「洞察力」があらゆる問題を解決する

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「洞察力」があらゆる問題を解決する
出版社
フォレスト出版
出版日
2015年11月13日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

偶然にも新しい物事を発見した人々――浴槽に浸かって浮力を発見したアルキメデスのような――は、どのようにしてその閃きを得ているのだろうか。火事の現場でとっさに逃げ道を思いつくなど、閃きによって窮地を脱することもあるが、そうした閃きはどこからか降ってくるようなものなのだろうか。本書の著者は、閃きを導き出す、そもそも見えていない問題を見抜く力(=洞察力)の不思議に興味をもち、まるでその魅力にひきずりこまれるように、研究を重ねることになった。

洞察力とは何かを考えるにあたって、著者は「洞察力は何によって触発されるのか」「なぜ洞察力の発揮が妨げられるのか」「洞察力を発揮するための方法とは何か」を探る。注目すべきは、本論は、人の意思決定を観察する認知心理学者である著者の名を世界に知らしめた、現場主義的意思決定(NDM理論)」によって支えられているということだ。NDM理論とは、「人工的に設計された課題を実験室の中で被験者に考えさせるのではなく、実際の現場でどのように人が考えるのかを研究する」という学問分野を指す。したがって、著者の考察は日常生活に即した多くの事例を含んでいる。

洞察力は、個人の思考と行動を変えるだけでなく、企業経営に活かせば大きなイノベーションを起こす力にもなる。本書を通して、洞察力を味方にするための方法をぜひ知ってほしい。

ライター画像
流石香織

著者

ゲイリー・クライン
米国認知心理学者。1944年、ニューヨーク市出身。1969年にピッツバーグ大学で実験心理学の博士号を取得。1989年、『現場主義的意思決定(Naturalistic Decision-Making,NDM)理論』を構築したことで世界的名声を博す。オークランド大学助教授、ウィルバーフォース大学准教授を経て、米空軍省に研究者として勤務。1978年にR&D企業クライン・アソシエイツを創業。2005年に同社を売却。現在、マクロコグニション社の上級研究員。ホワイトハウス・シチュエーションルームのリーダーの1人として活躍した経験がある。米国心理学会、米国人間工学会の各役員。2008年、米国人間工学会よりJack A. Kraftイノベーション賞を受賞。著書に『決断の法則―人はどのようにして意思決定するのか?』(佐藤洋一訳/トッパン)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    洞察力は、出来事のつながりから新しいよりどころを得て閃きに至る、など3種類の思考プロセスをもとにして発生し、考え方や行動を根本的に変えるような力を持つ。
  • 要点
    2
    洞察力は、誤った考えへの固執や、情報の意味を受け止められないことで、発揮を妨げられてしまう。また、IT技術や、予定外の行動を容認しない組織風土も、洞察力の発揮を阻害する。
  • 要点
    3
    洞察力を日常的に発揮するためには、3つの思考プロセスに対応した方法を用いる必要がある。洞察力を発揮したい企業は、洞察力を使わなければ衰退していくことを認識し、意志的に変革への行動を起こすべきだ。

要約

見えない問題を見抜く力

洞察力の研究に乗り出す
Misterfullframe/iStock/Thinkstock

著者がなにげなくためていた新聞記事に、こんな話があった。ある警察官が渋滞中、たまたま目をやった別の車の運転手が、タバコの灰を車の中に落としていた。それを見て、警察官は「自分の車を灰で汚すはずがない。あれは盗難車だ」と気が付いたのだという。そもそも盗難車を追っていたわけでもないのに、閃きを得て盗難の犯人を見つけたこの力こそ、「見えない問題を見抜く力」である。

「見えない問題を見抜く力」は、物事の本質(問題)を見抜く力、つまり洞察力であるといえる。

著者によると、個人、組織において生産性などのパフォーマンスを向上させようと思ったら、「目に見えるミス」を減らし、「見えない問題を見抜く力」を増強させるという2つの方向の努力が両方とも必要になる。著者は、長年意思決定学者たちが取り組んできた、ミスを減らす方法でなく、見えない問題を見抜く洞察力を高める方法とは何かに興味を抱き、力を注ぐことになった。

著者は「現場主義的意思決定(NDM理論)」を提唱してきた研究者である。よって、実験室での実験結果でなく、実際の現場での結果を重視する。そのため、洞察力が発揮された事例を調査し、「洞察力は何によって触発されるのか」「なぜ洞察力の発揮が妨げられるのか」「洞察力を発揮するための方法とは何か」を探ることにした。

洞察力は何によって触発されるのか

洞察力を導く5つの認識パターン

20世紀初頭のウォーラスという研究者の学説によると、洞察力が発揮されるまでのメカニズムは、「準備、発案、閃き、確証」という4段階を経るという。

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要約公開日 2016.03.02
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