電子部品 営業利益率20%のビジネスモデル

未読
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電子部品 営業利益率20%のビジネスモデル
出版社
日本経済新聞出版社
出版日
2016年03月24日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

村田製作所、日東電工、マブチモーター、キーエンス。電子部品産業はなぜ高収益企業の宝庫なのだろうか? これらの企業に共通するのは、「ニッチ思考」だという。ニッチとは本来、生物が生き残りをかけて編み出してきた方法であり、「他と競争することなく、自分だけが生存する場所」を見つけ、そこで確固たる地位を築くことである。この方法を経営に活かし、自社の事業領域をあえて限定することで、ニッチ(=良い寡占)を創出した企業だけが高い利益率を享受できる。

アナリスト、コンサルタントとして数多くの経営を見てきた著者は、綿密な取材をもとに、最強のビジネスモデルを本書で解き明かしていく。営業利益率50%越えという驚異の数字を打ち立てたキーエンスや、電源のカタログ販売という他社とは違う土俵で勝負するコーセル。本書で取り上げられる多様な成功事例とその成功要因の鮮やかな分析に、読者は瞠目することになるだろう。また、アップルと演出家、秋元康の意外な共通項や、世界陸上からハイテク産業が学ぶべきことなど、興味深いトピックが次々と紹介されていく。

本書を読み進めるにつれ、他の追随を許さないニッチ企業へと華麗な転身を遂げた、さまざまな企業の軌跡から、21世紀に勝ち残る企業の「あるべき姿」が浮き彫りになるはずだ。新興国との熾烈なコスト競争で疲弊せず、勝ちやすい場所を見極めるための秘策を学び、自社の今後の戦略・戦術に活かしてほしい。どの業界に身を置いていても、本書は価値ある次世代の戦略書となってくれるだろう。

ライター画像
松尾美里

著者

村田 朋博(むらた・ともひろ)
フロンティア・マネジメント執行役員。山一電機(株)社外取締役。1968年愛知県名古屋市生まれ。岐阜県立可児高校、東京大学工学部精密機械工学科卒。大和証券入社。大和総研、モルガン・スタンレー証券での20年間のアナリスト経験を経て、現在、フロンティア ・マネジメントにてコンサルティング、企業提携を担当。2001年第14回日経アナリストランキング1位(半導体・電子部品)。著書に『電子部品だけがなぜ強い』『経営危機には給料を増やす!』(いずれも日本経済新聞出版社)。

本書の要点

  • 要点
    1
    電子産業の高収益企業の調査をもとに、著者は「いかに競争しないか」を考え、自社の事業領域を限定することで、顧客に意識されることなく寡占状態をつくる「ニッチ思考」の重要性を指摘している。
  • 要点
    2
    アップルは、水平分業の企業群を束ねる「演出家」の座を射止めることで成功を収めている。こうした企業に対抗するには、独自の個性・技術を持つ「ニッチ」をめざすことが必要だ。
  • 要点
    3
    事業領域の選択においては、自社のサービス・技術がその産業において競争力を発揮し得るかという観点を重視すべきである。

要約

優れた経営者は、「競争しない経営」を考えている

高収益企業の共通項「ニッチ」とは?

電子部品産業の営業利益率は、キーエンス53%、ヒロセ電機26%、村田製作所21%となっており、高収益企業が目立つ。この高収益の秘訣は、「常に人と違うことをめざそうとする思想」のもとに、あえて自社の事業領域を制約・限定して、他社と競争することなく自社だけが生存する「ニッチ」を極めているということだ。

利益率は、その企業の技術力ではなく「力関係」で決まる。いくら不味いラーメンの店でも、ある地域に一店舗しかなければ消費者はその店を選ばざるを得ない。ハイテク産業でも同様に、いくら驚異的な技術を持つ企業があっても、同様の競合が10社も存在すれば利益を出すことは不可能に近いだろう。

そこで著者が提唱するのは、「いかに競争しないか」を考え、顧客に意識されることなく寡占状態をつくることである。具体的には、技術による寡占やコスト競争力による寡占、サービスによる寡占、ブランドによる寡占などの方法がある。このような観点から、他者(他社)と競争せず、自分だけの場所・生き方を見出すという良き寡占を、本書では「ニッチ」と呼ぶ。

サービスでニッチをつくり出したコーセル
baloon111/iStock/Thinkstock

サービス(事業モデル)でニッチを確立した好例は、業界平均を大幅に上回る利益率を上げている北陸の電源メーカー、コーセルだ。電源はあらゆる電気機器・電子機器に不可欠であるものの、製品の特性上、技術で差異化を図るのが難しく、価格競争に陥りやすい。

そこで同社は、「標準品のカタログ販売」の導入に踏み切った。一般的な電源メーカーは顧客であるメーカーの仕様に合わせて製品を開発しているが、実際のところ、顧客のほとんどは自社独自の仕様を求めているわけではない。標準品に特化すれば、常に在庫を持ち、短期間で発送できる。そのうえ、カタログ販売によって、顧客ごとに価格交渉する必要がなくなったために、定価での販売も可能となった。

このように、コーセルはサービスの既存の慣行を疑い、カタログ販売という新たな仕組みによって「ニッチ」をつくり出したのである。

非技術ニッチも重要

日本企業は技術ニッチの追求は得意である。ある技術が、消費者の要求水準に達していない間、消費者は新技術に付加価値を認め、喜んで対価を払うため、技術ニッチは比較的築きやすい。

ところが、ひとたび技術が消費者のニーズを満たすと、

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要約公開日 2016.05.10
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