中堅社員に多く見られる「ミドルシニア形成期」のキャリア課題の一つに、「組織内キャリア依存」がある。これは、キャリアの形成が自社組織の中に完結してしまい、自己成長やキャリア開発の機会が限定されることによって、転職・独立・新たなスキルの習得といったキャリア転換が困難に感じられる状態を指す。
こうした状況を乗り越え、自律的にキャリアを築いていくために必要なのが「キャリア開拓」である。これは、個人が自身の価値観や目標に基づいて主体的にキャリアを形成し、職業人生を発展させていくプロセスを意味する。本書では、プロティアン・キャリア理論、キャリア構築理論、万華鏡キャリア理論、キャリアレジリエンスなどの理論的知見を踏まえ、その意義を解説している。要約ではこのうち、万華鏡キャリア理論に焦点を当てたい。
万華鏡キャリア理論は、キャリアを万華鏡にたとえた理論だ。価値観や優先順位の変化に伴ってキャリアの形も変わるという概念を提唱し、キャリアと個人の生活のバランスを重視しながら、年齢やライフステージに応じた再設計の指針を示している。
ここでは、万華鏡キャリア理論において、ミドルシニア期のキャリア開拓を支える3つの要素について述べる。
1つ目の「真実性」とは、個人の内面的な価値観と外面的な行動、そして組織の価値観が一致している状態を指す。ミドルシニア期においては、これまでの経験を通じて自分にとって本当に大切なことが明確になってくる。あらためて「何を実現したいのか」「どのように働きたいのか」を見つめることが重要だ。
2つ目は「バランス」である。この時期は、仕事だけでなく、家族や健康、趣味といった生活全体のバランスが重視される。万華鏡キャリア理論における「バランス」は、仕事と家庭、友人、高齢の親族、個人的関心などの間で均衡を保とうとする状態を意味し、人生のさまざまな役割と調和をとる姿勢を促す。
3つ目の「挑戦」は、刺激的な仕事や新たな成長機会を通じてキャリアを広げる意欲を示す。年齢を重ねた後も、新しい分野への挑戦やスキル習得を続ける姿勢が、豊かなキャリアの実現には欠かせない。
ミドルシニア期以降のキャリア開拓では、これら3つの要素をバランスよく取り入れ、自分らしい働き方やキャリアゴールを主体的に見出していくことが重要である。
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