クリエイティブ・ディレクションという仕事が誕生したのは、広告代理店のビジネスが認知された1950年代である。当時の巨大メディアはテレビであり、テレビCM枠を埋めるアウトプットをつくるのが、クリエイティブの最も重要な仕事だとされていた。
クリエイティブ・ディレクションの仕事は次の4つから構成されている。①ミッションの発見、②コア・アイデアの確定、③ゴールイメージの設定、④アウトプットのクオリティ管理である。クリエイティブ・ディレクターはこの4つにのみ関わることが望ましい。
ミッションの発見とは、クライアントの漠たる「課題」から、「本当は、このブランドをこういう状態にしたい」という適切な欲望を引き出し、その欲望を明確化・言語化して、具体的な目的に昇華させることである。ミッションは、クライアントが漠然と持っている「売り上げが落ちた」「商品の知名度が低い」といった困りごととは別物である。複数の課題が絡み合っているケースも多い。そこで、バラバラの課題の根本にある原因を発見することが、欲望を引き出すうえで効果的である。
一方、ミッションをターゲット(消費者)側から具体化する作業も必要だ。まず、クリエイティブ・ディレクターはターゲットを絞りすぎずに、世界的に潜在している欲望についての仮説を立て、ブランドのミッションによって満たせる領域を想定しなくてはならない。
この「ミッションの発見」は、今回の仕事で必ず獲得・遂行すべきことを把握し、クライアントやクリエイティブ・チームのメンバーなど、関係者全員に共有するために不可欠である。
ミッションは、企業のブランドができることの中で、一番高度かつ本質的で、世の中のためになるものは何かという問いへの答えでもある。
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