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人工超知能が人類を超える の表紙

人工超知能が人類を超える

シンギュラリティ―その先にある未来


本書の要点

  • 技術的特異点の到来が近づく今、人類進化の大きな流れの中で特異点の意味を考え、特異点後のビジョンを描くことが求められている。

  • 人類は農業革命、産業革命、情報革命という三大革命を通じて、物質、エネルギー、情報の3つを自在に操れるようになった。

  • ロボット革命により、「仕事に就かなくても暮らしていける」社会になると著者は予測している。その後、生物革命が起きれば、遺伝子の意図的改変と、再生医療・ナノテク医療による不老不死が実現する可能性もある。

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シンギュラリティがなぜ問題になるのか?

近づく「技術的特異点」と人類のビジョン

人工知能の急速な進歩に伴い、シンギュラリティ(技術的特異点)が迫っている。技術的特異点とは、科学技術が予測できないほどの速さで進化し始めるときを指す。すでに現在でも、ロボット技術や遺伝子工学の発展、火星移住計画など、新たな動きが次々と起きている。さらに、このパラダイムシフトが起こる周期は、現在に近づくほど短くなっている。未来学者レイ・カーツワイル氏によると、その間隔はいずれほぼゼロとなり、2045年頃には技術的特異点に達するという。人間以上に賢くなった人工知能が、自らを改良して進化し、やがては人間の役割に取って代わるというわけだ。

そこで人類は、科学技術の進む方向とスピードをコントロールするだけでなく、人類進化の大きな流れの中で特異点の意味を考え、特異点後のビジョンを描くことが求められるようになった。人類の未来図について考えることは、人生の意味を見出すうえでも有用だ。なぜなら、人類の進むべき方向が明確ならば、漠然とした不安が払拭され、自分の人生に集中できるからである。また、人類の将来のビジョンは、セーフティーネットの役割も果たしてくれる。根源的に無宗教である日本人にとって、将来のビジョンが精神的な支柱になってくれるにちがいない。

特異点の到来で生じるもの

ANNECORDON/iStock/Thinkstock

ひとたびコンピュータに人間が追い抜かれると、人間がコンピュータに追いつくことは不可能である。

人工知能は、音声認識や画像認識など、特定の仕事をするためにつくられた「特化型人工知能」、人間と同レベルの能力を持った「汎用人工知能」、そして、あらゆる面で人間より優れた能力を持つ「人工超知能」の3つに大別される。現時点では、ゲームや自動運転、対話応答など、特化型人工知能の実現にとどまっている。しかし、最近ではディープマインドというベンチャー企業が、ディープラーニングを駆使して自動で学習するアルゴリズムを開発し、注目を浴びた。人間に匹敵する人工知能の開発も遅かれ早かれ実現すると目されている。

人類はどこまでポスト・ヒューマン化するのか?

Belitas/iStock/Thinkstock

特異点を迎えた後、人工知能が暴走し、人類を滅亡させるのではないかと危惧する声もあがっている。また、人工知能が意識や感情を持つようになれば、チェスや将棋といったゲームにとどまらず、芸術・スポーツの分野でも人工知能が頭角を現していくだろう。すると、人類は「人工知能に比べて劣ってしまった」という現実の中で、自尊心を保てるのかという問題も浮上する。

もう一つの大きな懸念は、人類のサイボーグ化または完全な機械化が実現するのかという問題である。人工知能と互角にやり合うには、人類も身体や脳の機械化(ポスト・ヒューマン化)を図り、人工知能と同等の能力を身につけなければならない。そのためには、特異点後の人間の姿として、次の3通りが想定できる。

(1)生身の身体・脳をそのまま維持し、有機体として生きる、(2)身体の一部を機械やコンピュータに置き換え、サイボーグとして進化する、(3)脳を含む身体すべてを機械化して、非生物となる。人工知能と人間の共存という観点からは、(3)がベストな方法だといえる。ただし、脳の仕組み自体が未だ明らかになっておらず、「意識」を実現する方法が発見されていない現在、脳をコンピュータで代替できるのかという問題も残る。

人間の脳は、機械システムと同じ?

実際のところ、人間の脳とコンピュータは、構成する要素や動作原理においては大差がない。脳が、単純動作しかしないニューロンのかたまりでできているならば、脳全体も機械システムと見なせる。そのため、今後、脳の物理構造と動作原理、そして脳の物理的動作と意識との対応関係が解明されれば、その知見をもとに人工の脳を実現しようという試みも現実味を帯びてくるだろう。

ここで、脳が機械と同じなら、人間が「意識」を持つのはなぜかという疑問が湧いてくる。

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要約公開日 2016.08.02
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