2020年 世界経済の勝者と敗者

未 読
2020年 世界経済の勝者と敗者
ジャンル
著者
ポール・クルーグマン 浜田宏一
出版社
定価
1,600円 (税抜)
出版日
2016年01月25日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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2020年 世界経済の勝者と敗者
2020年 世界経済の勝者と敗者
著者
ポール・クルーグマン 浜田宏一
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定価
1,600円 (税抜)
出版日
2016年01月25日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
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レビュー

ノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマンと、イェール大学名誉教授の浜田宏一という著者の2人は、増税を回避し、金融緩和で景気回復を目指すリフレ派の経済学者として著名である。また、浜田氏は安倍内閣の懐刀で、アベノミクスの生みの親とも言われている。そのような豪華な2人が論じている本書は、アベノミクスの本質を語り、米国・欧州・中国などの世界経済も俯瞰した読み応えのある一冊だ。

本書は、「日本国債の格付けをするとしたらAAAだ」、「日本銀行による国債買い取りを懸念する人はインフレを恐れているが、まさにそれこそがアベノミクスが実現しなければいけないことだ」、というように難しい問題への答えの歯切れの良さが際立っている。日本がマネーサプライを急激に増やしている中で、インフレ、ましてやハイパーインフレとは程遠い状況は、日銀による国債の買い取りの正当性を裏付けているようにも見える。アベノミクスは今や世界が注目する政策となり、欧州などの日本と同様の構造的問題を抱える地域にとっては、パイロットプログラムとして位置付けられているという。アベノミクスは道半ばで現時点での評価は難しいが、その成果如何によっては世界の経済政策に大きな影響を与えることだろう。

経済学者にもリフレ派と反リフレ派がいるように、アベノミクスに対する期待や評価は分かれている。ただ、リフレ派の主張を正しく理解するためには、非常に読みやすく整理された良書である。是非ご一読いただき、今後の世界経済を予測する武器としていただければと願う。

大賀康史

著者

ポール・クルーグマン
1953年に生まれる。ニューヨーク市立大学大学院教授。2008年にノーベル経済学賞を受賞。1974年、イェール大学卒業。1977年、マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。その後、レーガン政権の大統領経済諮問委員会委員、IMF・世界銀行・EC委員会のエコノミストを務め、マサチューセッツ工科大学教授、スタンフォード大学教授などを歴任。著書には、『クルーグマンの良い経済学悪い経済学』(日本経済新聞社)、『さっさと不況を終わらせろ』(早川書房)などがある。

浜田 宏一
1936年、東京都に生まれる。イェール大学名誉教授。第2次安倍晋三内閣で内閣官房参与として「アベノミクス」の理論的指導者となる。国際金融論に対するゲーム理論の応用で世界的な業績をあげ、日本のバブル崩壊後の経済停滞については金融政策の失策がその大きな要因と主張、日本銀行の金融政策を批判してきた。1958年、東京大学法学部を卒業。1960年、東京大学経済学部を卒業。1965年、イェール大学で経済学博士号を取得。1981年、東京大学経済学部教授。1986年、イェール大学経済学部教授。2001年からは、内閣府経済社会総合研究所長を務めた。
著書には、『アメリカは日本経済の復活を知っている』『アベノミクスとTPPが創る日本』(以上、講談社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本国債の信用力について話題に上ることが多いが、円建ての日本国債がデフォルトするということは、日本円の発行ができるという条件下では起こりえない。
  • 要点
    2
    ユーロを導入したことにより、ギリシャには金融政策の自由度がなくなった。そのため、緊縮財政とセットで行うべき金融緩和を機動的に実施できないことが、ギリシャの問題を大きくしている。
  • 要点
    3
    中国はGDPが実態では既にマイナス成長の可能性が高く、不動産バブルも深刻だ。世界経済は中国のバブル崩壊に備えておく必要がある。

要約

【必読ポイント!】日本のアベノミクス

パナソニックやソニーが赤字になった原因――浜田
Ingram Publishing/Thinkstock

安倍晋三首相の経済政策であるアベノミクスにより、日本は新しい方向に舵を切った。それ以前は、欧米各国では大幅な金融緩和を進められ、一定の景気回復に成功していたにもかかわらず、日本では苦境下でも金融引き締め政策を継続していた。そのような状態から、日銀の新総裁となった黒田東彦氏のもと、日銀は大胆な金融緩和を実行した。それは何も突飛な政策ではなく、経営学の常識を当たり前に機能させようというものだ。具体的には、金融緩和を実行し、その結果として円安やインフレになり、景気が良くなるということである。

リーマン・ショック以降、円はドルに対して最大30%値上がりした一方で、ウォンは30%値下がりしていたため、韓国に対するハンディキャップは60%にも及んでいたのだ。その結果、パナソニックやソニーといった日本を代表するメーカーが赤字に転落していった。

アベノミクスによる金融緩和は、即座に市場に活気を与えた。日銀が金融機関から国債や手形を買い取り、市場への資金供給を増やしている。高度経済成長時代の日本では、常に3~4%のインフレだった。アベノミクスでは2%のインフレ目標が設定されており、おだやかなインフレを志向している。これは「日銀は本気でデフレを退治するのだ」という決意表明を意味し、お金を使うことを渋っていた消費者や企業のマインドを変えていくことだろう。

日本の労働人口問題の解消には――クルーグマン

アベノミクスに対する批判で代表的なものは、大胆な金融緩和によってハイパーインフレになってしまうというものだ。しかし、アメリカにおいて以前から金融緩和をしてきている中で、ハイパーインフレは起きていない。日本でハイパーインフレになったのは、戦争のときくらいのもので、石油危機などのインフレが発生した際も、日銀はしっかり制御することができた。

アベノミクスが始まり、実質金利が下がり、円安と株高になったことから、日本経済はいい方向に向かっているようだ。ただ、アベノミクスが成功するかどうかはまだ確信を持つところまではいっていない。特に、消費税の引き上げは注意が必要である。

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