遅読家のための読書術

情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣
未読
遅読家のための読書術
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情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣
未読
遅読家のための読書術
出版社
出版日
2021年07月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

みなさんの本を読むスピードは速いだろうか。私は自分を遅読家だとは思わないが、帯に書かれている「年間700冊」の言葉に惹かれて本書を手に取ってしまった。

本書でもっとも印象的だったのは、小説など「速く読む必要がない本」がある一方で、速く読める本、裏を返せば「じっくり読まなくてもよい本」があることを明言していることだ。

数年前までは1ページ5分というスピードで本を読んでいた著者が、現在では年間700冊を読破するようになったと聞くと、なにか特別な能力を身に付けたのではないかと勘繰られるかもしれない。しかし本書が主張する速読法には特別な能力は必要ない。速く読むことのできる書籍を素早く識別し、その中から読むべき価値のある部分を見つけだす力を身につけることが、本書の提案する「速読法」である。

これを身につけることによって、月20冊を読む程度は当たり前になるというから驚きだが、書かれている技法はどれも真っ当なものだ。読み飛ばす部分を判断するための具体的な手法を知りたければ、ぜひ本書を手にとっていただきたい。

また、もともとは仕事のために年間700冊以上読みはじめた著者が、「何かのための読書はつまらない!」と締めくくっている点にも注目したい。教養やスキルのための読書も価値があるものだが、本を読むことはそもそも楽しいものである。特に、普段読書をしない人や、読んでもすぐに挫折してしまう人は、ぜひ本書を手にとってもらいたい。

ライター画像
和田有紀子

著者

印南敦史(いんなみ あつし)
作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。
1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。
「1ページ5分」の超・遅読家だったにもかかわらず、ビジネスパーソンに人気のウェブ媒体「ライフハッカー(日本版)」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。
その後、ほかのウェブサイト「NewsWeek日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.JP」「マイナビニュース」などでも書評欄を担当することになり、年間700冊以上という驚異的な読書量を誇る。書評以外の記事も、「文春オンライン」「論座」「FINDERS」などに寄稿。
著書に『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    情報量が圧倒的に増えている現代では、私たちは無意識に「いいかげんに読む習慣」を身に付けてきているが、本に関しては旧来通り丁寧にすべて読む姿勢が抜けきらないために、ストレスとなっている。
  • 要点
    2
    「熟読の束縛」から解き放たれたとき、つまり本から得る情報を頭の中にストックしようとすることを止めたとき、人ははじめて速く読めるようになる。
  • 要点
    3
    吸い込むだけでは息が詰まってしまう。それと同じように、たくさんの本を読むためには、得た情報を外に出すことも同じくらい重要である。

要約

【必読ポイント!】 「熟読の呪縛」から解放されよ!

遅読家であるたった一つの原因
Jetta Productions/DigitalVision/Thinkstock

読書をする際、じっくり時間をかけて隅から隅まで情報を漏らさないように読み進める人がいる。そういう人は、知識を取り込むにはある程度丁寧に読まなければ頭に残らないと考えているのだろう。

しかし、それはただの思い込みである――それが1日に2冊の本を読みながら商業レビューを書く著者の主張だ。今ではレビューを書いた本の売れ行きを伸ばすことに定評があるほど書評家として有名になった著者だが、数年前に仕事としてレビューを書き始める以前は、1ページに5分もかかってしまうほどの遅読家だったという。その時は、じっくり読んでいるのに内容は全く頭に入ってこないし、大事だと感じたことでも、後から振り返ると忘れていることの方が多かったそうだ。

だが、いざレビューを書き始めてみると、締め切りに間に合わせるために、否が応でもある程度以上のスピードでページをめくらざるを得なくなった。そうした中、気づいたのが「いくら熟読しても、実際には忘れていることの方が多い」という現実だった。ゆっくり読んだからといって、内容がより頭に入るわけではなかったのだ。

「すべてを頭に叩き込むこと」を前提にじっくり読んだとしても、現実的にそれは難しい。「とても感動した!」と思う本に巡り合えても、覚えているのはせいぜいその一部だけが現実である。後から振り返ってみると、「内容はよく覚えてないけど良い本だった」という感想しか出てこないという経験は、誰しもが持っているのではないだろうか。

つまるところ、人間の脳ではどんなにじっくり読んでも本の内容を100%写し取ることはできないし、さらにいえばそうする必要もないのである。読書の価値は、その本の中で重要な1%に巡りあうことにある。たくさんの本を読み、それぞれの中から重要な1%を集めていくほうが、かえって自分の中に確固たる知識として定着するのだ。

自分が遅読家だと思っている人はまず、このように読書に対する考え方を変えるところから始めてほしい。「熟読の呪縛」から解き放たれれば、1週間に1冊しか読めなかった人が同じ期間に10冊読めるようになることも決して夢ではなくなるだろう。

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要約公開日 2022.03.12
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