なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか?

21世紀のつながり資本論
未読
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なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか?
出版社
いろは出版

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出版日
2015年02月14日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「日本人はこんなに働いているのに、なぜ経済的な自由を感じられないのだろう?」こんな疑問を抱いたことはないだろうか。著者は、リーマン・ショックを機に大手証券会社を退職し、「お金とは何か」を考えるため、世界一周の旅に出た。世界一の金融大国イギリス、世界最貧国の一つバングラデシュ、世界で最も有償労働時間が短いデンマーク、そして「ハロー」のあとに「マネー」とお金を要求する言葉が続くウガンダ、といった具合に、2年間で40カ国を巡った。各国で人々のお金の扱い方を目の当たりにして、著者が痛切に感じたのは、「日本人のお金に関する知識と経験が圧倒的に不足している」という現実だった。

「お金の仕組みを学び、お金を道具として使いこなすという意識をもつだけで、経済的にも精神的にも豊かな人生に近づける」。旅を通じて、著者はそう考えるようになっていく。著者の生々しい体験に基づく考え方にふれると、お金への固定観念が崩れ落ちていくにちがいない。さらには、人との信頼がインターネットによって可視化される「つながりキャピタリズム(資本主義)」という「新しいお金の世界」の特徴をしっかりと学ぶことができる。

世界の都市の描写がこの本の随所に盛り込まれ、まるで自分も旅しているかのような気分を味わえる。同時に、著者のわかりやすいガイドを通じて、お金の本質にふれられるという一粒で二度おいしい一冊だ。「新しいお金の世界」で、自分の望む働き方と生き方をつかむ旅に出かけよう。

ライター画像
松尾美里

著者

渡邉 賢太郎
1982年生まれ。大分県別府市出身。立命館アジア太平洋大学卒業。日本FP協会、認定AFP(=アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)取得。
リーマン・ショックを機に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を退職。2011年5月から2013年4月まで、2年間で40カ国を訪れる世界一周の旅に出る。旅のテーマは「お金とは何か?」。ピラミッドがある国エジプトではなく、お金の起源をもつ国エジプト。ウユニ塩湖のあるボリビアではなく、投資と投機を生んだ国ボリビア。ビッグベンよりイングランド中央銀行。自由の女神よりウォール街。というように「お金」を巡る旅をする。
帰国後、2013年8月より、NPO法人ETIC.に入社。Social Startup Accelerator Program『SUSANOO』のプロジェクトリーダーを務める。自分らしく生きる人々の挑戦が応援される社会をテーマに、次世代の企業家が育まれる「挑戦者の生態系」構築を目指す。特にソーシャルキャピタルマーケットと呼ばれる資金提供の枠組みづくりにむけて奮闘中。

本書の要点

  • 要点
    1
    2年間で40カ国を巡る旅を通じて気づいたのは、日本人は世界一、お金に関する知識と経験が圧倒的に不足しているという事実だ。
  • 要点
    2
    幸せに生きている人は、お金を、他者との信頼関係を築き、その信頼を交換し合い、自らの理想を実現するためのポジティブな「道具」として捉えている。
  • 要点
    3
    信頼が可視化される「つながりキャピタリズム」においては、私たちは他者とのつながり(=信頼関係)を築くために働き、その結果として、必要なお金も手に入れられるようになる。

要約

日本人は、世界一、お金のことを知らない

日本人のお金の知識と経験の圧倒的な不足
IR_Stone/iStock/Thinkstock

日本人は、世界一、お金のことを知らない。それが2年間で40カ国の世界を巡る旅で知った、最も衝撃的な現実だった。

金融大国イギリスでは、イングランド中央銀行の博物館に社会見学に来ていた小学生たちが「インフレーションとは何か」を体験するアトラクションを楽しんでいた。日本人の多くが的確な説明に戸惑うだろう概念が、小学生の子供たちに向けたアトラクションとなっていることに、著者は驚きを隠せなかった。

日本人、特に30代以下の世代は、知識と経験の両面で、お金に関する教育をほとんど受けたことがない。日本人は、勤勉に働き、お金を強く求める一方で、無意識に「お金=汚いモノ」という感覚をもっている。また、物価の急激な変動や、お金がなくて餓死するような危機も経験せず、お金に困らない生活を享受してきた。

さらに、例えばインドでは、店の商品に値段は書かれておらず、値段交渉は日常茶飯事である。一方、日本の商店には値札があり、「定価」というルールがある。それに慣れてしまったことで、日本人はモノの価値を自ら見極め、交渉する力を失ってきたといえるのではないか。

こうした状況が、お金に対して無知な大人を生み、さらには長期的な経済的豊かさに影響を及ぼしていると著者は考えている。

お金持ち=幸せの方式は成り立たない

著者は証券マンとしてリテール営業(個人富裕層への営業)を行う中で、「お金持ち=幸せ」という方程式は成り立たないと気づいた。お金に振り回される人生を送る人の多さを目の当たりにしたからだ。十分な資産があるにもかかわらず、遺産相続でもめて家族との縁をうしなってしまった人、先代から受け継いだ資産を守ることに人生の大半を費やしてしまった人など、さまざまな人がいた。

やがて到来したリーマン・ショックによって引き起こされた株価の下落が、日本企業の倒産や失業率の上昇につながっていくのを見て、現在の世界のお金の仕組みへの憤りを感じた。そして、お金との正しい付き合い方を知らないからこそ、お金に振り回されているのではないかという疑問を持ち始めたという。

お金の歴史を紐解く

「交換の媒体物」としてのお金
Jupiterimages/BananaStock/Thinkstock

お金が誕生する前は、人々は物々交換を行っていた。やがて大変貴重な鉱物であった「金」が交換の媒介物(=お金)として利用され始めた。お金という道具によって、人々は富を蓄積し、より広範囲で長い時間をかけて交換を行えるようになった。

交換の媒介物として、「だれもが価値を認めていて、軽くて丈夫で、分けやすく腐りにくいものの方が都合がよい」ということになり、金貨や銀貨などの「貨幣」が生まれ、金と銀の不足から、価値の低い鉱物を混ぜて増やす「改鋳」が始まっていった。交易が盛んなイスラム帝国では、重たい貨幣を持ち運ぶ面倒さから、紙幣の原型である「小切手」が誕生する。

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要約公開日 2015.04.30
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