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まちの本屋 の表紙

まちの本屋

知を編み、血を継ぎ、地を耕す


本書の要点

  • 本ごとに異なる「旬」のタイミングで、お客様にその本を提案できるかどうかが書店員の腕の見せどころである。

  • 本当に売れる本を生み出すには、お客様の導線を考え、お客様が本の魅力を最大限感じられる「出会い方」を想像することが大切である。

  • 著者がめざすのは、店頭も外商も含めた、本屋の「六次産業化」である。さわや書店は、「まちづくりへの参画」をテーマに、本を介して異業種と交流している。

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本屋との切っても切れない関係

まちの本屋をめざす原点

岩手県と秋田県の県境にある著者の実家は、本屋を切り盛りしていた。小学生だった著者が鮮烈に覚えているのが、コミュニティーの場としての本屋の姿である。著者は小学生からレジを打ち、本の配達もしていた。

大学時代には古本屋に足しげく通い、本の虫だった著者が就職を決めたのは、盛岡の第一書店という中規模の本屋だった。そこで任された最初の仕事は、入荷した本の仕分けと、売れ行きの芳しくない本を取次へ戻す返品である。当時、返品時にはすべて手書き伝票を書く必要があった。膨大な伝票を書く中で、著者は売れない本の理由を知ることができた。

書店員としての原点になったのは、さわや書店の名物店長、伊藤清彦氏との出会いだった。著者は彼から書店員としての矜持を学んだ。伊藤氏はこう語った。「本には旬がある。古い本でも旬がやってくる。そのタイミングでお客様に提案できるかが書店員には問われるのだ」。

目の前のお客様と本との出会いのきっかけを意図的につくることが大事な仕事なのである。例えば、TPPが話題になったとき、『農協』という本を展開すると、品切れになるほど売れていったという。また、一人の書店員が出会える本には限りがあるため、本屋の数だけ、書店員の数だけ、違う売り場が生まれるのである。

まちから本屋を消した過去

©iStock.com/takkemei

第一書店での5年半の勤務を経て、著者は実家の本屋を継いだ。人口減少に歯止めがかからない地域において、街の本屋は子どもたちのコミュニティーでもあり、年配者の安否確認の場でもあった。ところが、街の縮小とともに、売上や来客数が減少の一途をたどり、著者が本屋を継いで7年目、ついに店をたたむことになった。すべての棚から本がなくなるという、筆舌に尽くしがたい苦しみの中で、伊藤氏から「いつでもいいから、(さわや書店に)おいで」と声がかかった。

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要約公開日 2016.01.27
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