現代語訳 福翁自伝
現代語訳 福翁自伝
NEW
現代語訳 福翁自伝
出版社
出版日
2011年07月10日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.0
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

福澤諭吉といえば、旧一万円札の肖像や『学問のすゝめ』の著者として、名前も顔もよく知られている。しかし、どんな人物で、どのような人生を送ったかを詳しく知っている人は少ないのではないだろうか。慶應義塾の創設者でもあり、何となく「堅苦しい学者」というイメージを持っている人も多いかもしれない。そんな人の自伝である『福翁自伝』と聞くと、いかにもつまらなそうに感じられる。

ところが、この自伝の中では、そんな人物像を覆すエピソードの数々が登場する。子どもの頃からの酒好きで、様々な場面で酒豪ぶりを発揮してきたこと。若かりし修行時代に、同年代の若者たちと一緒になって暴れまわり、たくさんのいたずらをしてきたことなど、破天荒で茶目っ気たっぷりな人であることがよくわかる。幼少期から門閥制度の不公平を憎んで育った背景も合わせて読むと、福澤の反骨心や独立心の根っこが見えてくる。

一方で、オランダ語を教えられるほど習熟したのにもかかわらず、開国後の横浜で「通じない」と気づくやいなや英語の勉強に切り替える柔軟さ、そして慶應義塾を立ち上げ「半学半教」の精神を掲げた教育者としての姿勢には、時代を見抜く洞察と大胆な決断力が光っている。

堅苦しい偉人伝ではなく、生身の福澤諭吉が語る人生録の面白さと、今も通じる生き方のヒントを、ぜひ本書から感じてほしい。

ライター画像
大賀祐樹

著者

福澤諭吉(ふくざわ ゆきち)
1835(天保5)年~1901(明治34)年。著述家、教育者。「時事新報」発行人。近代日本最大の啓蒙思想家。慶應義塾の創設に力を尽くした。著書に『学問のすすめ』『文明論之概略』『西洋事情』『福翁自伝』など多数がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    福澤諭吉は中津藩の下級士族の子として生まれたが、能力があり努力しても名を成すことができない封建的な門閥制度を「親の敵」と思うほどだった。
  • 要点
    2
    長崎でオランダ語を学び始め、大阪の緒方塾で本格的に蘭学を学んだ。緒方塾では熱心に勉強する傍ら、同世代の塾生の若者たちと大酒を飲んだり、暴れていたずらをしたりしていた。
  • 要点
    3
    横浜で外国人にオランダ語が通じないことに気づくと、すぐに英語の勉強に切り替えた。その後、アメリカ、ヨーロッパ各国へ行く機会を得る。
  • 要点
    4
    慶應義塾では、西洋の学問の特徴である自然の原則としての数理と独立心を重視する教育を行った。

要約

幼少時代

門閥制度は、親の敵である

福澤諭吉は、豊前中津奥平藩の下級士族、福沢百助の末っ子として生まれた。父は大阪にある中津藩の倉屋敷で勤務していたが、諭吉が3歳のときに病死したため、母は兄弟を連れて中津に帰ることになった。

父は「銭を見るも汚れる」というような昔気質の純粋の学者であったので、役人の仕事に不平があったことだろう。だから、子どもたちは儒教主義で育てられ、厳格な父がいなくなった後も、「俗な卑しいことはしないものだ」と教えられていた。当時の時代状況では、父は自分で働き先を決めることができなかったのだろう。そのことが今でも気の毒である。

生前の父は、諭吉が成長したら寺に入れて坊主にするといつも言っていたそうだ。中津では先祖代々の身分制度があるが、身分の低い家に生まれた者でも、大僧正のような偉い坊様になった例はいくつもある。きっと父は、生まれつきの身分以上に息子を偉くしてあげようと思ったのだろう。45年の生涯で、父が封建制度に束縛されて何事もできず、不平を持ったままこの世を去ったのが残念でならない。門閥制度は、親の敵である。

お札を踏み、神社の神体を捨てる
elwynn1130/gettyimages

12、13歳の頃、歩いていたところ紙を踏んでしまい、兄からひどく叱りつけられた。「殿様の名前が書かれている紙を踏むとはどういう心得だ」と言われて謝ったが、内心では「殿様の頭を踏んだわけでもないのに」とたいそう不満に思っていた。

殿様の名を書いた紙を踏んではいけないなら、神様のお名前のあるお札を踏んだらどうなるだろうと、人の見ていないところで踏んでみた。しかし、何も起こらない。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3999/4670文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.10.04
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
15秒!集客革命
15秒!集客革命
仲野直紀
経営者のための正しい多角化論
経営者のための正しい多角化論
松岡真宏
【新】100円のコーラを1000円で売る方法
【新】100円のコーラを1000円で売る方法
永井孝尚
採用の新基準
採用の新基準
秋山真
株で儲けたきゃ「社長」を見ろ!
株で儲けたきゃ「社長」を見ろ!
田端信太郎
トリニティ組織
トリニティ組織
矢野和男平岡さつき(協力)
今、ラジオ全盛期。
今、ラジオ全盛期。
冨山雄一
新しい階級社会
新しい階級社会
橋本健二