若手経営者の優れたコンテンツを事業として成功させるために、著者は若手経営者と人脈リストにある大手企業のトップクラスの人とをつないできた。彼が考える起業の「目の付けどころ」をいくつか紹介しよう。
・アジア
日本のマーケットが縮小を続けるなか、海外に目を向けないと事業は成り立たない。アジアを狙うことで、コストダウンとマーケット拡大というメリットを得ることができる。
・シニア
これまでに培ってきたスキルや人脈を世の中に還元するようなシニアの働き方は今後ますます広がっていく。また、3000万人という65歳以上のマーケットは、内需の最大の担い手となる。
・ニッチな分野
リスクがありそうなニッチ市場で、そのリスクを軽減し利益を生む仕組みをつくることができれば、新たな市場を生み出せる。
・コーディネート
異質なもの同士の組み合わせが、思わぬ相乗効果を発揮することがある。男女や世代だけでなく、様々な組み合わせを考えることがポイントだ。
企業の経営課題と、高い専門性を持つ個人のスキルとをマッチングさせ、効率的に解決へと導く実働型コンサルティングサービスを提供しているサーキュレーション。
同社の主力サービスは二つの軸を持つ。一つ目の軸は、主に経営顧問という形で、課題を抱えた顧客企業を支援する「シニア」。彼らは大手企業で役員として働いたり、長年専門職に携わってきたりしたことで得た経験や人脈を生かし、適切な意見や解決案を提供する。二つ目の軸は、30・40歳代を中心とする「ビジネスノマド」。事業会社で専門性を培ってきた人や、コンサルタントが、1つの会社に縛られずに、複数の会社に対して自分の強みを最大限生かせる業務を提供する。
久保田氏が「シニア人材支援」に目を付けたきっかけは、シニアの知的人材の経験や知見が活かされていないことを実感したからである。また、学習塾を経営していた久保田氏の父親が、シニアになっても仕事をしているときが一番元気だったことも影響しているという。 彼は前職でシニア活用支援の社内ベンチャーを立ち上げる際、半年間で100人ものシニアに会うなかで、週に1、2回というフレキシブルな形で強みを活かして働くことがシニアの特性に合い、ビジネスとしても実現可能な事業であると確信した。
さらに、企業の生産性向上が求められる中、30・40歳代のマネージャー層が社内政治に大きな労力と時間を割いている現状に対し、「真に人材の価値を発揮できる働き方」を広めていくという強いモチベーションを持ったという。久保田氏が目指すのは、将来ノマドになる可能性がある人に向けて、最初の一歩が踏み出せるセーフティーネットをつくること。自由だからこそ効率的に働ける社会に向けて、同社はビジネスノマドの適正な賃金相場をつくることも目指している。
同社の強みの一つは、3000人という国内最大規模のプロフェッショナル人材を集め、顧客企業の多様なニーズに応えられるようにし、人材の質を確保するための「アセスメントシステム」を構築していることである。個人の専門家との面談では、本人にも把握できていない強みや志向性、「どんな企業とフィット感があるのか」などの「履歴書では見えない領域」を見極めている。
そのうえで、同社のコンサルタントは、顧客企業の課題と、その解決に最適な専門家のすり合わせに深く介在する。解決のステップを時間軸で想定できるかといった点を徹底的にヒアリングするのだ。
こうした段階を経て、顧客企業の経営者と個人の専門家との面談でマッチングが行われる。契約成立後も、ミッション遂行まで全面的にフォローするなど一貫して深く介在することで、多くのリピート顧客を生み出している。
未開拓のマーケットを創り出そうとしている久保田氏の原動力となった考え方や起業のノウハウをいくつか紹介したい。
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