大前研一 日本の論点2016〜17

未読
大前研一 日本の論点2016〜17
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大前研一 日本の論点2016〜17
出版社
プレジデント社
出版日
2015年11月19日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

日本人の多くは、自分の考えを表現したり、自分の意見を発信したりするのが苦手である。「それは、日本の教育体系から論理学が抜け落ちているから」だと、大前研一氏は本書で述べている。近代化プロセスにおいて、日本人は西洋文化を一通り受け入れてきたように思われているが、実は、「論理」が抜け落ちているのだという。

しかし、論理的思考力は、自分自身で前提となる事実をきちんと把握し、道筋を立てていく練習を重ねることで磨かれるという。その格好の教材となるのが本書である。実際に本書の論点を読んでみると、事実や事象からその原因や波及する影響を読みとり、結果として「こうなった」あるいは、だから「こうすべきだ」という結論が非常に明確で、理解しやすい。取り上げられているトピックも、アベノミクスのまやかしや日本活性化プラン、日本の農業改革、大学教育のめざすべき姿、イスラム国の現状と今後など、極めて重要度が高く、喧々諤々の議論を巻き起こすものばかりである。「これは賛同する」「この考え方は自分と違う」と、論点の結論に対する自分なりの意見を考えることで、思考の軸を育てることができるはずだ。

ビジネスパーソンとして知っておくべきホットなトピックの論点を読み解いたうえで、自分なりの考えを持ち、論理力を鍛えあげるのにピッタリな一冊である。痛快な「大前節」をとくと味わってほしい。

著者

大前 研一
早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。
「ボーダレス経済学と地域国家論」提唱者。マッキンゼー時代にはウォールストリート・ジャーナル紙のコントリビューティング・エディターとして、また、ハーバード・ビジネスレビュー誌では経済のボーダレス化に伴う企業の国際化の問題、都市の発展を中心として拡がっていく新しい地域国家の概念などについて継続的に論文を発表していた。この功績により1987年にイタリア大統領よりピオマンズ賞を、1995年にはアメリカのノートルダム大学で名誉法学博士号を授与された。
英国エコノミスト誌は、現代世界の思想的リーダーとしてアメリカにはピーター・ドラッカー(故人)やトム・ピータースが、アジアには大前研一がいるが、ヨーロッパ大陸にはそれに匹敵するグールー(思想的指導者)がいない、と書いた。同誌の1993年グールー特集では世界のグールー17人の一人に、また1994年の特集では5人の中の一人として選ばれている。2005年の「Thinkers50」でも、アジア人として唯一、トップに名を連ねている。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本はどんな国家をめざし、どのような世界観を持つのかを発信すべき立場にある。また、国際社会のための資金提供を、税金の何%かを日本以外のために使う「世界タックス」としてアピールすべきだ。
  • 要点
    2
    大学を「稼ぐ力を身に付けるための高等職業訓練所」だととらえ、大学だけでなく中学、高校の教育を改革する必要がある。
  • 要点
    3
    イスラム国の台頭やカタルーニャをはじめとする世界各地の独立運動によって「国家とは何か」を問い直すべきときがきている。

要約

めざす国家と持つべき世界観

戦後70年の総括とは

戦後50周年の「村山談話」と60周年の「小泉談話」には、「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」「痛切な反省と心からのお詫びの気持ち」という共通の文言が使われている。

今回の安倍談話(本稿は2015年夏、安倍晋三首相による「戦後70周年の首相談話」を前に書かれたもの)において、安倍首相は歴代内閣の立場を引き継ぎながらも、「未来志向」の文言を取り入れたい意向のようだ。

70周年談話の主なオーディエンスは、日本国民、アメリカ、中国、韓国である。日本政府が一番気にしているのがアメリカだ。アメリカは歴史認識や集団的自衛権行使容認などで安倍政権が近隣諸国との関係を悪化させている状況を苦々しくとらえている。万一戦闘が起これば、日米安保に基づいてアメリカは日本に加担せざるをえないためだ。そこでアメリカは日本に対して、戦後の総括をきちんと行い、近隣諸国との関係を改善することを求めている。

アメリカが最も触れてほしくないこと

アメリカは首相談話において、日本を平和国家へと導いたアメリカの功績をほめたたえることを望んでいる。

一方、アメリカが最も恐れているのは、「歴史の見直し」だ。安倍政権が発足した当初、安倍首相は慰安婦問題の強制性を認めた「河野談話」や「村山談話」の見直しに言及していた。日中、日韓の歴史を見直すことになれば、原爆投下や占領政策、東京裁判の正当性が蒸し返され、アメリカ主導の戦後秩序も問い直されかねない。歴史見直し発言や靖国参拝で国際社会から反発を受け、アメリカから警告を受けた安倍首相は、歴史の見直しとともに憲法を改正するという夢を封印した。

日本はもう「反省文」を書く必要はない
TanjalaGica/iStock/Thinkstock

大前氏は、日本は過去の大戦の謝罪をもはやする必要はないと主張する。

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要約公開日 2016.05.06
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