レビュー
上手な質問をするのは簡単なことではない。質問の仕方次第では、話したがらない相手からはたったひと言の答えしか得られないだろうし、話したがりの相手からはとりとめのない答えが返ってくるばかり、となってしまう。家族や友人、同僚、顧客に対して、そうしたもどかしい思いをしている方は少なくないのではないだろうか。弁護士など、質問術の訓練を受けている人でさえ、不十分な答えや紛らわしい答えしか聞き出せないということがよくあるという。しかし、適切な質問テクニックを身につけさえすれば、どのような状況・職業においても、詳細で的確な答えを手に入れることができるという。
著者は、「史上最高の質問術教官」と称えられる米陸軍の諜報指導官だ。本書で披露されるその質問スタイルは、単純な質問を手際よく重ねていき、必要な情報を聞き出していくというものだ。この方法は、あまり乗り気でない相手を「もっと話してもいいかな」という気持ちにさせる対人技術の一つだといえるだろう。
優れた質問は、何も捕虜や容疑者から真実を聞き出そうという現場でのみ力を発揮するというだけではない。相手のことをよく知るためのコミュニケーションがとれれば、人間関係構築にも、協議の場でも役に立つ。本書でも多くの事例が紹介されているが、職場でのコミュニケーションで、インタビューや取材の場で、家族との対話の場で、質問術は大いに効果を発揮することだろう。
ジェームズ・O・パイル(James O. Pyle)
戦略報告聴取の名手。その専門技術を活かし、防衛言語研究所、米陸軍情報センターおよび学校、統合参謀本部などでアメリカ陸軍の諜報部員の質問技術訓練指導に携わる。質問を出し答えを聴く腕前は、だれも彼に及ばない。バージニア州スプリングフィールド在住。
マリアン・カリンチ(Maryann Karinch)
著述家。『The Body Language Handbook(からだで話す)』、『I Can Read You Like a Book(本のように人を読む)』をはじめ、19冊の著書および共著書を発表。コロラド州エステス・パークに拠点を置く著作権エージェンシー、ルーディ・エージェンシーの創設者でもある。
考え方を変える
質問に対する考え方を変える
質問術に秀でるためには、脳内の配線を少し変える必要がある。質問とは発見であり先入観のない好奇心の表現である、と捉えなおすことがもっとも重要な変更点だ。問い詰めたり詮索したりすることは相手を不快にさせるだけではないかと質問をためらう人がいるが、本来なら質問は相手への関心を示す手段なのだ。
質問の出し方次第では、聞かれた本人も自覚していない有益な情報を引き出すことも可能だ。例えば、事故や犯罪の現場付近で適切な聞き込みを行うことで、自分は何も知らないと思っていた通行人さえもときに重要な目撃者となる。誰でも適切な質問をされれば、役に立つ情報の提供者になれる。質問の腕を磨くためには、「発見」に焦点を置くことを忘れてはならない。
2歳児の疑問文/「他には?」
dimafoto/iStock/Thinkstock
訓練経験のない者が自発的に質問した場合、無関係な情報や有益ではない情報が答えに入ってきてしまうことも多い。
上手な質問をするための初歩的な練習は、2歳児に戻ったつもりで相手に質問をすることだ。知らない話題について「だれ」「何」「いつ」「どこ」「なぜ」を含む簡単な疑問文で、一度に一つずつたずねながら理解を深めていく。
加えて重要なことは、一つの情報を掘り下げる前に「他には?」とたずね、すべての情報が出尽くすまでこれを繰り返すことだ。相手が「他にはありません」と答えるまで聞けば、これ以上聞きだせる情報はない。それを確認してから新たな質問に移る。
質問を「発見」と考えること、答えが「はい」「いいえ」ではなく文章になる質問を一度に一つ心がけること、そして「他には?」と聞くこと、まずはそのように意志をもって行うことが重要である。
上手な質問の作り方
質問は正確さと効率が決め手
scanrail/iStock/Thinkstock
質問上手になる鍵は、いつも疑問詞を使って短く聞くことだ。
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