アクション・バイアス

自分を変え、組織を動かすためになすべきこと
未読
アクション・バイアス
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自分を変え、組織を動かすためになすべきこと
未読
アクション・バイアス
出版社
東洋経済新報社
出版日
2015年03月12日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

ほとんどの経営者やマネジャーは、かなりの程度の知識や能力、影響力があり、自由に使える経営資源も手元に豊富にあるにもかかわらず、日常のルーティンワークに忙殺され、本当に有意義なことを成し遂げるチャンスを放棄している。著者は、一生懸命行動しているようで実際には意味のある行動をとれないでいる「アクティブ・ノンアクション」に溢れた社会や企業、組織に警鐘を鳴らしている。

本書では、目的意識を伴う行動をとるためのアクション・バイアス(行動によって物事を成し遂げようとする姿勢)を身につけるためのアイデアが、様々な企業の成功事例と共に紹介されている。著者は組織戦略論の世界的権威であった故スマントラ・ゴシャール氏と、スイスのザンクト・ガレン大学で教鞭をとるハイケ・ブルック氏。行動心理学と組織戦略論の豊かな理論的蓄積に裏付けられた、良質なリーダーシップと経営の指南書である。

初版から10年を経ての新装版であるため、取り上げられている事例には古いものもあるが、エネルギーと集中力を高め、強い意志の力を持って目標達成に向けて進む思考と感情のプロセスは、今の時代でも全く変わらず有効なものだ。組織を率いる経営者やマネジャークラスの方にはもちろん、業種やポジションに限らず「仕事に目的意識を持てないまま漠然と働いている」と感じたことのある方に手にとっていただきたい書籍だ。

ライター画像
佐藤奈美

著者

ハイケ・ブルック
ザンクト・ガレン大学(スイス)教授。同校「リーダーシップと人的資源管理」研究所所長。ベルリン自由大学より経営学修士号を、ハノーバー大学より経営学博士号を取得。専門はリーダーシップ論。世界各国の大学機関で研究・教育活動を行っている。とりわけ近年は、マネジャーの感情、意志、行動、リーダーシップについて研究を進めている。

スマントラ・ゴシャール
1948年インド生まれ。マサチューセッツ工科大学とハーバード大学より経営学博士号を取得。組織戦略論の世界的権威で、インシアード経営大学院教授、ロンドン・ビジネススクール教授、インド経営大学院初代学長、イギリスの先端経営研究所フェローなどを歴任。その他、複数の企業の社外役員やコンサルティング、世界経済フォーラムのフェローなどとしても活躍したが、2004年に逝去。

本書の要点

  • 要点
    1
    目的意識を伴う行動をとり、成功するマネジャーは、「エネルギー」と「集中力」という管理職の仕事における2つの重要な要素を高い状態に保っている。
  • 要点
    2
    エネルギーを引き出すためには目標を明確にし、感情をコントロールすることが大切である。また集中力を高め、維持するためには、具体的なイメージを描くと共に、自分の意図にコミットする勇気を持つことが必要である。
  • 要点
    3
    モチベーションよりも強い「意志の力」を発揮させるためには、「意図を形成」し、「無条件にコミット」し、その「意図を守り抜き」、「意図から自分を解放する」という4つのステップが必要である。

要約

アクティブ・ノンアクションからの決別

経営者・マネジャーが持つ4つの経営行動タイプ
Photodisc/Photodisc/Thinkstock

経営者やマネジャーの経営行動は、そのエネルギーと集中力の度合いによって「先延ばしタイプ(低いエネルギー×低い集中力)」、「超然タイプ(低いエネルギー×高い集中力)」「髪振り乱しタイプ(高いエネルギー×低い集中力)」、「目的意識タイプ(高いエネルギー×高い集中力)」の4つに分類することができる。

なかでも40%と高い割合を占めるのが「髪振り乱しタイプ」である。これらの超多忙な人々はたいてい非常に意欲があり、善意の持ち主なのだが、今日のスピーディーな企業文化はこのタイプの忙しさをさらに助長し、多くの会議やメール、電話などルーティンに忙殺された彼らは本来の能力を発揮することができなくなっている。

本書ではこのように「あくせくしながらも結果として何もしないこと」を「アクティブ・ノンアクション(多忙ではあるが、目的を伴う意識的行動をとっていないこと)」と呼び、目的意識を伴う行動をとるために必要な要素を考察する。

アクション・バイアスの鍵は、エネルギーと集中力

目的意識を伴う行動とは、本書のタイトルでもある「アクション・バイアス(行動によって物事を成し遂げようとする姿勢=bias for action)」を表す、一貫した意識的で精力的な行動である。経営行動タイプのうち、10%と最も少ない割合の「目的意識タイプ」マネジャーは、アクション・バイアスの獲得にあたって「エネルギー」と「集中力」という管理職の仕事における2つの重要な要素を高い状態に保っている。

「エネルギー」とは、強烈な個人的コミットメントと関与によって増幅される活力である。エネルギーは、その行動が主観的に意味のあるものでなければ発揮されない。またエネルギーは努力も意味する。行動には一定量の力の発揮を伴うが、こうした力は外部からの圧力に刺激されるだけでなく、個々人が内面に持つ素質によっても誘発される。

「集中」とは、エネルギーを特定の結果に向けることである。それは気を散らすものを追い払い、諸問題を克服し、予期せぬ挫折に直面してもあくまでやり抜くという自制心を必要とする。

エネルギーと集中の組み合わせで生まれる目的意識を伴う行動とは、自らの中から生まれ、自ら身を乗り出し、自らを駆り立て続ける行動である。衝動的な行動とは違って思考と分析、計画を伴うものだ。

エネルギーを引き出し、集中力を高める

目標を明確にし、感情をコントロールすることでエネルギーを引き出す
sirastock/iStock/Thinkstock

目的意識を伴う行動をとるためのエネルギーを引き出すには、自分自身がやりがいを感じ、自分が押しつぶされない範囲で精一杯背伸びをして達成できる、明確かつ具体的な目標を見つけることが大切だ。

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要約公開日 2016.02.27
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