貧乏人の経済学
もういちど貧困問題を根っこから考える

未 読
貧乏人の経済学
ジャンル
著者
アビジット・V・バナジー エスター・デュフロ山形浩生(訳)
出版社
みすず書房 出版社ページへ
定価
3,240円
出版日
2012年04月02日
評点(5点満点)
総合
4.0
明瞭性
3.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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レビュー

貧困というものが「他人事」ではなく「自分事」として感じられるようになる――それが本書を読み終えた最初の感想であった。

本書で扱われる事例は、東南アジアやアフリカ諸国のような、いわゆる発展途上国のものが中心である。貧困の現状がどのようなものなのか、その解消に向けてどのような手段が講じられており、その限界がどこにあるのかが、様々な事例とともに網羅的に解説されている。

重要なのは、一面的な貧困のイメージにとらわれることなく、何が貧困を生み出し維持しているのか、その実態を正しく認識することだと著者は言う。そのうえで、先進国と呼ばれる国に住む「私たち」と、発展途上国に住む「彼ら」の違いが果たしてどこにあるのか、改めて私たちに問いかける。

貧困にあえぐ人々は情報不足、弱い信念、問題の先送りといった欠点を抱えているとされるが、実際のところ、先進国の人々の大半も大した知識や信念などもっていないし、問題も先送りにされる一方である。「私たち」と「彼ら」を分けているのは、私たちが当然のように享受している諸々のサービスの違いだけなのかもしれない。

貧困や格差といった問題は対岸の火事では決してなく、日本が抱えている現実的な問題でもある。本書を通して、貧困という問題の本質がどこにあるのか、今一度考えてみたい。

石渡 翔

著者

アビジット・V・バナジー
カルカッタ大学、ジャワハラル・ネルー大学、ハーバード大学で学び、現在はマサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学のフォード財団国際教授を務める。開発経済分析研究所 (Bureau for Research and Economic Analysis of Development) 元所長、NBERの研究員、CEPR研究フェロー、キール研究所国際研究フェロー。グッゲンハイム・フェロー、アルフレッド・P・スローン・フェローも歴任。2009年初代インフォシス賞など受賞歴多数で、世界銀行やインド政府など多くの機関の名誉顧問を歴任している。

エスター・デュフロ
MIT経済学部で貧困削減開発経済学担当のアブドゥル・ラティーフ・ジャミール教授。パリの高等師範学校とMITで全米芸術科学アカデミーおよび計量経済学会のフェロー。2010年には40歳以下で最高のアメリカの経済学者に授与されるジョン・ベイツ・クラークメダル、2009年にはマッカーサー「天才」フェローシップ、2010年初代カルヴォ・アルメンゴル国際賞 (Calvo-Armengol International Prize) など受賞歴多数。『エコノミスト』誌により若手経済学者ベスト8のひとりに選ばれ、2008年から4年連続で『フォーリン・ポリシー』誌の影響力の高い思想家100人に選ばれ続け、2010年には『フォーチュン』誌が選ぶ、最も影響力の高いビジネスリーダー「40歳以下の40人」にも選出。

本書の要点

  • 要点
    1
    貧困層の食費に多額の援助金をつぎ込んでも、全体としてのカロリー摂取量が増加するとは限らない。たとえ貧困層であっても、カロリー摂取の増加より美味しい食事のほうが優先される。
  • 要点
    2
    貧乏な生活を送っている人はしばしば、退屈を紛らわすための娯楽や冠婚葬祭を、食事よりも重要視する。
  • 要点
    3
    マイクロファイナンスの登場により、貧乏な人でも適切な金利で融資を受けることが可能になった。
  • 要点
    4
    マイクロファイナンスの仕組みは、中規模以上の事業の立ち上げには適していない。

要約

【必読ポイント!】 本当に10億人が飢えているのか?

金だけでは食糧問題を解決できない
Gajus/iStock/Thinkstock

一般的に言って、貧困は飢餓を連想させるものである。10億人以上が飢えに苦しんでいるという事実が、2006年6月、国連食糧農業機関(FAO)によって発表された。貧困ラインの設定も、多くの国では飢えを基準に定められている。つまり、「貧しい人」とは充分な食糧を持っていない人を指しているわけである。そのため、行政による貧乏人支援の発想は自然と、食糧の大量提供に行き着く。とにかく食事が足りていないのだから、量をまず満たす必要があるというわけである。

だが、実際に1日99セント以下で暮らす人々の実態を見てみると、餓死寸前とは思えない行動をとっている。餓死寸前なら、持ち金はすべてカロリーを補給するために充てられるはずだ。しかし、18カ国の地方に住む極貧層の消費額を見てみると、食費にはたったの36%から79%しか充てられていない。都会に絞っても、食費に充てられる割合は53%から74%に留まる。

しかも、カロリーや栄養素の摂取を最大化するように食費が使われているとは限らない。米や小麦の購入に多額の補助金を受けたある地域では、主食のコストが低くなったにもかかわらず、全体の消費量はかえって減ってしまったという。その代わり、エビや肉などをたくさん食べるようになり、全体としてカロリー摂取量は増加しなかったか、あるいは減少してしまった。つまり、カロリー摂取の増加は貧困層においても最優先事項として扱われず、美味しいものを食べることのほうが優先されるのである。なぜこのようなことが起きるのだろうか?

カロリーは足りているが栄養は不足している
Chalermchai Chaisri/iStock/Thinkstock

飢餓は確かに今日でも存在するが、それは食糧分配というシステム上の問題であり、食糧の絶対量自体はすでに足りている。実際、最貧困の人のほとんどは、充分な食事をとれる程度には収入を得ている。

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貧乏人の経済学
未 読
貧乏人の経済学
ジャンル
グローバル 政治・経済
著者
アビジット・V・バナジー エスター・デュフロ山形浩生(訳)
出版社
みすず書房 出版社ページへ
定価
3,240円
出版日
2012年04月02日
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