愛される書店をつくるために僕が2000日間考え続けてきたこと キャラクターは会社を変えられるか?
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愛される書店をつくるために僕が2000日間考え続けてきたこと キャラクターは会社を変えられるか?
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2025年06月21日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

企業のPR戦略のひとつに、YouTubeをはじめとした動画がある。最近は企業チャンネルも増え、趣向を凝らした動画を目にするようになった。

その中でも異彩を放っているのが、『有隣堂しか知らない世界』である。神奈川・東京・千葉を中心に展開する老舗書店「有隣堂」のYouTubeチャンネルで、2025年9月時点のチャンネル登録者数は41万人超。ミミズクのキャラクター「R.B.ブッコロー」がMCを務め、ゲストとトークをしながら文房具や書籍を紹介していく。

要約者もチャンネルを拝見したが、とにかく面白くて、仕事中なのにチャンネル内の動画をはしごしてしまった。動画を見ればわかるが、ブッコローのツッコミがキレすぎている。たとえば、人気作家の中山七里先生に「作家っていうより、ゴルフばっかりやってる経営者の見た目」と、登場早々ぶちかます。また別の回では、有隣堂では販売していない商品を全力で推す。ひと言で言えば「“面白さ”に振りきっている」のだ。本書にはそんな『有隣堂しか知らない世界』がいかにして生まれ、制作・運営されているかが時系列に記されている。

企業チャンネルは、どうしても自社製品の宣伝に偏りがちだ。PRが最優先された結果、「残念なチャンネル」になってしまうケースも多々ある。そんな中で、視聴者を純粋に魅了し、愛されるコンテンツになるには何が必要なのか。本書にはその要諦が詰まっている。

本チャンネルのファンはもちろん、企業の広報担当者、動画制作に興味のある人におすすめの一冊だ。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

ハヤシユタカ
フリーランスの動画クリエイター。
都内の映像制作会社に入社後、在京キー局の報道・情報・ドキュメンタリー番組でディレクターとしての経験を積む。2020年に独立し、現在は老舗書店「有隣堂」の公式YouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』にて、プロデューサー兼ディレクターを務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    書店業界が低迷する中、有隣堂の松信副社長は「超弩級の新しいチャレンジ」を探していた。そこで2019年当時まだ少なかった、企業によるYouTubeチャンネルを開設することにした。
  • 要点
    2
    多くの人に見てもらえる良い企画は、古いアイデアと新しいアイデアが盛り込まれている。
  • 要点
    3
    YouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』は、「素直さ」と「面白さ」を重視している。そのために、MCはゲストと事前打ち合わせをしない、チャンネルは面白い動画のみで構成する、ゲストにチェックをさせない、といったルールを徹底している。

要約

老舗書店の新たな挑戦

「超弩級の新しいことを」
ozgurdonmaz/gettyimages

YouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』の開始1年前である2019年秋、老舗書店「有隣堂」の松信健太郎副社長(現社長)は事あるごとにこう言っていた。

「書店業界は超弩級の新しいことに挑まないと滅んでしまう」。

有隣堂は長い歴史を持つ書店チェーン。明治42年(1909年)横浜に創業し、現在は神奈川・東京・千葉を中心に約40店舗を展開している。創業家である松信家が代々経営の中心を担っており、健太郎副社長は7代目の社長就任を控えていた。

だが、それは決して喜ばしい話ではなかった。娯楽の多様化による本離れのほか、電子書籍やAmazonの台頭などにより、書店業界はかつてない危機に直面していたからだ。紙の書籍の販売部数は1988年以降下がり続けていて、販売金額はこの四半世紀で半減していた。

健太郎さんは「従業員に成功体験がなく、気持ちが縮こまっている」ことも懸念していた。従業員は売り上げが右肩下がりの時代しか知らず、全国の書店は次々と潰れていっている。書店業界はまさに、トップ・オブ・斜陽産業なのである。

「超弩級の新しいこと」を探している松信さんに、著者はある提案をした。それは、YouTubeチャンネルを開設することだ。当時、さまざまな芸能人によるチャンネルが盛り上がりを見せていたが、企業が活用している例は少なかった。あったとしてもCM映像を使い回していたり、ほとんど編集されていない映像をなんとなく出していたりするだけだった。

有隣堂がYouTubeチャンネルを開設して、登録者数や視聴回数を集められるようになったら、従業員の「成功体験」になるかもしれない。

松信さんは即断した。「よし、やろう」。

面白くない動画は見られない

松信さんの鶴の一声から半年、有隣堂YouTubeの1本目の動画がアップされた。このときのチャンネル名は『書店員つんどくの本棚』。書店員「つんどく兄」「つんどく弟」がおすすめの本を紹介するという内容であった。

『書店員つんどくの本棚』の公開から1週間後の再生数は355回、1カ月後になっても584回と振るわなかった。その後も新しい動画が公開されていったが、再生数はどんどん下がっていった。最終的に6本目のアップ後に、『書店員つんどくの本棚』は打ち切られることとなった。

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要約公開日 2025.10.12
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