校経験、就職の遅れ、配偶者との離死別などが挙げられる。本人に責任のない要因の積み重ねが、アンダークラスの困難の一部を形づくっているのだ。

要約

【必読ポイント!】 新しい階級社会とは何か

新しい階級社会の構造

かつての資本主義社会は、資本家階級・旧中間階級・新中間階級・労働者階級という4つのグループで構成されていた。資本家階級は企業経営者などから成る層、旧中間階級は自営業者や独立自営の農業・商工サービス業に従事する層、新中間階級は企業に勤める専門職・管理職・事務職、労働者階級は現場労働に携わる人々である。

しかし近年、労働者階級の内部に大きな格差が生まれ、正規雇用の「正規労働者階級」と非正規雇用の「アンダークラス」に二分された。格差拡大とともに新たな下層階級が出現したこの社会こそ、本書のいう「新しい階級社会」である。

階級構造は「資本主義的企業の領域」と「自営業者の領域」の2つに大別される。資本主義的企業の領域は、少数の資本家階級を頂点に、新中間階級、正規労働者階級、アンダークラス、さらに59歳以下で専業主婦以外の失業者・無業者が続くピラミッド型を成す。一方、自営業者の領域には旧中間階級が属し、その内部格差は大きい。

各階級の特徴と格差の実態
©︎ Kenji Hashimoto 2025

ここからは各階級の属性をみていく。

性別構成では、資本家階級は男性比率がもっとも高く、アンダークラスは女性が過半数を占める。

年齢では、資本家階級と旧中間階級は中高年が中心であり、新中間階級・正規労働者階級・アンダークラスは若年層の割合が高い。

学歴においては、新中間階級と資本家階級の大卒率が7割を超えて高く、アンダークラスは4割未満にとどまる。

経済格差は明らかで、資本家階級の個人年収は983万円と突出する一方、アンダークラスは200万円台だ。

配偶関係にも顕著な差が見られる。アンダークラス男性の未婚率は7割超と非常に高く、アンダークラス女性は離死別者の比率が極端に高い。

仕事に対する満足度と自由度では、自ら事業を営む資本家階級・旧中間階級が高く、雇われの立場にある新中間階級・正規労働者階級・アンダークラスはいずれも低い。

階層意識では、資本家階級の過半数が自分を「上」または「中の上」とみなす一方、アンダークラスの7割は「下の上」または「下の下」と認識している。

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要約公開日 2025.09.15
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