ゴールドプランなら4,000冊以上が全文読み放題! 7日無料体験はこちらから

本書の要点

  • 不平等は是正されるべきものである。過去に不平等が減少した時期や地域を参考に、市場所得の不平等縮小と効果的な再分配を組み合わせることで、不平等の縮小を目指すことは可能である。

  • そのために必要なのは、1)市場所得への介入、2)累進課税制の導入、3)社会保障制度の充実である。

  • 不平等と効率の間には絶対的な負の相関はない。不平等低減の手法を取り入れることで経済成長率の足を引っ張るとはいえない。

  • 現在のグローバル化した世界の制約の中でも選択の余地はまだまだ残されている。

  • 本書の提案を実施するための予算を確保することは現実的に可能である。また、提案を実行することで全体としての不平等や貧困の大幅な削減を実現できる。

1 / 3

不平等について学ぶべきこと

そもそも不平等はなぜダメなのか?

Aeya/iStock/Thinkstock

本書の主題は、不平等の水準の引き下げをどのように実現するかである。完全な平等はありえないが、現状の過度な不平等は縮小されて然るべきだ。しかし、そもそもなぜこの不平等という問題に取り組む必要があるのだろうか? ここで問題視しているのは結果の不平等についてである。なぜなら現代民主社会において、機会の平等を軽視する人は少ないだろうし、スタート地点は平等であるべきだと考えられているからだ。一方で、結果の不平等については解決するべき問題として大きく取り上げられてこなかった。

このような態度が正しくない理由は3つある。1つは、失敗をしてしまった人を無視するということは多くの人の道徳観からは受け入れられないということである。たとえ事前に機会均等があったのだとしても、つまずいてしまった人々を見放すことは現実的ではない。第2に、競争によって得られる報酬の構造は経済社会的に決定されるということである。そのため、その妥当性や競争そのものの公正さについては検討すべきであり、ここには介入の余地が残されている。そして第3の理由は、結果の不平等は次世代の機会均等に直接影響を与えてしまうためである。家庭環境は結果に影響を及ぼすものであり、将来の機会の平等を重んじるのであれば、現在の結果の不平等について改善していく必要がある。

不平等が縮小する時、あるいは増大する時

不平等の縮小を考える上で、これまで残されてきたデータを参照することは非常に役に立つ。どの地域でどの時期に不平等が縮小していったのか、あるいは逆に不平等が増大していったのかを明らかにすることで、改善のための知見を得ることができるからである。

データから不平等が顕著に縮小した時期を見てみると、アメリカでは第2次世界大戦の終結前後、ヨーロッパ各国ではそれに加え、1970年代が該当する。この主な要因としては、社会保障制度による移転の拡大、賃金シェアの増大、個人資産集中の減少、政府介入と団体交渉による収入の散らばりの縮小が挙げられるであろう。不平等の縮小は、2000年代の中南米でも確認されているが、こちらも同様に市場所得の変化と再分配の拡大の組み合わせによって、政治体制に関係なく達成されている。

一方、ヨーロッパでは1980年代以降、不平等が加速してしまう流れが形成された。これをここでは「不平等への転回」と呼ぶ。その原因は、先に挙げた諸要因が逆転、または終わってしまったことに求められる。市場所得における不平等の増大に加え、社会保障制度が維持できなくなってきたことが、格差をさらに激しいものにさせてしまった。さらに、経済の「金融化」によって、総所得における賃金の割合が低下した。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3145/4285文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2016.04.19
Copyright © 2026 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

SUPER BOSS (スーパーボス)
SUPER BOSS (スーパーボス)
シドニー・フィンケルシュタイン門脇弘典(訳)
電子部品 営業利益率20%のビジネスモデル
電子部品 営業利益率20%のビジネスモデル
村田朋博
ロケット・ササキ
ロケット・ササキ
大西康之
ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学
ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学
入山章栄
FinTech入門
FinTech入門
辻庸介瀧俊雄
パクリ経済
パクリ経済
山形浩生(訳)森本正史(訳)カル・ラウスティアラクリストファー・スプリグマン山田奨治(解説)
佐治敬三と開高健 最強のふたり
佐治敬三と開高健 最強のふたり
北康利
ビジネスモデル2025
ビジネスモデル2025
長沼博之

同じカテゴリーの要約

カイシャがなくなる日
カイシャがなくなる日
名和高司
きみのお金は誰のため
きみのお金は誰のため
田内学
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ
大きなシステムと小さなファンタジー
大きなシステムと小さなファンタジー
影山知明
FACTFULNESS
FACTFULNESS
ハンス・ロスリングオーラ・ロスリングアンナ・ロスリング・ロンランド上杉周作(訳)関美和(訳)
無料
はじめる力
はじめる力
安野貴博
お金のむこうに人がいる
お金のむこうに人がいる
田内学
ファスト&スロー
ファスト&スロー
ダニエル・カーネマン村井章子(訳)
これからの「正義」の話をしよう
これからの「正義」の話をしよう
マイケル・サンデル鬼澤忍(訳)
大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる
大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる
井堀利宏