なぜデータ主義は失敗するのか?
人文科学的思考のすすめ

未 読
なぜデータ主義は失敗するのか?
ジャンル
著者
クリスチャン・マスビェア ミゲル・B・ラスムセン 田沢恭子(訳)
出版社
早川書房
定価
2,052円
出版日
2015年07月20日
評点(5点満点)
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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レビュー

「何かがひどく間違っている。数字を見て、プレゼンを聞いて、すべての照準をターゲットに合わせても、どれも的外れだと感じる」。本書の冒頭には、まるで上司の心を覗いたかのような言葉が登場する。仮説を立て、それを裏付けるデータが集まっても、どうしても確信が持てないという経験は、マーケティング部署の社員であれば馴染みがあるのではないだろうか。

本書は、その打開策を人文科学の思考法に見出す。著者が紹介する「センスメイキング」という手法は、仮説を裏付ける量的データを集めるのではなく、まず顧客のところに飛び込み、現象をただ観察して、そこに意味を見出すというもので、「考える」というより「感じる」ことに重きを置いている。そう言うと単なるヤマ勘のように聞こえてしまうかもしれないが、実際はそうではない。しっかりと確立された手順と、多くの成功事例によって、その確かさは裏付けされている。経営に行き詰まっていたレゴやアディダスが、どのように顧客の心をつかみ直し、企業としての信念を揺るぎないものにしたのか。読めば必ず自社のビジネスの参考になるはずだ。

残念ながら人文科学の一部は、ときに軽視されがちである。最近では、国立大学の人文系学部再編の是非も話題になった。本書によって人文科学的思考の価値が周知され、「文系」の面目躍如となることを心より願う。

北山 葵

著者

クリスチャン・マスビェア
コペンハーゲンとロンドンで哲学および政治学を学び、ロンドン大学で修士号を取得。ReDアソシエーツの創業パートナー。ニューヨークを拠点とし、従来研究者が使ってきた高度な手法を各社の問題解決プロセスに取り入れ、ReDのクライアントリレーション担当ディレクターとして多くのフォーチュン300企業の経営陣にアドバイスをする。社会理論、言説分析、政治学に関する著書数冊あり。

ミゲル・B・ラスムセン
デンマークのロスキレ大学で行政学・経済学の修士号、オランダのマーストリヒト大学でイノベーション管理学の修士号を取得。ReDアソシエーツの創業パートナー。ReDアソシエーツ・ヨーロッパのディレクターとして先見的企業の経営トップと協働、その仕事から玩具、スポーツ用品、ヘルスケアの市場で画期的なテクノロジーや製品が生まれている。ヨーロッパで学界および一般メディアに多数の記事を寄稿。

本書の要点

  • 要点
    1
    これまでは、量的データをもとに問題を直線的に解決する「デフォルト思考」の考え方が主流だった。しかし人間行動を扱う上では、質的データを元に非直線的な問題解決を図る「センスメイキング」の手法が有用である。
  • 要点
    2
    センスメイキングは、人を正しく理解するためにある。レゴはセンスメイキングによって、自社が対象とすべき顧客を理解し、方向性を定め直すことができた。
  • 要点
    3
    センスメイキングの手法を学んだだけでは、実際に問題解決を行うことは難しい。重要なのは、実際に現象の中に飛び込み、そこから洞察を得られるリーダーの存在である。

要約

人文科学的思考法が、ビジネスを変える

なぜ「デフォルト思考」では足りないのか?
Lambros Kazan/iStock/Thinkstock

従来ビジネスにおいては、大量のデータを用いて量的分析をし、直線的なアプローチで問題解決を図る「デフォルト思考」が主流だった。ブレインストーミングやデザイン思考、ビッグデータなどのビジネスツールがこれに当たる。いずれも、システムの生産性向上を必要とする経営課題に対しては、非常に有効なアプローチだった。

しかしこれだけでは、人の行動に関わる問題を扱うには不十分だと著者は言う。それは、「デフォルト思考」では、人間を正しく理解することはできないからだ。

これまで人間は、「予測可能で合理的な意思決定者」だとされてきた。消費者は自分の好みをわかっており、客観的で、十分に比較検討したうえで商品を選ぶのだという考え方だ。しかし実際にはそうではない。近年主流になってきた行動経済学という学問が示す通り、人間は不合理で、衝動的で、自分自身でも理由がよくわからないまま買い物をするのである。

まず「観察」から始める

このように不確定要素の大きい人間を理解するためには、従来のビジネスツールよりも、むしろ今まで人文科学の世界で使われてきた問題解決法のほうが適している。そのひとつが、「仮説形成的推論」と呼ばれるものである。

これまでの仮説主導型の問題解決アプローチでは、まず仮説を立て、手元のデータをもとに、その仮説が正しいかどうか演繹的に結論を出していた。この方法では、仮説の正誤はわかっても、そもそもの問題設定自体が正しいかどうかはわからなかった。

「仮説形成的推論」は、まず観察し、それから真であり得る仮説に進む推論方法である。この方法には、多くの不正確な「洞察」に惑わされたり、自らの信念を揺るがす結果が出たりと、やりにくい面も多い。しかしこれ以外には、複雑な問題を解決する方法はない。

仮説形成的推論を、より実用的な問題解決に応用した手法が「センスメイキング(=意味を見出すこと)」である。センスメイキングを用いれば、より深く、正しく人間を理解することができる。

「デフォルト思考」と「センスメイキング」は補完し合う

デフォルト思考が目に見える課題を明らかにするものだとしたら、センスメイキングは、目に見えない背景を吟味するための手法である。デフォルト思考は「属性」という客観的な数字や事実に着目するが、センスメイキングは定量的な分析よりも定性的な分析を重視し、人がそれらの属性をいかに体験するかという「アスペクト」に着目する。男・女といった生物学的な性別が「属性」なら、男らしさ・女らしさといった文化的な性別が「アスペクト」だ。

デフォルト思考とセンスメイキングは、お互いに補完し合うツールである。たとえばオペレーション

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マーケティング
著者
クリスチャン・マスビェア ミゲル・B・ラスムセン 田沢恭子(訳)
出版社
早川書房
定価
2,052円
出版日
2015年07月20日
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