みなかみイノベーション

群馬県みなかみ町に見る農泊を核とした観光まちづくり
未読
日本語
みなかみイノベーション
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群馬県みなかみ町に見る農泊を核とした観光まちづくり
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みなかみイノベーション
出版社
定価
1,760円(税込)
出版日
2017年10月28日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

「みなかみイノベーション」とはなにか。それは「明日の日本を支える観光ビジョン」で示される「農泊」の施策が、たしかな「成果」として実現したものである。

地方の山間地域では、閉店した店やガソリンスタンドが目立つ。そのさらに山奥では、学校や病院の廃墟が並ぶ。地域生活の現状は明らかに縮退し、劣化している。

そこで著者が研究対象としたのが「地域イノベーション」だ。生活環境の悪化が推測される地域においても、その暮らしを選択したくなるような、魅力ある地域をひとつでも増やす。そして生きがいを創造・発展させるロールモデルを発見し、社会に報告する。それが著者の掲げたミッションであった。

「群馬県みなかみ町」を題材に、約5年間のフィールドワークを終え、著者はひとつの結論にいたる。地域に土着する住民は、誰しも町の賑わいが好きで、地域活性への意識をもっている。また生きがいや働きがいを高めたいと強く願っている。ここに日本の地方の未来があるのではないか。

本書はこれまで発表された研究論文をベースに、地域イノベーションを実現するための方法を、読み手がロールモデルとして参考にしやすいよう編集したものである。地域振興だけでなく、企業経営にも、学術研究にも応用できる一冊だ。

ライター画像
池田明季哉

著者

鈴木 誠二 (すずき せいじ)
法政大学 地域研究センター 客員研究員
東京成徳大学 経営学部 教員

■学歴
グロービス経営大学院大学 経営研究科 修士課程修了
法政大学大学院 政策創造研究科 博士後期課程満了

■略歴
大学卒業後、業界の変革期に直面したリーディングカンパニーや、産業進出するベンチャー企業等で、様々な事業を開発した経歴を持つ。「事業創造による地域発展」に関する事例を研究しながら、得られた知識や情報を、地方自治体や各種団体に広く還元している。

本書の要点

  • 要点
    1
    地方の中山間地域として、人口の減少・高齢化など、みなかみ町が直面している問題は深刻だ。
  • 要点
    2
    たくさんの観光資源があるにもかかわらず、みなかみ町には目玉となるものがなかった。また日帰り観光地と見なされていたのも痛手だった。日帰りでは大きな観光収入が見込めないからである。
  • 要点
    3
    こうした現状を変えるため、みなかみ町の人々は「農泊」を中心とした「体験旅行」を戦略として組みこみ、展開していった。さらに観光だけでなく、住民たちの暮らしにも目を向けた。谷あいの小さな集落の実態を明らかにし、問題解決をめざしている。

要約

農泊を中心とする取り組み

「みなかみ町体験旅行」を推進する
Petmal/iStock/Thinkstock

2008年に農水省・文科省・総務省が連携して、「子ども農山漁村交流プロジェクト」を立ち上げた。子どもたちの力強い成長を支える教育活動として、小学校における農山漁村での長期宿泊体験活動を推進することが目的だった。

みなかみ町はその受け入れ体制整備地区をめざし、商工会を中心に「教育旅行協議会」を立ち上げた。農業だけではなく、自然観察や林業体験、オリエンテーリング、アウトドアスポーツ、伝統工芸体験など、さまざまなメニューを選べるように調整。2014年からは一般社団法人となり、「みなかみ町体験旅行」として旅行業第二種も取得した。

みなかみ町体験旅行を創設したメンバーは、3つの方針を軸にしている。1つ目はグリーン・ツーリズムの町としてのブランドを確立させること。2つ目は経営者の視点をもち、収益をあげること。そして3つ目が、民泊や農業体験の提供を地域産業として定着させ、子どもたちへの継承を可能にすることである。

事業としての「農泊」

みなかみ町体験旅行の創設メンバーである松本亨太さんは、グリーン・ツーリズムを地域の産業に育てあげたかった。だから「組織の収益性ではなく、高齢者が活き活きと長く働ける環境をつくり、農泊提供者を事業主として成立させること」を目標に据えた。また農泊提供者の健康管理のため、町内の病院とも連携。提供者の健康を能動的に管理し、高齢の提供者も安心して働けるサポート体制を整えた。

農泊は年を追うごとに拡大し、提供者の家族や周囲の環境も変わっていった。たとえばみなかみ町を離れて生活していた人たちが、子どもを連れて長期間滞在しながら手伝いに来てくれたり、古民家の再生を始めた農泊提供者がいたり、移住希望者が増えてきたりといった変化である。

さらに2014年頃から、グリーン・ツーリズム向けの体制整備も加速した。ラフティングや里山探索など、「みなかみ町のよさ」を広めたい仲間たちが町に戻り、グリーン・ツーリズムとの連動メニューの開発に取り組んだ。

レクレーションメニューの運営会社は、農泊提供者への提案を活発に行なっており、農泊提供者たちの自覚とモチベーションを高める役割を果たしている。

イノベーション以前のみなかみ町

県内最大の面積に住人は2万人弱
DONOT6/iStock/Thinkstock

みなかみ町は群馬県の最北部に位置し、三国山脈を挟んで、新潟県の魚沼地方と接している。2005年10月に月夜野町と水上町、新治村が合併。その面積は県内最大で、第2位の高崎市の約1.7倍である。

しかしみなかみ町には約7600世帯しかなく、人口も2万人に満たない。さらに65歳以上の老年人口比率が33.1%で、県内でも少子高齢化が進んだ地域とされている。

「利根川源流の地」であり、大小多数の温泉やアウトドアスポーツ施設など、観光名所は充実している。ただ個人旅行へニーズが移っているご時世である。団体客を中心としていることや、首都圏からのアクセスにすぐれていることが、日帰り客を増加させ、観光消費額の低下を招いていた。

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