「自己肯定感」という言葉が近年盛んに、しかも「自己肯定感を高める方法」「自己肯定感が低い理由」というような否定的な文脈で使われるようになっている。自己の肯定も否定も、主観的な行いであるため根拠はない。だが、多くの人が思い込みにより、ネガティブな感情に苦しんでいるようである。
その根底には、心の柔軟性の喪失が関係しているのではないか、と著者は考える。今までにやってきたこと、守ってきたこと、信じてきたことを「自己」だと決めつけてはいないか。狭いスペースに閉じ込めたそれは、「自己」というより「自我」と呼ぶほうがしっくりくる。
「自我」という言葉にはネガティブなイメージがあるかもしれない。しかし、凝り固めた「自我」を肯定するか否定するかという、「問いの設定」自体が間違っているのだ。
こうした時代にこそ、禅の考え方が役に立つ。禅というと「坐禅」を思い描くかもしれないが、それは身体を使った実践のごく一部分に過ぎない。禅は生き方、世界や人生に向き合う態度を含めた広い概念であり、「よく生きる」ための智慧と技術が詰まっているのである。
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