スタートアップ列伝

ニッポンの明日を拓く30人
未読
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ニッポンの明日を拓く30人
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スタートアップ列伝
出版社
定価
1,760円(税込)
出版日
2015年05月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

最先端ビジネスの創造やビジネスインフラの革新、次世代技術の開発。閉塞した現状に飽き足らず、世界を見据えて果敢に挑戦する日本発のスタートアップ企業トップ30人は、どんなビジョンを持っているのだろうか? 彼らの起業の経緯と熱い思いに迫ったのが本書である。

本書は、雑誌『日経コンピュータ』の人気連載「スタートアップ魂」に新規書き下ろしを加えたものである。会計知識がなくてもインターネットで利用できるクラウド型会計ソフトを提供するfreee。名刺をインターネット上でデータベース化し、手軽な検索と人脈共有を可能にするSansan。利用者のファッションセンスを学習できる人工知能アプリを開発したカラフル・ボード。多彩なスタートアップの活躍を一覧できる一冊である。

本書におけるスタートアップとは、特定の課題解決のために少人数で結成され、フットワークが軽く、スピード感を持ってプロダクトの改善を進めていく集合体を指す。本書によると、大企業がスタートアップにイノベーションのヒントを得ようという気運が高まっているのは、2000年の起業家ブームとの大きな違いだという。2、3年前ならば、数億円規模の資金調達は極めてレアだったが、今では数十億円規模での資金調達が増えており、起業家が育つ土壌は確実に整いつつある。本書に登場する起業家たちが共通して持つ、志、情熱、行動力、アイデアを具現化する力は、大きな組織で働く人にも間違いなく大きな刺激と成長のヒントを与えてくれるだろう。

ライター画像
松尾美里

著者

日経コンピュータ
企業情報システムやネットワークに携わるITプロフェッショナルはもちろん、ITを経営に活用するための判断に迫られる経営者まで、ITに携わるすべての方々にむけた、IT総合情報誌。

本書の要点

  • 要点
    1
    クラウド型会計ソフトのfreeeの営業部隊を持たないというポリシーには、代表がグーグル時代に学んだ「インターネット企業はオンラインで販売する」という考えが反映されている。
  • 要点
    2
    ビジネスSNSのWantedlyの特徴は、企業と個人のマッチングにおいて、互いのビジョンの一致を重視する点である。優秀な人材の採用実績を出すことで、多くの利用企業を獲得している。
  • 要点
    3
    イベント管理サービスのPeatixの事業では、顧客の声に共通する根本原因を突き詰めたことで、限られたリソースでも、苦情が多いという問題を解決することができた。

要約

マネー&経済を動かす

門外漢だからこそ見つけた会計業務の不便さ
shironosov/iStock/Thinkstock

会計知識がなくてもインターネットで利用できるクラウド型会計ソフトを提供するfreee。自営業者や中小企業の煩雑な会計業務の手間を省くため、金融機関とのデータ連携機能や入力補助機能など、日々改善を続けている。会計ソフト「freee」の特徴は、クラウドである点、簿記や経理の知識がなくても使える点、そして銀行やクレジットカードの明細を自動的に取り込み、手間を省ける点の3つである。現在、利用者は無料・有料合わせて30万の事業所に及ぶ。

代表取締役の佐々木大輔氏が起業したきっかけは、リコメンドエンジンを手掛けるアルベルトでCFOをしていたときに、経理業務の煩雑さを目の当たりにしたことだ。また、米グーグルの日本法人に転職後、いかに中小企業にテクノロジーが浸透していないかに気づき、中小企業を舞台としたイノベーションを起こすと決意した。会計業務に中途半端に門外漢だったことが、その不便さに気づくアドバンテージだったという。今後は、会計ソフトという枠を超えて、業務全体をいかに簡単にできるかに注力しようとしている。

freeeには営業部隊はない。営業コストがサービス料金に反映されると、佐々木氏の理想とする中小企業のテクノロジー化とかけ離れてしまうからだ。このポリシーには、グーグルでの「インターネット企業はオンラインで販売する」という学びによるものだ。freeeが目指すのは、最初に飛びつくアーリーアダプターを徹底的に魅了することである。だからこそ、最初にfreeeを支持してくれたユーザーに対し、改善を続け、今後は規模の大きい企業の課題解決へのシフトを目指している。

ビジネスの仕組みをスマートに変革

IT×人力の名刺管理で世界へ

クラウド型の法人向け名刺管理サービス「Sansan」と、個人向け名刺管理サービス「Eight」を開発・提供するSansan。名刺のスキャン情報と手入力を組み合わせ、ほぼ100%の精度で名刺をデータベース化する。社長の寺田親弘氏が名刺管理に着目した最初の理由は、彼自身の課題意識だった。名刺をインターネット上でデータベース化すれば、手軽に検索でき、社内で人脈を共有することもできる。

スキャナーで取り込んだ名刺のデータは、個人情報を特定できない形にし、複数のオペレータが手作業で入力することで、ほぼ100%の精度を実現している。文字認識精度が少しでも低ければ、理想の顧客価値を提供できないため、人力に至ったのは必然だったという。

Sansanのミッションは、ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新することである。今後は、事業の世界展開の一歩として、北米向けにSansanのスマートフォン用アプリをフリーミアムのモデルで提供する。Eightのマネタイズをめざし、有料サービスも提供を開始するなど、寺田氏は意欲を見せる。

【必読ポイント!】 新市場を創造する

ビジョンが企業と人をつなぐ
Bartłomiej Szewczyk/iStock/Thinkstock

2012年の正式リリース以来、月間利用者数約55万人、約7000社の企業ユーザーを誇るビジネスSNS「Wantedly」。個人ユーザーはWantedly上で自分のビジョンや、スキル、他己紹介、人的ネットワークなど、立体的なプロフィールを作ってブランディングに役立てることができる。一方、企業ユーザーは個人にリーチできる機能を人材採用に活用する。特徴的なのは、企業と個人のマッチングにおいて、互いのビジョンが合致するかどうかを重視する点だ。企業の有料会員から月額利用料を受け取るビジネスモデルを採っており、利益も出している。

CEOの仲暁子氏は、「シゴトでココロオドル人をふやす」という理念を掲げる。

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要約公開日 2015.08.19
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