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本書の要点

  • 住友銀行がメーンバンクを務めていたイトマンは多くの問題を抱えており、とくに不動産事業の失敗は際立っていた。一部の住友銀行とイトマンの幹部はそうした失敗を塗りつぶすべく、闇の勢力とつながりはじめた。

  • 住友銀行を救うために、著者はさまざまな工作を仕掛けた。そのかいあって、住友銀行の磯田一郎会長を退任に追いこんだが、心は晴れなかった。

  • 著者はイトマンの会社更生法適用を目論むものの、大きな反発を受けて失敗。当面の目標をイトマンの河村良彦社長の退任に切りかえ、なんとかこれを成しとげた。

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権力が腐り落ちるとき

イトマン事件が起きた背景

MachineHeadz/iStock/Thinkstock

「住友銀行が危機に陥っている。闇の勢力に喰い物にされようとしている」

1990年3月20日からつけはじめた著者の手帳は、この言葉からはじまった。著者が問題視していたのは、「住銀の天皇」と呼ばれた磯田一郎会長による体制である。磯田会長は当時、強大な権力を握っていた。

しかし権力はかならず腐る。その象徴的存在がイトマンだ。イトマンは、もともと伊藤萬株式会社と言われ、住友銀行がメーンバンクを務めていた中堅商社である。住友銀行から送りこまれた河村良彦社長は、磯田会長の忠実な部下として、住友銀行のトラブル案件をイトマンでいくつも引き受けたり、イトマンを使って住友銀行と平和相互銀行合併を行なったりと、「住銀の別働隊」としてイトマンの存在感を高めていった。

これらの功績により、「天皇」である磯田会長の庇護を受けるようになった河村社長に対して、イトマンでも住友銀行でも意見をできる人がだんだんと減っていった。これがイトマン内部に問題が吹き溜まっていく要因となった。

当時のイトマンが抱えていた最大の問題は、河村社長が多角化という名目で手を広げていた事業の数々が頓挫しはじめていたことにあった。特に、河村社長が力を入れていた不動産事業は悲惨なもので、多額の借金をつくっていた。そして事もあろうに、河村社長はその失敗を塗りつぶすべく、闇の勢力を招き入れるようになっていた。それが伊藤寿永光であり、許永中であった。

壮大なババ抜きがはじまった

危機感を抱いた著者は、ありとあらゆる手段を駆使し、磯田会長やその周囲の人たち、そして伊藤寿永光や許永中のようなキーパーソンたちの情報を集めはじめた。

調べてみると、伊藤寿永光は当時、すでに千葉県・習志野の土地の払い下げにからんだ脱税事件で東京国税局から聴取されていた。また、その背後には許永中や政治家、さらには闇の勢力もいるということもわかった。イトマンはそんな人物を、1990年2月に理事・企画監理本部長として迎え、さらには6月に常務に昇進させてしまったのだ。今から考えれば正気の沙汰ではない。

そもそも、伊藤寿永光がイトマンに接近したのは、雅叙園観光問題がきっかけであった。雅叙園観光の乱発手形の処理に手こずった伊藤寿永光は、資金繰りに追いつめられていた。そこで、雅叙園観光を舞台にした再開発計画をイトマンに提示することで、イトマンを金づるとして利用しようと考えた。

この雅叙園問題がすべての問題のはじまりとなった。この損をいかにして誰に押しつけるかの壮大なババ抜きがはじまったのだ。

闇の勢力に飲みこまれていく

stevanovicigor/iStock/Thinkstock

磯田会長はどこかの時点で、イトマン問題処理のために、河村社長に辞任を厳しく迫るべきだった。しかし結果として、磯田会長は河村社長と同じ船に乗ってしまった。

その決断には、磯田会長の娘の存在が大きく関わっていたと考えられる。磯田会長の長女は、ピサという西武百貨店系列の高級宝飾品店で、属託社員として勤めていた。当初は伊藤寿永光に対して警戒を強めていた磯田会長だったが、イトマンがピサで大量に絵を購入したことで、その態度を変えざるをえなくなった。

また、それ以前にも、磯田会長の長女は河村社長に「ピサが買いつける予定のロートレックコネクションを、イトマンで購入してくれないか」と依頼していた。河村社長は絵画取引にはまったくの素人であったが、磯田会長の娘の依頼を反故にできるはずもない。この案件を伊藤寿永光に任せることにし、イトマンは絵画事業をスタートさせていた。

そこに目をつけたのが許永中だった。

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要約公開日 2017.04.14
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