ゼロの表紙

ゼロ

なにもない自分に小さなイチを足していく


本書の要点

  • 本書ではかつてメディアを騒がせた「ホリエモン」ではなく、著者の考えを理解してもらうために「堀江貴文」という人間について、その半生が包み隠さず描かれている。

  • 本書では、堀江氏が唱える「掛け算によるショートカット」の前提である、「足し算」部分が語られている。ゼロの状態から始めるときには、まずはゼロをイチにしなければならない。信用の「ゼロからイチ」は、まず自信を持つところからはじまる。

  • 人生の中で、仕事はもっとも多くの時間を投じるもののひとつであるにもかかわらず、それが我慢の時間になってしまっているのは間違っている。人は自らの生を充実させるために働くべきだ。

1 / 3

メディアを騒がせた「ホリエモン」ではなく、「堀江貴文」という人間

失墜と復活の繰り返し

iStock/Thinkstock

本書の前半部(第1・2章)は、これまであまり語られてこなかった「堀江貴文」の人物像が描かれている。幼少期から今に至るまで、コンプレックスにまみれた過去も包み隠さず語られている。

堀江氏の半生は失墜と復活の繰り返しだ。何かに失望し堕落するが、ふとしたきっかけで再起し一気にハマっていく。そしてまた全てを失ってゼロに戻る。まずは、収監され三たびゼロに戻ってしまった堀江氏のこれまでを振り返ってみたい。

人生を変えた「恩師」との出会い

Fuse/Thinkstock

堀江氏の母親は随分と「激しい」性格だ。有無を言わさず言うことをきかせる。小学生の頃は柔道も強制的にやらされていた。柔道のおかげで友達と遊ぶこともできず、テレビの話題にもついていけない。彼は自身の環境に苛立ちを感じていた。

そこに、はじめての理解者が現れる。小学3年生時の担任、星野先生だ。先生は、彼の生意気なところ、面倒くさいところ、そして不器用なところを、すべておもしろがり、ほめてくれた。そして彼は、公立中学に進むのではなく、久留米にある中高一貫の私立校、久留米大学附設中学校に行きなさい、という先生のアドバイスに従った。

中学に上がり、彼はその後の人生を決めたといっても過言ではない、コンピュータと出会った。初心者用のパソコンでは飽き足らず、彼は新聞配達のアルバイトで貯めたお金で本格派のパソコンを購入、ますますコンピュータの世界にハマっていく。プログラミングを武器に、英語スクールのシステム移植も成功させた。しかし、インターネット登場以前のあまりにもマニアックな当時のパソコンの世界に徐々に失望し、彼はそこからも離れていった。それまでパソコンに費やされていた時間は、享楽的な遊びの時間へと切り替わり、ちっぽけな自尊心さえ残されていないゼロの状態となってしまう。

そんな自分の状態にうんざりしていた彼は、とにかくその状況を脱出することを考えた。そのためにはどうしても東京に行きたかった。親を説得するに足る材料は東大に合格するしかない。そして今度は受験勉強にハマるのだ。何事もハマってしまえば楽しくなるというのが彼のスタンスだ。1991年の春、彼は現役で東京大学に入学した。

小さな成功体験を積み重ねる

彼が東京での住み処に選んだのは、キャンパス内にある駒場寮。そして幸か不幸か、彼は「麻雀部屋」に入寮した。彼は幼少期からの麻雀好き。やらないわけにはいかない。麻雀を打ちながらポスドクの先輩から、研究者の道には嫉妬や派閥争いなどのドロドロした権力闘争が待っている現実を聞かされ、彼は東大に幻滅していった。そして、どこにでもいる堕落しきった大学生となった。

恋愛はどうだったのかというと、彼はまったくモテなかったようだ。中高6年間を男子校で過ごしたこともあり、女の子に対する免疫はゼロ。声をかけようとした途端、全身が固まってしまう。彼は近鉄バファローズの買収騒動でメディアに大きく採り上げられた2004年あたりでも、女の子にまだキョドっていたらしい。

そんな彼の殻を打ち破ることができたきっかけは、大学時代に経験したヒッチハイクの旅だという。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2010/3329文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2013.11.06
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

FREE フリー
FREE フリー
高橋則明(訳)小林弘人(監修・解説)クリス・アンダーソン(実業家)
僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話
僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話
本田亮
ヤバい経営学
ヤバい経営学
フリークヴァーミューレン本木隆一郎(訳)山形佳史(訳)
初対面の1分間で相手をその気にさせる技術
初対面の1分間で相手をその気にさせる技術
朝倉千恵子
グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」
グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」
松田悠介
MAKERS メイカーズ
MAKERS メイカーズ
関美和(訳)クリス・アンダーソン(実業家)
特別講義 コンサルタントの整理術
特別講義 コンサルタントの整理術
三谷宏治
ワーク・シフト
ワーク・シフト
リンダ・グラットン池村千秋(訳)

同じカテゴリーの要約

頭の中がどんどん言葉になる瞬間言語化トレーニング
頭の中がどんどん言葉になる瞬間言語化トレーニング
荒木俊哉
キーエンス 最強の働き方
キーエンス 最強の働き方
齋田真司
なぜ働く?誰と働く?いつまで働く?
なぜ働く?誰と働く?いつまで働く?
有山徹
無料
正しい答えを導く質問力
正しい答えを導く質問力
山口拓朗
伝わるコツ
伝わるコツ
山本渉
できるリーダーが意思決定の前に考えること
できるリーダーが意思決定の前に考えること
内田和成
頭のいい人が話す前に考えていること
頭のいい人が話す前に考えていること
安達裕哉
決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本
決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本
吉田浩岩井俊憲 (監修)
AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣
AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣
越川慎司
伝え上手になりたい
伝え上手になりたい
小川奈緒