若者恐怖症
若者恐怖症
職場のあらたな病理
NEW
若者恐怖症
出版社
出版日
2025年08月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「最近の若者は自分たち世代と価値観が違いすぎる。何をしてもハラスメントになりそうで怖い」──そう感じたことはないだろうか。人材不足が深刻化し、若者が組織にとってますます貴重な存在となっている一方で、年長世代が若者を過剰に恐れる現象が広がっている。本書は、こうした恐怖の症状を「若者恐怖症」と名付け、その原因を解きほぐすとともに、他者との向き合い方を考える一冊だ。

本書では、若者恐怖症を象徴する現象のひとつとして「飲み会嫌い」のイメージを取り上げる。メディアやSNSでは、若者が職場の飲み会を嫌っているかのような発信が目立つが、著者はその根拠の乏しさを指摘する。さらに、世代論やダイバーシティ、構築主義といったキーワードをもとに、「若者恐怖症」を和らげるための視点を提示している。

著者の舟津昌平氏は、東京大学大学院経済学研究科の講師であり、経営学と組織論の専門家だ。『制度複雑性のマネジメント』で複数の学会賞を受賞した気鋭の研究者であり、ベストセラー『Z世代化する社会』でも知られる。

「若者を飲み会に誘っていいのか」「退職を防ぐにはどうしたらいいのか」「やりがいを求める若者とどう接したらいいのかわからない」──そんな悩みを抱える管理職や人事・採用担当者に、ぜひ本書を手に取ってほしい。若者とのコミュニケーションに対する不安が軽減されるとともに、これからの指針が見えてくるはずだ。

著者

舟津昌平(ふなつ しょうへい)
経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師。1989年奈良県生まれ。京都大学法学部卒業、京都大学大学院経営管理教育部修了、京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。京都産業大学経営学部准教授などを経て、2023年10月より現職。著書に『制度複雑性のマネジメント』(白桃書房/2023年度日本ベンチャー学会清成忠男賞書籍部門、2024年度企業家研究フォーラム賞著書の部受賞)、『組織変革論』(中央経済社)、『Z世代化する社会』(東洋経済新報社)、『経営学の技法』(日本経済新聞出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    恐怖症を克服する手段のひとつは「理解すること」である。たとえば、メディアやSNSでは若者が職場の飲み会を嫌っているかのような発信が目立つものの、データを見てみると、明確な根拠は見当たらないことがわかる。
  • 要点
    2
    現代社会には「個人的意見は尊重すべきでありながら取るに足らない」とする矛盾があり、それが若者理解をより複雑にしている。
  • 要点
    3
    どのような関係性にも「権力勾配」は存在する。それを自覚し、受け入れ、礼をもって向き合うことで若者との間に信頼関係をつくるのが、恐怖を和らげる一番の近道だ。

要約

若者は本当に怖いのか?──「飲み会嫌い」説の検証

なぜ若者が怖いのか

人材不足が叫ばれる現代において、若者は「希少財」として扱われるようになった。その一方で、オトナ世代は若者を怖がっている。われわれはいったい何に怯えているのか。そして、どうすればその恐れを手放せるのか。

子どもの頃、お化けを怖がっていた私たちは、やがてお化けは存在しないと理解するようになる。また、犬に咬まれるかもしれないと思うと怖いが、正しい接し方を知れば恐怖はやわらぐものだ。

若者に抱く恐怖は、お化けや犬に対する恐怖に似ている。そもそもあなたが怖がっている若者なんて存在しないかもしれないし、全員が常に咬んでくるわけでもない。

恐怖症を克服する手段のひとつは「理解すること」である。とはいえ「正しく理解する」のはとても難しい。

若者は本当に「飲み会嫌い」なのか
maroke/gettyimages

若者恐怖症の一因とされるのが、「若者は飲み会嫌い」というイメージである。

メディアやSNSでは、若者が職場の飲み会を嫌っているかのような発信が目立つ。一方で、ある研修講師が2024年に実施した研修の現場では、どの会場でも6〜7割が「上司と飲みに行ってみたい」と答えた。

さらに、日本生産性本部の調査では、2016~18年の3年間、「友人よりも職場の飲み会を優先したい」と答える新卒社会人が80%以上にのぼった。00~15年のあいだは60%程度で推移していたため、最近の若者が「飲み会離れ」しているとは言えそうにない。

その背景を語る要素として、コロナ禍は不可欠だ。コロナ世代に入学した大学生は飲み会文化を経験しづらかったうえ、当時の居酒屋は「社会の敵」として批判された。若者が飲み会離れしているとすれば、それは社会構造の影響による側面が大きいと言える。

「若者が変わった」と怖がる前に、こうした背景事情を想像するべきである。

結論:若手を飲み会に誘っていいのか

若者を飲み会に誘いたくても、「嫌がられそう」「ハラスメントになるのでは」という不安を持つ人は多い。しかし、若者の「飲み会嫌い」には根拠がないのだから、ほかの社員と同様に接したらいいのではないだろうか。ただし、飲み会に慣れていない可能性があるので、配慮は必要だ。

また、ジェンダーギャップやセクハラへの注意も欠かせない。飲み会の目的がコミュニケーションであるなら、代替手段が他にあることは忘れてはいけないだろう。ジェンダーを問わず参加しやすい環境を整え、セクハラに注意を払うべきだ。

飲み会がインフォーマルコミュニケーションの場であり、繰り返し行われる以上、出席者と欠席者のあいだに情報や信頼の格差が生じる。結果として、仕事の成果や昇進にも影響しうるだろう。

だからこそ、若者からの「行かないと損しますか?」という問いには、会社としての答えを準備しておく必要がある。一般論を語るよりも、組織としての立場を明確に示したり、自分の考えを率直に伝えたりすることの方が重要だ。

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要約公開日 2025.09.08
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