稲盛流コンパ

最強組織をつくる究極の飲み会
未読
稲盛流コンパ
稲盛流コンパ
最強組織をつくる究極の飲み会
未読
稲盛流コンパ
出版社
出版日
2015年04月09日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

単なる「飲みニケーション」についての本だと思ったら大間違いだ。「稲盛流コンパ」は稲盛和夫氏が編み出した独自の飲み会のスタイルであり、単なる親睦会とは一線を画す。このコンパを導入した企業は、それまでのギスギスした社内の雰囲気が変わり、社員がやる気を出して同じ方向を向いて協力し合うことができる。

実は稲盛氏が実践してきたアメーバ経営やフィロソフィ経営はコンパなくしては成り立たないものでもある。その効力は京セラやKDDIだけでなく、誰もが「無理」と判断したJAL再生でもいかんなく発揮された。従業員ですら諦めているような状況で、外様の稲盛氏はコンパの力を借りて会社をまとめあげ、危機に立ち向かったのだ。

最近では、お金がもったいない、残業代も出ないのに付き合うのは嫌だ、家族との時間が減る、という理由から上司と部下が胸襟を開いて話し合う機会が減っているようだ。古き悪しき習慣として、部下の方からきっぱりと断るようなケースもあると聞く。だが、それで本当に一致団結して仕事ができるのだろうか。本書には従業員がコンパに参加したがらないときの対処方法なども紹介されているため、こうした事態にも応用することができる。

たかがコンパとあなどってはいけない。上っ面をなでるだけの組織づくりではなく、あなたの会社の組織力を最大化することができる秘策となるに違いない。

ライター画像
苅田明史

著者

北方 雅人
日経トップリーダー副編集長。1969年兵庫県生まれ。91年一橋大学社会学部卒業後、日経BP社に入社。「日経ベンチャー」(現「日経トップリーダー」)「日経レストラン」など主に経営誌の編集部を経て、現職。

久保 俊介
日経トップリーダー記者。1976年神奈川県生まれ。99年早稲田大学第一文学部卒業後、日経BP社に入社。「日経ベンチャー」(現「日経トップリーダー」)「日経ヘルスケア」など経営誌の編集部を経て、現職。

本書の要点

  • 要点
    1
    稲盛流コンパは単なる飲み会とは異なり、コンパを通じて経営者と従業員、上司と部下、同僚同士が仕事の悩みや働き方、生き方を本音で語り合い、人間的に成長し、組織を強固な一枚岩にすることができる。
  • 要点
    2
    昼間の会議では一方的な訓話のようになってしまい、会話のキャッチボールにならない。酒を飲みながら話すと本音が出て、人間対人間の会話になるため、納得感が全然違う。コンパと会議を組み合わせることで、高い効果が期待できる。
  • 要点
    3
    稲盛流コンパでは、全員参加が前提条件だ。コンパではテーマを決め、予め決められた時間において議論し、最後に全員が総括をおこなう。目的に応じて参加者や場所を工夫することも求められる。

要約

稲盛流コンパとはなにか

京セラの創業期やJALの復活を支えたコンパ
TAGSTOCK1/iStock/Thinkstock

京セラの本社や全国の主要な事業所には必ず和室がある。これらの和室は「コンパ」のために設けられたものだ。コンパとは飲み会のことを指すが、稲盛流コンパはその位置づけが異なる。多少羽目を外すことはあっても、上司や会社の陰口をたたく憂さ晴らしの場ではない。経営者と従業員、上司と部下、同僚同士が互いに胸襟を開き、仕事の悩みや働き方、生き方を本音で語り合う。酒を通して一人ひとりが人間的に成長し、組織を強固な一枚岩にすることができる。

稲盛氏自身、忘年会シーズンの12月ともなればほぼ毎日コンパに出かけ、体調を崩したら注射を打ってでも参加するという。また月に一度は「役員コンパ」があり、グループ会社の役員50人が集まって、夏場も冬場も鍋をつつきあって親睦を深めている。

コンパの伝統は社内に浸透しており、所属部署の目標達成を祝い、さらなる躍進を誓う「決起コンパ」などさまざまな切り口で集まっては酒を酌み交わす。社内の和室は先々まで予約でいっぱいだという。

経営破綻したJALの再生を手がけた際にもコンパが活用された。経営幹部を対象にしたリーダー教育を実施し、研修が終わるとそのままコンパに突入。京セラと同様の「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という経営理念を掲げ、そのために自身が全力で取り組むから、ついてきてほしいと懇々と説き続けた。現場にも出向いて従業員とコンパを開き、JAL再生に向けた熱い思いを伝えた。当時、JALでは幹部と従業員、本社と現場、部署間の一体感がなく、ばらばらに働く硬直的な組織で、さすがの稲盛氏にも手に負えないと思われていたが、コンパによる意識改革によって、JALは改革への意識を一致させることができ、業績はV字回復を果たした。

なぜコンパなのか?
ayutaka/iStock/Thinkstock

稲盛氏がコンパの重要性を自覚したのは、1959年の創業から間もないときのことだ。慰労会や社員旅行の際、ビールを飲みながら話をすると、従業員は非常にくだけて心を開いてくれて、稲盛氏の話がすっと通じることがあった。こうした体験が積み重なり、いまのコンパの形ができていったのだ。

当時から稲盛氏は「まずは(京都の)中京区で一番になる。次に京都で一番、日本で一番、そして世界一のセラミックメーカーになるぞ」と宣言していた。これを聞いた新入社員も高揚し、本気で世界一を目指すのだという空気になった。

昼間の会議でも「世界一を目指す」という話をすることはあったが、やはり昼間だと一方的な訓話のようになってしまい、会話のキャッチボールにならない。酒が入ると本音が出て、人間対人間の会話になるため、納得感が全然違うのだ。

「信頼関係を築くのに、なぜ酒が入ったコンパをわざわざ開く必要があるのか」「昼間の会議や個別の面談とは何が異なるのか」という疑問を持つ人がいるかもしれないが、日中職場で話すことと、酒を飲みながらコンパで話すことは、たとえ同じ話題だったとしても次元が別なのだ。

稲盛氏は言う。「上も下もなく、社長が従業員と同じレベルまで下がって、ビールをつぎながら餃子でもつまむ。そうすると気持ちが一つになってくる。(中略)そういう場でみんなが心開いて話をすることで、従業員が経営者に近い気持ちになって、協力してくれるようになるのです。」

アメーバ経営にもコンパが欠かせない

稲盛経営は、フィロソフィとアメーバ経営の2本柱で構成されている。フィロソフィとは「人間として何が正しいのか」、「人間は何のために生きるのか」という問いに向き合い、困難を乗り越える中で生み出された仕事や人生の指針のことだ。フィロソフィを社員に浸透させる上でコンパが有効であることは言うまでもない。

一方、アメーバ経営とは組織を小さな単位(アメーバ)に分け、それぞれの単位で日々採算管理をする経営手法のことを指す。一見すると、計数管理が主のアメーバ経営とコンパは関係性が薄いように思えるが、それは誤解だ。

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要約公開日 2015.05.19
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