経営者のための正しい多角化論の表紙

経営者のための正しい多角化論

世界が評価するコングロマリットプレミアム


本書の要点

  • コングロマリットは、株価やビジネスを押し下げるようなディスカウント要因ではない。不確実性が増す現在は、むしろ株価や業容を押し上げるプレミアム要因である。

  • バブル崩壊後の日本の経営者は利益減少を恐れ、設備投資を過少にし、人件費を必要最小限にした。今後の日本企業は、売上高伸長の戦略を強化すべきである。

  • アメリカでも欧州でも、コングロマリットが経済を牽引している。

  • 日本企業は「選択と集中」をやめ、積極的に多角化を推進するべきだ。

1 / 4

なぜバフェットは日本の商社に本格投資したのか

投資の神様が認めた「日本型コングロマリット」

2020年8月31日、“投資の神様”ウォーレン・バフェットによる日本の商社株投資が報じられた。自身の投資会社「バークシャー・ハザウェイ」が、関東財務局に複数の大量保有報告書を提出したのである。バフェットは子会社を通じて、五大商社株(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅)の発行済み株式の5%超を取得した。これまで日本では、商社のビジネスモデルは評判が芳しくなかった。事業があまりにも多岐にわたり、外部から見てわかりにくいというのがその理由である。株価もその影響で割安に放置されている(コングロマリットディスカウント)と言われてきた。ところが、バフェットは、日本の商社が「世界中で合弁会社を作っている」ことを高く評価し、それらが「将来、相互に理解をもたらす機会があると望んでいる」とコメントした。つまり、コングロマリットや多角化に将来性を見出しているということだ。バフェットの投資は「商社株は価値がある」というシグナルと受け取られ、他の投資家たちも商社投資を再評価し始めた。実際、商社の代表的企業、三菱商事の株価はバフェットによる投資が明らかになってから、4倍以上に跳ね上がった。

「コングロマリット」とは何か

2ndpic/gettyimages

「コングロマリット」とは、複数の異なる事業を抱える企業を指す経済用語である。日本語訳にすると「複合企業体」となる。混同されやすいものに「コンツェルン」があるが、これは子会社・グループ会社を通じて、「同一産業の独占」を目的とした企業グループのことである。一方、コングロマリットは「複数の異なる事業」を所有することで、事業リスクの分散や収益の安定化を可能とする仕組みだ。総合商社、総合小売、総合電機など「総合」と付くものは、すべてコングロマリットの一種である。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3758/4538文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.09.20
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

15秒!集客革命
15秒!集客革命
仲野直紀
教養主義の没落
教養主義の没落
竹内洋
トリニティ組織
トリニティ組織
矢野和男平岡さつき(協力)
忘我思考
忘我思考
伊藤東凌
町の本屋はいかにしてつぶれてきたか
町の本屋はいかにしてつぶれてきたか
飯田一史
採用の新基準
採用の新基準
秋山真
現代語訳 福翁自伝
現代語訳 福翁自伝
福澤諭吉齋藤孝(編訳)
新しい階級社会
新しい階級社会
橋本健二

同じカテゴリーの要約

新版 エスキモーに氷を売る
新版 エスキモーに氷を売る
ジョン・スポールストラ佐々木寛子(訳)
【新】100円のコーラを1000円で売る方法
【新】100円のコーラを1000円で売る方法
永井孝尚
小澤隆生 起業の地図
小澤隆生 起業の地図
北康利
15秒!集客革命
15秒!集客革命
仲野直紀
経営者のための正しい多角化論
経営者のための正しい多角化論
松岡真宏
ユニクロ
ユニクロ
杉本貴司
心理的安全性のつくりかた
心理的安全性のつくりかた
石井遼介
地頭力を鍛える
地頭力を鍛える
細谷功
起業の天才!
起業の天才!
大西康之
実践版 孫子の兵法
実践版 孫子の兵法
鈴木博毅