クックパッドは日本最大のレシピ投稿・検索サイトであり、日々集まるデータは膨大だ。「たべみる」は、クックパッドに集まる料理にまつわるビッグデータを企業が気軽に利用できるサービスである。「たべみる」ではユーザーがクックパッドに打ち込んだ検索ワードから、どんな材料を使い、どのようなシーンで、どんな工夫をしようとしているのか、生活者のナマの声やニーズが把握できる。
そんな宝の山といえるサービスに大きな可能性を感じ、著者はクックパッドに入社した。しかし、「たべみる」は社外だけでなく社内でもあまり目立たず、年に1回のデータ更新を行う程度で、ほとんど放置されていた。たぐいまれなる可能性を秘めたビッグデータサービスであるにもかかわらず、重要視されていなかったのである。「たべみる」は改善の余地があるものの、てこ入れをすれば多くの人の役に立ち、事業として大きな伸び代があるように思われた。
通常、データからは世の中の「結果」が分かる。例えば、Suicaのデータからは消費者が行動した「結果」を知ることができ、明日の行動を推量できる。一方、クックパッドの検索データから見られるのは数時間後の未来だ。「レシピを検索する」とは、これから作りたい料理、関心を持っている料理、いつもの料理のアレンジレシピなど、今まさに起こりつつある未来のニーズの変化を指し示すものだ。
スマートフォンの普及率が高くなり、気軽に検索をする人が増え、どんどんデータが集まっている。そしてクックパッドの利用者が増えてデータが集まれば集まるほど、それはユーザーや企業にとって信頼性の高い有益な情報となる。
著者は「たべみる」を使いやすい形にリニューアルして事業として確立させることをミッションとし、機会あるごとにその価値を力説するとともに事業化を提案してきた。だが、当時は「会員事業」「広告事業」の拡大が優先事項だったため、そちらに注力するため、会社は「データ販売事業」である「たべみる」への積極的な投資は行わないという判断を下した。リニューアルには専任のエンジニアの配置が必要だが、人員や予算は割いてもらえなかった。
そんな中、著者は広告事業部から経営管理部門への異動が決まった。そこで上司になった当時のCFOである百鬼氏が、思いがけず「たべみる」リニューアルを後押ししてくれることになったのだ。
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