上阪 徹(うえさか とおる)
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。リクルート・グループなどを経て、フリーランスのライターとして独立。経営、経済、就職など最先端のビジネス現場から、トップランナーたちの仕事論をわかりやすく伝えるインタビュー、執筆を得意とする。取材相手は3000人を超え、自らが聞き出した成功者のエッセンスを伝える講演活動も行う。
著書に『成功者3000人の言葉』(飛鳥新社)、『職業、ブックライター。』(講談社)、『リブセンス〈生きる意味〉』(日経BP社)、『なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?』(あさ出版)など多数。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品も60冊以上に。
公式ウェブサイト
http://uesakatoru.com
【必読ポイント!】 世界の童話を再解釈する
ウサギが負けたのはゴールを見ていなかったから

NUMAX3D/iStock/Thinkstock
ご存知のように、「ウサギとカメ」は、油断して眠っていたウサギが、地道に歩きつづけてきたカメに追い抜かれてしまうという童話だ。能力があっても油断をしてはいけないし、真面目に熱心にやっていれば能力が高い者を超えられるということが、この話の教訓として語られる。
しかし、なぜウサギが寝てしまったのかを考えると、また少し違ったものが見えてくる。 ウサギとカメの違いは、ウサギがゴールを見ずに競争相手であるカメのことばかり気にしていたのに対し、一方のカメはゴールだけを見据えていたということにあるのではないか。
自分にとってのゴールが何かをしっかり見極め、競争相手に惑わされることなく邁進することが、レースの本質を捉えた行動である。出世競争に勝つことだけを目的にし、ライバルばかり見てしまっているようでは、本質的な目標を見失うばかりか、社内におかしな空気を漂わせかねない。
自分のゴールが見えていない人は、周囲に惑わされることになってしまう。どう生きるかではなく、何のために生きるのか。どのように世の中に貢献をし、どんな姿になりたいのか。ウサギとカメの物語の意味を別の角度から読み解く と、また別の教訓が見えてくる。
いずれにせよ、現実世界において、努力をしない人間が勝利するという結末はありえないし、そもそも、世の中には努力をするウサギが山のようにいる。しかしそれでも、ウサギとカメのどちらが人生の最後の最後に勝つかはわからない。それぞれが決めたゴールに飛び込んだ者だけが、自分にとっての勝利を手に入れるのだから。
北風は自分に有利なルールで戦うべきだった
かの有名な「北風と太陽」では、どちらが道を歩いている人の服を脱がせられるかで両者が力くらべをする。 北風を吹きつけられたその人はますます着込んでしまった一方、太陽の光を浴びた人は暖かさで服を脱ぎ、太陽が勝負を制した。無理に押しつけるのでなく、暖かく接するほうが、結果的に相手を望んだとおりに動かすことができるという教訓が込められている。
しかし、これが例えば「歩いている人の帽子を取る」対決だったらどうだろうか。何を勝利のモノサシとするかで、結果は大きく変わってしまう。
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